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その他
六道輪廻の糸
しおりを挟む死んで地獄に落ちた。当たり前だ。
悪いことは何でもやった。
気に入らない奴は蹴り飛ばし、びびってる奴から喝上げ。
気に入った女がいれば拉致って犯した。
少しでも抵抗すれば顔の形が変わるほど、ボコボコにした。
家庭環境が悪かったのだろうか?そんなわけがない。
両親は毎月小遣いをくれたし、事件をもみ消してもくれた。
もって生まれた性分なのだろう。生きてる時は鬼のように恐れられ、好きなことを好きなだけやった。
死んで落とされたのは血の池地獄だった。
亡者の血で出来た釜はまさに地獄であった。
ドボンッと沸騰した血の中に落とされ。
全身は火傷を負い、喉は焼け叫び声をあげることさえ出来ない。肉が爛れ、溶けていく、それなのに痛覚は失わない。
地獄の痛みを味わいながら、死ねなかった。地獄。地獄の苦しみがそこにある。こんな苦しみがあるなんて聞いてない。
苦しみが永遠に続くかと思うと気が狂いそうだが、気が狂うことすら許されない。
意識を失うと魂はまた元と同じ姿に戻り。六道輪廻。繰り返される。
空の雲が少し開き、天から光が差す。
光と共に天から白い糸が垂らされる。
どこかで聞いたことがある。蜘蛛の糸だ。これを伝って上まで登れば天国までいける。
溺れるものは蜘蛛の糸にも必死にしがみつく。
気力を振り絞り、糸を伝って登る。
地獄の苦しみから開放される。希望がそこにあった。
今までこれほどの幸福を感じたことがなかった。
男は生まれて初めて神に感謝をし、涙した。
糸は丈夫で切れることはなかった。
あとから他の亡者達も登ってきたが、それでもビクともしなかった。蜘蛛の糸は一定の粘着力があり、登りやすかった。
それに魂には体重が余りないようで登るのに苦労することはなかった。
どれくらい登ったのだろう。下をみると血の池地獄は遥か彼方で、小さくみえる。地獄は地平線の彼方まで広がっている。
蜘蛛の糸が上空に引き上げられている。
もう何もしなくても天国までいけそうだ。
男は悔いた。いままで自分の感情が抑えることが出来ず、その苛立ちを他者に向けて発散してきた。だが、それによって地獄の苦しみが、自分自身に返ってくるとは思ってもいなかったのだ。自分がいかに酷いことをしてきたかその身を持って知ることが出来た。自分は今まで間違っていた。
もう同じ過ちはしない。
天国にいったら心を入れ替えて、まっとうに過ごそう。そう心に決めた。
糸はどんどん引き上げられ、雲を突き抜けた。
ここを抜ければお釈迦様にあえる。俺は救われる。
雲の上には巨大な蜘蛛がいた。8つの目で俺をみる。
そこからは何の感情も読み取れない。
蜘蛛はその糸で亡者達を絡めとると、頭からムシャリと食べた。「ヒィィィィ!!」叫び声をあげる亡者を無慈悲に食す。
食べ尽くしたあと蜘蛛はまた池に糸を垂らした。
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