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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第173話 商会へと向かっちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「…………見つけたかもしれない。〈グリーン商会〉を救う解決策を!」
わたしの言葉に、みんな呆気に取られたように言葉を失った。
あれ、みんなどうしたのかな?
もっと喜んでくれるかと思ったんだけど……。
シーンと静まり返ったこの空気を最初に破ったのは、困惑した顔で手をあげるエミリーだった。
「……えっと、コロネ様? それは一体――」
「コロネお姉ちゃん! エミリーお姉ちゃんとお別れしなくて済む方法があるの!?」
エミリーが話終える前に、ナターリャちゃんがわたしの袖をつかんで駆け寄ってくる。
すがるような瞳でわたしを見上げた。
こんな悲しそうな顔を見せられたら、勢いに任せて「大丈夫!」と言いきりたいところなんだけど、はっきり言ってわたしの思いついたアイデアが通用するかはわからない。
上手くいけばこの状況をまるっと解決できる策だとは思うけど、安易に期待させるような言葉で答えるのは返って不義理だろう。
だからわたしは包み隠さずにナターリャちゃんに向き合った。
「正直、まだわからない。そもそもわたしが思いついた策が通用するのかもわからないし。でも、試してみる価値はあると思うよ」
「そっかぁ……」
わたしが断言しなかったからか、ナターリャちゃんは少し残念そうだけどさっきよりは格段に表情が明るくなった。
少なくとも希望は与えられたみたいだ。
続けて、呆然とわたしたちの話を聞いていたエミリーに向き直る。
「そのためにはエミリー。今から〈グリーン商会〉に行くことはできるかな?」
「えっ、い、今からですか?」
「うん。こういうのは少しでも早いほうがいいからね。できればもうこのまま〈グリーン商会〉まで行って解決しきりたいんだけど、どうかな?」
「えっと、多分、大丈夫だとは思います! ただ、今日は営業していないのですが……」
「それは大丈夫。むしろ営業してない方が好都合かな。ちなみになんだけど、商会が納品する予定だった商品のサンプルとかってある?」
「数は少ないですが、数十個程度なら備えの物があったと思います」
「そっか! それだけあれば十分だよ!」
これで前提条件は全て揃ったはず。
あとは実際に〈グリーン商会〉に出向いて、一か八かの勝負に出るだけだ。
大丈夫。
勝算は結構ある。
「それじゃあ早速、〈グリーン商会〉に向かおうか! エミリー、道中の案内頼んでいいかな?」
「は、はい! お任せください!」
わたしたちは横並びでエミリーの隣を歩き、〈グリーン商会〉への道のりを歩いていくのだった。
〇 〇 〇
エミリーに導かれて歩くこと二十分ほど。
わたしたちはラグリージュの市場があった大通りから少し外れたエリアに訪れていた。
大通りから外れたといっても人気がないとかは全然なく、周囲は普通に通行人が歩いている。
ただ、市場があった通りに比べると活気はやや抑えめで、どちらかと言えば閑静な住宅街といった雰囲気の方が近いかもしれない。
この辺りにはお店もあるけど、どれもしっかりとした店舗を持ったものばかりだ。
いわゆる出店や屋台のような急ごしらえの売り場は見当たらず、イタリアンレストランや雑貨屋さんみたいなオシャレなお店が多いね。
そんなエリアに連れてこられたわたしたちだったけど、とある建物の前でエミリーが立ち止まる。
そして、くるりとひるがえって、わたしたちに紹介してくれた。
「お待たせいたしました! ここが私の両親が経営している〈グリーン商会〉です!」
エミリーの背後にそびえるのは、大きな木造建築のお店。
しかも普通のお店という規模ではない。
建物の大きさだけでいうなら、豪華な一軒家くらいある。
歩いてくる道中で見たレストランの数倍の面積はあるだろう。
エミリーの話ぶりから〈グリーン商会〉はどちらかと言えば零細よりの商会なのかなとか失礼な予想をしていたんだけど、全くそんなことはなかった。
さすがにドルートさんと比べると見劣りはするけど、あの人は別格だ。
普通の商人のレベル感で見れば、これだけの建物を商会として構えられるということはそれなりの売上を出しているということなのだろう。
エミリーも結構お金持ちだったんだね……!
「それではどうぞお入りください。本日はお休みのため表の入口は閉まっているので、こちらの裏口からお願いいたします」
エミリーに先導されて、わたしたちは大きな木造建築の建物をぐるりと回り、裏口から中へと通してもらうのだった。
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