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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第162話 一騎討ちになっちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む第二回戦が終了し、わたしは決勝戦に勝ち上がった。
いよいよ次が大詰めか。
最後のご飯も美味しくいただこうと楽しみにしていると、なんとここで悲しいお知らせが。
『さあこれからいよいよ大食い大会決勝戦が始まる――というところだったのですが、ここで残念なお知らせです! 決勝に勝ち上がったのは三名のフードファイターの方々なのですが、その内の一名が先ほど棄権を申し出ました!』
一人、棄権が出ただって!?
……うん、まあ何となく想像はついている。
きっと第二回戦を第三位でギリギリ勝ち上がったあのフードファイターだろう。
リバースしないように両手で口を押さえ込んでいたし、かなり顔色も悪かった。
あんな状態で決勝戦に参加しようものなら大惨事になることは目に見えているからね。
本人としては悔しいかもしれないけど、このタイミングで棄権するのは正解だと思う。
せっかく食べたご飯を吐いちゃったらもったいないしね。
だけどこれで元々は三人で争うはずだった決勝戦のメンバーが一人減ったことで二人で戦う一騎討ちの状態になった。
そして、その残った二人っていうのが――
「最後は俺たちのタイマンってことか! へっ、こいつは面白くなってきたぜ!」
「わたしとジャイアント・ボブの二人か……」
「おいおい何だよ! もっとテンション上げていこうぜ! 俺はようやくまともな実力を持ったヤツと出会えて嬉しいんだからよ!」
ジャイアント・ボブは豪快に笑う。
だけど、この男が言っていることもわからなくもない。
結果論だけど、実際に第三位のフードファイターは棄権したわけで、この時点でもしわたしが参戦していなかったらジャイアント・ボブが不戦勝で優勝していたかもしれない。
わたしがいない分、第二回戦は一人繰り上がりで別のフードファイターが勝ち上がっていたんだろうけど、第三位の人の一つ下の順位の人が決勝戦に残ってもまともに戦えるとは思えないしね。
どちらかと言えば、第三位のフードファイターと同じようにギブアップして棄権した可能性の方が高いだろう。
『そういった事情もあり、決勝戦は急きょお二人による一騎討ちの形式となってしまいました! どうぞお二方、こちらの決勝戦特別席へご着席ください!!』
MCの人に指示され、わたしとジャイアント・ボブは別のテーブルへ移動する。
そこは司会席のすぐ隣に設置されたテーブルで、さっきまで座っていた横長のテーブルとは異なり、それぞれが独立していた。
本来は三人でやる予定だったから大きめのテーブルが三つ設置されていたんだろうけど、今は少し幅を取って二つのテーブルのみ置かれていた。
テーブルの角にはそれぞれのネームプレートが準備されていて、わたしは自分の名前が記載されている、向かって右側のテーブルに着席した。
それと同時、反対側のテーブルにジャイアント・ボブの巨体がゆっくりと腰を下ろす。
わたしたちが着席したのを見て、MCはマイクを握る手に力を込める。
『今大会もいよいよ大詰め! ラストの決勝戦の舞台を飾る方々のご紹介を再度しておきましょう!』
MCがバッと手をわたしたちに向けた。
『一人目は絶対王者の名を冠する爆食モンスター、ジャイアント・ボブ! 今回も余裕の決勝戦入り! 果たして去年同様、余裕の連覇となり得るのか……注目すべき優勝候補です!!』
ギャラリーも盛り上がってきた。
至るところからジャイアント・ボブを応援する声が聞こえてくる。
『そして二人目はこの方! 今大会唯一の一般参加! 大会開始直前に滑り込むようにして参加を決意された紅一点、コロネさん! 私も正直ここまで勝ち上がるとは思っていませんでした! しかし、今はこう思っております! コロネさんならばもしかすると、ジャイアント・ボブを打ち倒した初めてのフードファイターとして名を刻むことになるのではないかと! 今大会、いやこの大会史に残る最強のダークホースとなり得るのか、その一挙手一投足を見逃せません!』
まさか飛び入り参加のわたしがここまで生き残るとは予想してなかったのか、MCの紹介にも熱が入る。
その熱は周囲の観客にも伝わり、無名のわたしを応援してくれる人たちも結構いるみたいだ。
もちろん、最初からわたしを応援してくれていたナターリャちゃんたちも忘れてはいない。
軽い気持ちで参加してみたこの大食い大会だったけど、ここまで勝ち上がってしまうと本気で優勝が欲しくなってきた。
それに、ここまでわたしと同じ量を食べられる人間と出会ったのは初めてだしね。
わたしは次なる料理はなにか、そして目前に迫る優勝に向けてワクワクの感情が高まっていった。
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