大きな栗の木の下で

ユミ

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エスパーかもしれない!

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それから大きな栗の木の下にいる男の子に会いに行くのが日課になった。
いや、日課にするつもりはなかったんだけど…。

男の子と初めて会った次の日、あらかじめ場所設定しておいた地図アプリを元に再び同じ場所に行ってみる事にした。
もしかしたら全て夢だったとか、はたまた幽霊とか栗の木の精霊とかの類かもしれないと思ったからだ。
そのくらい、あの男の子は存在が現実的ではなかった。

スマホと睨めっこしながら順路を辿っていく。
ホントは歩きスマホって良くないけど、地図見るの苦手だから歩きながら見てないと正しい道を行ける自信がない。
その分、出来るだけ周りを見るようにしてるし、聞き耳もたててるから大丈夫!

……こうやって自分勝手な人間が作られていくのかと思うとやるせない。
立ち止まって軽くため息を吐いた。
いやいや、やっぱ歩きスマホで怪我したら元も子もないよね!
時間がかかってもいいからスマホを見る時はその場で止まる事にした。
私ってなんて偉いんだろう。

そうして、なんとか目的地にたどり着くことが出来た。
あの男の子はいるだろうか。
幹の周りを少し歩くと、

「やあ、昨日ぶりだね」

柔らかく微笑む男の子の姿があった。
相変わらずパジャマ姿で寒くない様に上着を肩にかけ、昨日と同様に座っている。

「いないかと思ってた」
「なんで?」
「えーっと……」

夢とか幽霊とか精霊だと思ってたとか本人に言うのってどうなんだ?
あらぬ方向を見ながら髪の毛をいじる。

「幽霊とか精霊だと思った?」

男の子に言われ、ハッとする。
エスパーか、この子は!?
当の本人は私の反応を見てクスクスと笑っている。
バツの悪い感じで頷くしか行動の選択肢がなかった。

「残念だけど、僕は人間だよ」

そういうと男の子は立ち上がった。
座ってる時にはわからなかったけど、私より背が高い。

「そろそろ戻らないと。僕はいつもここにいるからまた遊びにきてね」
「うん、次はもっと話そうね」

そうだねと言い残し、男の子はゆっくりと歩き、やがて見えなくなった。

私はあの男の子が気になって、この大きな栗の木の下に来るのが日課になったのだった。
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