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三章

74話 休憩⭐︎

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「出さないでイった?」
「え……」

 柔らかい問いかけに焦点の合わない目を動かす。
 確かに、ピングは達した感覚があった。だがティーグレの言う通り、中心は張り詰めたままだ。とろとろと先走りをこぼして解放を待っている。

 自分の体に何が起こったのかわからないピングの頬を、ティーグレは愛おしそうに撫でてくる。

「やらしぃ体」
「ぅ、ぁっ」

 何も言葉を形に出来ないピングの体の線を熱い手のひらが辿り、体が離れていく。

「……じゃ、そろそろ本番」

 汗ばんだ銀髪を掻き上げて、ティーグレはピングを見下ろしてきた。
 普通の仕草が、達したばかりの目にやけに色っぽく見えて心音が上がる。

「ピング、膝を自分で抱えて」

 経験に乏しい上に頭がふわふわとして何も考えられず、ティーグレの言葉に従順に動いてしまう。

 気がついた時には、形を持ち雫を垂らす中心も、雫が垂れてきて物欲しそうに疼く蕾も。
 全てを自ら曝け出す格好になっていた。

「あの、ティーグレ……これ、は、必要なのか?」

 ティーグレに見られているだけで全身が期待している。それが伝わってしまうのが分かって、余計に恥ずかしくて目線が彷徨う。
 しばらく黙っていたティーグレが感嘆した。

「かわいい。良い眺め」
「あぁっ」

 指先が双球を突いてきて、ピングは喉を逸らす。
 スルリと指は滑り、自分でもわざわざ触ることはない秘部に触れてくる。

「今から、ここに挿れる準備をする」

 指先ですりすりと擦られ、蕾がヒクつく。
 男同士でする知識はあったが、改めて説明されると信じがたい気持ちが勝る。
 ティーグレの立派なものがどうしても目に入るからだ。

「はいる、のか?」
「いきなりだと怪我するから、潤滑油がいるんだけど。今回は便利なこれを使うな」
「浄化、薬……?」

 見覚えのある小瓶を見て、ピングは目を瞬かせる。小瓶の中で揺れる薄桃色の液体は、魔術薬の授業で作ったものと同じだった。

 とろみがあり浄化作用のある液体は、安全だし潤滑油として丁度いいのかもしれない。
 しかし授業で作ったものだと思うと、どこか背徳感があった。

 ティーグレはピングの目の前で、瓶の蓋を開ける。薄桃色の液体がティーグレの指をトロリと濡らしていった。

「これを今からピングの中に入れて、解す」
「あっ」

 冷たい指が蕾に触れて、ピングは反射的に足を閉じそうになる。足首を掴んで閉じるのを阻むティーグレは、ピングの反応を楽しんでいるようだった。

「動かないで開いててくれよ?」
「んんっ」

 ぐちゅっと淫靡な音を立てて、指がピングの胎内に侵入してくる。
 指を入れると聞いて警戒していたほど痛くはない。ただ、通常ではありえない異物感でむずかゆい。
 長い指が自分の中を探る様に動き、広げていっている。

 ずっと表情を伺ってくるティーグレの目から、逃げたいのに逃げられない。

「……っ」

 突如、ビクンッと身体が跳ねる。内壁が蠢き、ティーグレの指を締め付けた。
 どうしてそうなったのか分からず、ピングは答えを求めてティーグレを見る。

「う、ぁ……っ!」

 視線を合わせて微笑んだティーグレの指が、意図を持ってその一点を弄ってくる。指先が触れる度、ピングの体には強い電流が走った。
 甘い声が溢れ出て、自分で足を支えることができなくなりそうだ。

「てぃ……! まって、なんだこれ、ゃだ」
「ピングはやだが多いな? かわいい」
「あぁぁっ!」

 グッとソコを押されて、背中が逸れる。生理的な涙が目尻に浮かんできて、流れていく。

「もっとってことだろ?」
「ちが、なんか……変、で……」
「気持ちいいってことだよ」

 ティーグレは弱点を見つけたと言わんばかりに、容赦なく責め立ててきた。
 止めてくれる様子は一切無い上に、指の本数を増やしてくる。丁寧に解されたピングのナカは、難なく二本目を飲み込んだ。

 だが、二本の指で挟むように弱い場所を刺激されたピングは、たまらず高い声を上げる。

「ぁああっ! ティーグレ、ちがうっそこ、ほんとだめだ! やめてくれぇ」
「ほんとに?」

 髪を振り乱しながら頷くピングの涙ながらの訴えが届く。ナカの指が止まった。
 安堵の息を吐くピングは、足から手を離して力を抜いた。

 どこか物足りなさを感じる体を持て余しながら、呼吸を整えようとする。ティーグレは体を寄せて覗き込んできた。

「嘘じゃない?」
「うそ、つかな……! ぁあっ」

 掠れた声で返事をしようとしたというのに、ティーグレの指は言葉が終わる前に動きを再開した。

「じゃあもう一本増やしてから考えるか」
「ひぅうあ!」

 宣言通り、三本の指がピングのナカを蹂躙する。

 快感、なのだろう。
 頭の中が掻き回され、理性が溶けていく。
 だが初めての強すぎる快感に恐怖を覚え、ピングは足をばたつかせた。

「たすけ、て……!」

 ティーグレに肩を抑えられていなければ、ベッドから降りてしまっていただろう。
 逃げられないでいる内に、どんどん何も考えられなくなっていく。
 腹が煮えたぎり、這い上がってくる熱に翻弄される。

「また、なにか、くるぅ! とめてぇっ」
「ごめんな、かわいすぎてやめられない」

 泣き喚くピングの額に口付けたティーグレは、トドメとばかりに内壁を擦り上げた。

「あっアッ……ぁああ!」

 白濁がティーグレとの間に放たれ、腹の上に散る。ようやく欲望が解放され、ピングは恍惚としてシーツに体を沈めた。

 心地よい気怠さが体を包み込んでいる。
 ティーグレは、額に張り付く金髪を撫でてくれた。

「ピング、気持ち良かった?」
「わ、かんな……」

 まだぼんやりとして夢見心地だ。
 達したということは気持ち良かったんだと認めるしかないが、すぐに頷けないくらい頭が回っていなかった。

「ここ、気持ちいい?」

 ティーグレは簡単には逃がしてくれないらしい。首を傾げながら、ナカに入ったままの指をバラバラに動かしてきた。
 余韻に浸っていたピングは背をしならせる。

「……あぅ……! いったばっかぁ……!」
「認めて」
「き、きもちよかったっ! よかったからぁっ」

 重い腕を上げてティーグレの肩に縋る。絶頂を迎えたばかりの体には、快楽の連続は辛かった。
 だというのに、ティーグレが指を引き抜いた直後に蕾に熱を宛てがってくる。

「じゃあ、もっと気持ち良くなろうな」

 凶暴そうなものに喜んで吸いつこうとしている体とは裏腹に、ピングの心は怯んでいた。

 壊れそうな快感を知ったばかりだというのに、「もっと」とティーグレはいうのだから。
 このまま早く繋がりたい気持ちも強かったが、少し心の準備をさせて欲しい。

 ピングはおずおずと挙手をした。

「……すこし、休憩……させてくれ……」
「少しって?」
「その……落ち着くまで……あ、でも本当に、瞬き10回くらいで……」

 言いながらだんだん申し訳なくなってくる。自分は早く早くと泣いていたのに、我慢させることになってしまう。
 でもティーグレは纏っていた艶やかな空気を一変させた。

「じゃあ落ち着いたら教えてくれな」

 柔和な声で頬に口付け、起き上がってピングを膝に座らせてくれる。
 逞しい腕に抱きしめられ、肌と肌が触れ合い体温を分け合う。

 ピングはホッと息を吐いて首に腕を回した。肩に顔を埋めて深く息を吸う。
 ティーグレの匂いだ。
 温かくて、幸せで、胸がいっぱいになる。

「ティーグレ、大好きだ」

 顔を寄せると、心得たように唇が重なった。

「俺も」

 至近距離に見える紫色の瞳は、ピングしか映していない。それが嬉しくて、ピングはもう一度キスをねだった。

 2度目のキスを交わしながら、ピングは硬いものがずっと当たっているのを感じる。
 先ほどピングの秘部に宛がわれたソレは、ティーグレがピングに興奮してくれている証だった。
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