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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第193話 買い出しを始めちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む契約が無事に完了して〈グリーン商会〉を後にしたわたしたちは、バンスさんのアドバイスに従ってラグリージュの港町の近くにあるという市場に向かった。
何でも、その市場には食材を取り扱う商人が多くいるらしく、色々な種類の材料が揃うらしい。
お弁当屋さんを営む予定のわたしは、まず商品となるお弁当を作らなきゃならない。
そのためにはまず市場に赴いてどんな食材があるか吟味し、そこで店に並べるお弁当の種類を決めよう。
そう考えていると、わたしと一緒に歩いていたエミリーが前方を指差した。
「あ、コロネ様! あれが例の市場かと思います!」
エミリーの指先を見てみると、広い大通りがあった。
道の左右には色々なお店が建ち並んでいる。
それも屋台やフリーマーケットのような感じではなく、普通に実店舗があるようで、パッと見でも八百屋や肉屋、魚屋などが見えた。
市場とは言っていたけど、雰囲気的には商店街の方が近いかもしれない。
これまで見てきたような市場とはまた異なる様相を呈していた。
「ほんとだ。結構人通りも多くなってきたね」
「人がいっぱいだね、コロネお姉ちゃん」
いつの間にかわたしたちの周りにも人の往来が多くなってきている。
この人たちも市場で食材を買いにきたのかな。
「それでコロネ様、まずはどの食材を購入されるおつもりなのですか?」
「うーん、そうだね。まずはお肉とかお魚とかかな。あと野菜も色々見てみたいかも」
「分かりました。ではまずは魚から行きましょう。ラグリージュは海産品が豊かですから、魚屋さんは多いと思いますし。あ、ほら、市場の入口の所にも魚を売っているお店がありますよ!」
エミリーは再び前方に指をさした。
その先にはたしかに大きな魚を吊ってお客さんを呼び込んでいる商人のおじさんがいた。
「ほんとだ! それじゃあまずはあそこのお店に行ってみようか」
「そうしましょう!」
わたしたちは人混みを分けて皆で市場へと入っていき、目当てのお店へ向かう。
がやがやと賑やかな市場の中で、水産物特有の海の香りが漂ってくる。
「こんにちは~」
「お、らっしゃい! 嬢ちゃんたち、今日はいい魚が入ってるよ!」
お店の前に行くと、おじさんの商人が元気よく挨拶をしてくれた。
商人といっても〈グリーン商会〉で会ったバンスさんとはだいぶ雰囲気が異なっていて、格好は漁師に近いだろうか。
「嬢ちゃん、今日はどんな魚が欲しいんだ?」
「そうだなぁ、なにかオススメとかありますか?」
「もちろんだ! 最近はラッドサーモンの繁殖期だからな。今朝方に漁に行った時も大量のラッドサーモンを獲ってきたぜ! ほら、こいつだ!」
おじさんは店の真ん中に並べて置いていたサーモンを見せた。
そこには、大きなサーモンがどどん! と並んでいた。
「うわぁ! めっちゃでかっ!!」
「おうよ! この時期はでっぷりと太ったサーモンが群れで泳いでるからなぁ。まさに今が旬の超オススメ商品だ!」
たしかサーモンの旬って夏辺りだっけ?
まあこれは日本の基準だからこの世界じゃ通用しないかもしれないけど、でも今もそれなりに熱いっちゃ熱いし初夏くらいにはなってるのかな。
その辺りはよくわからないけど、ここに陳列されているサーモンを見るに旬だというのは本当だろう。
それにしても、このおじさんはやっぱり漁師だったんだね。
さっき海で獲ってきた魚をそのまま売ってる~みたいな発言をしてたし。
漁師として実際にこのサーモンを獲ってきて、自分が商人として売っているなら、実質的には直売してくれてるのと同じだ。
その人がオススメだと言ってくれるなら、これは買っておこうかな。
今が一番美味しい時期らしいし。
「よし! それじゃ、このサーモンください!」
「おっ、まいどあり! 一匹あたり銀貨一枚だが、何匹欲しいんだ?」
「えっと……」
どうしようかな。
サーモンだったら鮭として使えるし、鮭がいっぱいあれば鮭弁当みたいな商品が一つ確定できる。
まだ具体的にこのお弁当を何個作るとかの計画は全く立てていないんだけど、数は多い方がいいよね。
買ったサーモンはわたしのアイテムボックスに入れておけば腐ることはないし、仮に今回のお弁当作りで余ったとしても後日わたしが個人的に食せばいい。
最悪なのは、鮭弁当を作っている途中で主役のサーモンが在庫切れしてしまうことだから……できるだけ多めに買っておいた方がいいよね。
「それじゃあ、いま残ってるサーモン全部ください!」
「…………は?」
わたしはアイテムボックスからじゃらじゃらと金貨を手に出し、笑顔でおじさんに差し出した。
おじさんは狐につままれたような表情で目を丸くしていた。
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