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一章

8話 ご褒美⭐︎

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 脳が痺れるような感覚に囚われている内に、手際良く中心を取り出された。固くなったピングのソコは、空気に触れて更に主張を増す。

 ティーグレの笑う声が吐息と共に頬に掛かった。

「はは、かわいい。じゃ、居残り頑張ったご褒美を兼ねて」
「なに、言って……っ」
「気持ちよくしてあげます」
「ぅ、ぁあっ」

 大きな手で包まれ、蜜を滲ませる先端を親指で擦ってきた。震える手で逞しい腕を掴んでも、そんなことで止まるわけがない。
 とめどなく溢れてくる蜜を熱全体に塗りつけるようにして、ティーグレの右手は上下した。

「ゃ、やだぁっ」

 羞恥心で腰を上げようするが、左腕が巻きつき固定されて逃げられない。

 幼い頃からティーグレは傍にいて、どんなに格好悪い姿でも見せてきた。
 だから、まさかティーグレに見せるのが恥ずかしい姿があるなんて、この時までピングは考えたこともなかった。

「声を出すと誰かに聞かれるかも……あぁ、さっきの俺たちみたいに聞き耳立ててるやついるかもですね」
「そんな、だめ」

 アトヴァルとリョウイチの痴態を見てしまったことを思い出す。
 もし自分の今の姿や声を、あんな風に誰かに知られたら。想像すると、どっどっと胸の鼓動が早くなる。

 二人を覗き見たことは一生口外しないと決意しつつ、ピングは声を出さないように自分の口をしっかりと抑えた。

「……っ」
「すげぇ濡れてる……もしかして、見られたいとか?」

 ティーグレが笑う気配を感じて、ピングは懸命に首を左右に振る。

 そんなわけがない。見られることを想像して興奮するはずがない。
 ただ自分でするのと全然違って、とにかく気持ちがいいのだ。
 もう、抵抗などせず身を任せてしまうほどに。

 大きな手が先端をいじったかと思えば根本を包み、くびれを責める。
 ピング自身では絶対しないような予想外の動きに、快感を引き出された。

「……、……!」
「腰も揺れてる。ここが好き?」
「……んっ……ふ……」

 抑えてても、声が我慢できない。
 指の隙間からどうしても漏れてしまう。
 奥から迫り上がってくる熱が腹の中で暴れ回っていて、今にも爆発しそうだった。

 背中に感じるティーグレの温もりさえ、ピングには甘い刺激になる。

「ピング」

 ずっと耳を甘噛みしてきて、いつもより艶っぽい声が体の芯に響く。熱い涙が目に膜を張っていて、瞬きすると零れ落ちそうだ。
 ピングはどうしても息が苦しくなって、口を押さえる手を緩める。

 それを見計らったように、ティーグレは耳に音を立てて口付けた。

「イクとこみせて」
「……ぁあっ!」

 一際強く扱かれ、先端を爪の先で引っ掻く刺激で白濁が飛ぶ。
 ピングの爪先がピンっと伸び、甲高い声が狭い部屋に響いてこだました。

「声、出ちゃいましたね」
「へ、ぁ……」

 頭の中が熱い。
 ふわふわして、ピングは何も考えられなかった。背中のぬくもりにくったりと体を預けて浅い呼吸を繰り返す。

 ティーグレがピングの目の前まで手を上げ、見せつけるように指先で白濁を弄んだ。
 それでもぼんやりと見つめるだけのピングに、ティーグレは口元を緩める。

「ま、防音魔術使ってるんで安心してください」

 優しく頭を撫でられるのが心地いい。
 ピングが無意識にすり寄ると、髪にそっとキスを落とされた。

「このまま抱けたら良いのに」
「ん……?」

 夢見心地の中、何を言われたか理解ができなかったピングだが。
 ふと、腰に固いものが当たるのを感じて正気に戻る。

 ピングが座っているのは、胡座をかいたティーグレの足。
 腰、というよりもう少し下に当たる違和感が何であるかは明白だ。

 顔を真っ赤にして大慌てで立ち上がる。
 まだ余韻を引きずっていて膝が震えるが、なんとか力を込めて仁王立ちになった。

「お、おま、お前……! なん、なん……! なんか色々……!」

 ビシッと指を突きつけたものの、何をどう言えば良いのか分からない。それでも何か言ってやりたくて、口の開閉を懸命に繰り返す。

「あはは、大混乱中ですねー大丈夫。取って食ったりしないんで」

 ティグレは明るい声を出しながら、白濁のついた手を舐める。濡れた指を、一本一本丁寧に舌が這う様は異様に艶やかだ。

 ピングは思わず唾を飲み込んでしまう。

(いやまて私! こんなに信用できないことがあるか! 取って食われる!)

 だいたい、中心を固くしている男が安全なわけがない。恋愛感情のない相手にここまでしてしまうなんて、危険人物以外の何者でもないのだ。

 自分のことを棚に上げて、ピングはジリジリと後ずさりする。
 ティーグレから離れなければならないと思ったのは生まれて初めての経験だ。

「つ、常々変なやつだとは思っていたが……! 金輪際、私に近づくな!」

 改めて人差し指を突きつけて、胸を張って宣告する。
 床に座ったままのティーグレに背を向けて、扉を開けようと手を伸ばした。
 だが、それを深刻みのない声が邪魔をしてくる。

「ピング殿下」
「なんだ!」
「その格好でここを出る気ですか?」
「へ?」

 眉を吊り上げて振り返ったピングは、間抜けな声を出した。
 その格好とは、と自分の姿を見下ろす。

「……っ、こ……! み、見るな!」

 一気に顔に熱が上り、前開きのローブを勢いよく閉じる。
 ローブの中はズボンが膝まで下りたままで、下着はピングの出したものでべちょべちょになっていた。

 隠したところで、少し強い風が吹けば見えてしまう危険性がある。ズボンを上げて仕舞えば見た目は問題ないが、なんといっても気持ち悪い。
 途方に暮れるピングに、ティーグレは目を細めた。

「綺麗にします?」

 ピングを弄っていた大きな手や、ズボンに飛んだ白濁を浄化魔術で綺麗にしながら首を傾げてくる。
 いつもならばすぐに頼っただろうピングだが、今は余裕綽々の憎らしい笑顔に歯噛みする。

「そのくらい……っ私だって!」

 そう言って同じように浄化魔術をやってみようとするが、宙に描かれた魔法陣からペンギンがポンっと出てきただけだった。
 今までは全く音沙汰なしだったくせに、必要ない時には愛らしい顔でキョトンと見つめてくるのだから。

 ピングはスーッと体から力が抜けていってしまった。

「……うう……くやしい……」

 結局、ティーグレが魔術で全部綺麗にしてくれて。

「お礼はほっぺにちゅーでいいですよ」

 なんて、今まで言ったこともないようなふざけたことを抜かしてきたので。
 バッチーンと、頬に真っ赤な花を咲かせてやった。
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