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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり

第190話  お店の方向性を決めちゃう、ぽっちゃり

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「――よし、わかった! わたし、この店舗でお料理屋さんを開店するよ!!」

 わたしの返答を聞いた瞬間、皆がぱあっと笑顔になる。
 そしてどっと雪崩のように詰め寄ってきた。

「本当ですか、コロネ様!?」
「わーい! コロネお姉ちゃんがお店やるんだぁ~!」
「度胸ある決断、さすがご主人やでぇ!」
「ぷるーん!」
「あはは、いやいや皆大げさだよ」

 わたしの周囲に集まって口々に褒めそやしてくる皆に、少し気恥ずかしさを覚えながらやんわりと否定する。
 だけど皆はわたしがお料理屋さんを開店するのを決意したのがよほど嬉しいのか、熱気はどんどん上がっていく。

 どうしたものかと思っていると、バンスさんがおもむろに問いかけてきた。

「コロネさん、私が促した手前このようなことを問うのはおかしな話かもしれませんが、本当によろしいのですか?」
「うん。わたしとしてはそこまで大したものを作った気はなかったんだけど、皆からそんなに求められるならその期待に応えてみるのもいいのかなって思ってね。たしかにバンスさんのオススメが後押したってのはあるかもしれないけど、最終的にはわたしが決めたことだから気にしなくていいよ」
「……そうですか。ありがとうございます、コロネさん! コロネさんがお作りになる料理、私も楽しみにしております!」
「あはは、ありがとう。バンスさんの口に合うかはわからないけど、精一杯作ってみるよ」
「とんでもない! なにせあのドルート様のお墨付きなのです。私の舌にもきっと合うことでしょう! いえ、私どころかこのラグリージュ中の住人の口に合うに決まっております!」
「いやいや、それはさすがに大げさでしょ」

 鼻高々に断言するバンスさんに、わたしは笑いながらツッコミを入れる。
 すると、バンスさんがわたしに向き直った。

「ところで、コロネさんはくだんのポテトとやらを提供する料理屋を営まれるつもりなのですか?」
「うーん、それなんだけどさ。さっきちょっと考えたんだけど、せっかくだからお弁当屋さんをやろうかと思ってね」
「ほう、先ほど仰られていた料理ですね。たしかコロネさんの古郷で振る舞われていたものだとか」
「そうだね。せっかくだから、久しぶりにお弁当作りに挑戦してみようかと思ってね」
「なるほど。それでは、ポテトとやらは作られないのですか?」
「いや、それも作るよ。だけどポテトは簡単にできてつまらないから、どうせならもう少し創意工夫の余地があるお弁当の方がいいかなって」

 ポテトなんて究極的に言えば切って揚げればおしまいの簡単料理だ。
 変なことをしなければ最低限のものは作れるからね。
 工夫の余地があるとするならポテトの切り方とか、塩やケチャップなんかのポテトの付属品とかくらいだろう。
 だけど、お弁当となるとそう単純にはいかない。
 そもそも作らなきゃならない品目が多い上に、◯◯弁当みたいにお弁当の種類もかなり豊富だ。
 一時的とはいえ、どうせ自分のお店を持つんだったら、ちょっと背伸びして挑戦してみた方がいいよね!

 問題があるとするなら『お弁当』という料理がこの世界の住人の口に合うかだけど……まあそれは今考えても仕方がない。
 実際に作って、お客さんに食べてもらって初めてわかることだろう。

「ねぇねぇコロネお姉ちゃん。そのオベントーっていうの、美味しいの?」
「そうだねー、わたしはとっても美味しいと思うよ。だから完成した時にはぜひナターリャちゃんにも食べてほしいな!」
「うん! ナターリャ、オベントーいっぱい食べる~!」

 ナターリャちゃんは無邪気に笑いながら、わたしに抱きついてくる。
 自分のお腹のあたりに揺れるナターリャちゃんのさらさら髪を撫でながら、何のお弁当を作ろうかと思案を巡らせていった。


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