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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第185話 トントン拍子で決定しちゃう、ぽっちゃり
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ナターリャちゃんのとんでもない提案から一気に話が移り変わり、さっきまでエミリーを中心としていた皆が、今度はわたしを中心にわらわらと集まり始める。
その中でも一人、この中で唯一大人である人物が一番興奮した様子で詰め寄ってくる。
「エミリーからは、コロネさんはベルオウンで名のある冒険者だと聞いておりましたが、商売にも手を出されていたのですかな!?」
「いやいや! そんなことはないよ!? わたしはただ、ちょっと料理を作って皆に振る舞ったくらいで……」
「コロネお姉ちゃんの料理はどれも全部とっても美味しいんだよ!」
「ほう、そうなのですか?」
「うん! だからコロネお姉ちゃんの料理をお祭りで売ったらたくさんお客さんが来てくれると思うの!!」
わたしを置いて話がどんどんと進んでいく。
楽しそうに最大限のジェスチャーを交えて熱弁するナターリャちゃんの話を、バンスさんが目を輝かせながら聞いている。
「それに、コロネお姉ちゃんのポテトはあのおじさんからもお墨付きだったよ!」
「いや、それはドルートさんが勝手に言ってただけで……」
何気なく作ってみたポテトがまさかここまで皆を虜にしてしまうとは……!
ドルートさんもかなり気に入ってくれて、これを売ったらバカ売れすること間違いなしとまで言われてしまった。
わたしとしてはこのポテトで大儲けするつもりなんて全くなくて、単純にこの世界にジャガイモを揚げた系の料理がなかったから自分で作り出したに過ぎない。
だからポテト屋さんを開店するなんて一ミリも考えてなかったし、全く現実感が湧かない。
どんどんと盛り上がる皆とは反対に否定的な態度を表すわたしに対し、バンスさんは驚愕したように話しかけてくる。
「ドルート……というのは、まさかあのドルート様ですか!?」
「え? ああ、多分バンスさんが思ってる人で合ってると思うよ。あの有名な〈アイゼンハワー商会〉? だったっけ」
「コ、コロネさんはドルート様とお知り合いなのですか!?」
バンスさんはガバッとわたしの肩に手を置いた。
え、どうしたの急に。
困惑するわたしに、エミリーが横から助け船を出してくれた。
「お父さん、昨日も少し話したでしょ。ラグリージュに着くまでの道中で盗賊に襲われてる馬車を発見したから、コロネ様が救出に行かれたんです。そうしたら、偶然そこで襲われていたのがドルート様一家だったという訳です」
「あ、ああ、そうだったね。確かに昨日エミリーが話していたのを思い出した。いや、すまない。昨日は色々な準備や仕事が山積みであまり余裕がなくてね。つい忘れてしまっていたよ。コロネさんも失礼しました」
バンスさんは我に返ったようにわたしから手を離し、軽く謝罪をした後、少し後ろに退いた。
いきなり肩を掴まれたから何事かと思ったけど、そう言えばドルートさんって王国内でもトップクラスの大商人なんだっけ。
そんなにすごい人物なら、同じ商会を運営しているバンスさんが知らないはずはないし、自分と同じ業界で大成功を収めた憧れの超有名人のような立ち位置だろう。
そりゃあ少しくらい興奮を抑えられなくなるのは仕方ないね。
「しかし、まさかドルート様とお知り合いだったとは驚きです。あの方とアポを取るのはかなり難しく、何ヵ月も前から予定を合わせておかなければならないくらいなのに」
「そうなんだ。わたしたちは一昨日ドルートさん一家と出会ってから丸一日以上行動を共にしたよ。なんなら一緒のログハウスで寝食も共にしたくらいだし」
「それは羨ましい! きっと実りある一時になったことでしょう!」
「まあ、そうだね。色んな話が聞けて楽しかったかな」
「ですが、あのドルート様がそれほど勧める逸品とは……。ポテト、でしたかな? コロネさん、本当に私の貸店舗でお店を開かれませんか!?」
バンスさんは再び目をキラキラと輝かせてわたしにぐいっと顔を寄せてくる。
だから近い近い。
「いや、さっきから言ってるとおり、わたしは別にお店なんて……」
「まあまあそう仰らず! では、店舗だけでも見に行くというのはいかがですか? 実際にお店を開くかどうかはその後に決めるという形で!」
「うーん、それは――」
「ナターリャ賛成~! どんなお店なのか気になるし~!!」
「決まりですね! では早速、今からそちらの店舗の方へ向かいましょう!!」
バンスさんが張り切って準備を始める。
どうやら、わたしの返答も聞かずに店舗の内見に行くことは決定したみたいだ。
ここまでわたしお店をやるとは一言も言ってないんだけど、何だか着々と外堀を埋められていってない……?
その中でも一人、この中で唯一大人である人物が一番興奮した様子で詰め寄ってくる。
「エミリーからは、コロネさんはベルオウンで名のある冒険者だと聞いておりましたが、商売にも手を出されていたのですかな!?」
「いやいや! そんなことはないよ!? わたしはただ、ちょっと料理を作って皆に振る舞ったくらいで……」
「コロネお姉ちゃんの料理はどれも全部とっても美味しいんだよ!」
「ほう、そうなのですか?」
「うん! だからコロネお姉ちゃんの料理をお祭りで売ったらたくさんお客さんが来てくれると思うの!!」
わたしを置いて話がどんどんと進んでいく。
楽しそうに最大限のジェスチャーを交えて熱弁するナターリャちゃんの話を、バンスさんが目を輝かせながら聞いている。
「それに、コロネお姉ちゃんのポテトはあのおじさんからもお墨付きだったよ!」
「いや、それはドルートさんが勝手に言ってただけで……」
何気なく作ってみたポテトがまさかここまで皆を虜にしてしまうとは……!
ドルートさんもかなり気に入ってくれて、これを売ったらバカ売れすること間違いなしとまで言われてしまった。
わたしとしてはこのポテトで大儲けするつもりなんて全くなくて、単純にこの世界にジャガイモを揚げた系の料理がなかったから自分で作り出したに過ぎない。
だからポテト屋さんを開店するなんて一ミリも考えてなかったし、全く現実感が湧かない。
どんどんと盛り上がる皆とは反対に否定的な態度を表すわたしに対し、バンスさんは驚愕したように話しかけてくる。
「ドルート……というのは、まさかあのドルート様ですか!?」
「え? ああ、多分バンスさんが思ってる人で合ってると思うよ。あの有名な〈アイゼンハワー商会〉? だったっけ」
「コ、コロネさんはドルート様とお知り合いなのですか!?」
バンスさんはガバッとわたしの肩に手を置いた。
え、どうしたの急に。
困惑するわたしに、エミリーが横から助け船を出してくれた。
「お父さん、昨日も少し話したでしょ。ラグリージュに着くまでの道中で盗賊に襲われてる馬車を発見したから、コロネ様が救出に行かれたんです。そうしたら、偶然そこで襲われていたのがドルート様一家だったという訳です」
「あ、ああ、そうだったね。確かに昨日エミリーが話していたのを思い出した。いや、すまない。昨日は色々な準備や仕事が山積みであまり余裕がなくてね。つい忘れてしまっていたよ。コロネさんも失礼しました」
バンスさんは我に返ったようにわたしから手を離し、軽く謝罪をした後、少し後ろに退いた。
いきなり肩を掴まれたから何事かと思ったけど、そう言えばドルートさんって王国内でもトップクラスの大商人なんだっけ。
そんなにすごい人物なら、同じ商会を運営しているバンスさんが知らないはずはないし、自分と同じ業界で大成功を収めた憧れの超有名人のような立ち位置だろう。
そりゃあ少しくらい興奮を抑えられなくなるのは仕方ないね。
「しかし、まさかドルート様とお知り合いだったとは驚きです。あの方とアポを取るのはかなり難しく、何ヵ月も前から予定を合わせておかなければならないくらいなのに」
「そうなんだ。わたしたちは一昨日ドルートさん一家と出会ってから丸一日以上行動を共にしたよ。なんなら一緒のログハウスで寝食も共にしたくらいだし」
「それは羨ましい! きっと実りある一時になったことでしょう!」
「まあ、そうだね。色んな話が聞けて楽しかったかな」
「ですが、あのドルート様がそれほど勧める逸品とは……。ポテト、でしたかな? コロネさん、本当に私の貸店舗でお店を開かれませんか!?」
バンスさんは再び目をキラキラと輝かせてわたしにぐいっと顔を寄せてくる。
だから近い近い。
「いや、さっきから言ってるとおり、わたしは別にお店なんて……」
「まあまあそう仰らず! では、店舗だけでも見に行くというのはいかがですか? 実際にお店を開くかどうかはその後に決めるという形で!」
「うーん、それは――」
「ナターリャ賛成~! どんなお店なのか気になるし~!!」
「決まりですね! では早速、今からそちらの店舗の方へ向かいましょう!!」
バンスさんが張り切って準備を始める。
どうやら、わたしの返答も聞かずに店舗の内見に行くことは決定したみたいだ。
ここまでわたしお店をやるとは一言も言ってないんだけど、何だか着々と外堀を埋められていってない……?
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