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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第126話 エミリーの家業が判明しちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟むドルートさんが想像以上に凄い人物だということが判明してから、しばらく。
ライツさんにお願いして、すでにこの馬車は再びラグリージュへ向けて出発している。
わたしたちが乗る馬車の後ろには、しっかりと盗賊を収容したドルートさんの馬車も着いてきていた。
そちらの馬車の件も皆には伝えておいたので、ピッタリわたしたちの真後ろを着いてきているけど不審がる人はいない。
わたしは、ガタゴトと揺れる馬車で向かいに座るドルートさんに話しかけた。
「いやぁ~、それにしてもまさかドルートさんがそんなに凄い人だったとは思いもしなかったよ。王国の三大商会に名を連ねるなんてとんでもないね」
「いえいえ、肩書きほど大したものではございません。確かに商会の規模は大きいですが、それも各地で私共と取引をしてくださる方や品物をご購入してくださる方々あってものですから」
ドルートさんは謙遜しているけど、多分本人が言ってるよりも凄いことをやってるんだと思う。
そう言えば、さっきアルバートさんからわたしの情報を聞こうとしたとか言ってたね。
この時点で察するべきだったか……。
そもそもベルオウンの領主様と普通の人間が接触できるわけないもんね。
そんじょそこらの商人じゃ、アルバートさんに会いたくても会うことは難しいだろう。
まあ、わたしはベルオウンに住み始めてからアルバートさんとは何回も会ってるからあんまり実感はないんだけど、本来はそうポンポンと会うことができる人物じゃないよね。
「そ、それにしても、まさかこのような場所でドルート様にお会いすることになるなんて思いませんでしたぁ……!」
「エミリーが一番最初に反応したもんね。もしかしたらアルバートさんのお屋敷でメイドをしてた時に、何回かすれ違ってるんじゃない?」
何気ないわたしの質問に、ドルートさんが反応する。
「おや、エミリーさんは以前アルバート様のお屋敷で働かれていたのですか?」
「は、はいぃ。ベルオウンに来てからは、ずっとアルバート様の元でメイド業をさせていただいておりました。とはいえ、私がメインでお世話をさせていただいていたのはオリビア様でしたが」
「オリビア様と言うと、アルバート様のご息女でしたな。私も何度かご挨拶をさせていただいたことがございます」
エミリーの言葉にドルートさんは笑顔で対応する。
だけど、エミリーはどこか気まずそうな顔で視線をさまよわせた。
「ただ、私がドルート様のお顔を見てすぐに反応できたのは、別の理由でして……」
「別の理由?」
「ドルート様は覚えていらっしゃらないでしょうが、実は私、ドルート様と個人的な繋がりもありまして……」
「え、やっぱり知り合いだったの!?」
「いえっ! お知り合いと呼べるほどの関係性ではありませんけど、以前に何度かお会いしたことがあるんです。私の一家もラグリージュで商売を営んでおりますので、その商談などでドルート様と少しお会いしまして」
「……ふむ。失礼ですが、エミリーさんのご家族が経営されている商会の名前をお聞きしても?」
「あ、えと、〈グリーン商会〉です」
エミリーから商会名を聞いたドルートさんは、少し考えた後、思い出したように声をあげる。
「ああ、思い出しました! 〈グリーン商会〉はたしかに、ラグリージュに拠点を置かれていましたね。以前、貿易品の商談で何度かお会いした記憶があります」
「あ、ありがとうございますぅ!」
エミリーはドルートさんに恐縮しながらお礼を言う。
そんな二人の様子を見ながら、ナターリャちゃんが無邪気に話しかける。
「エミリーお姉ちゃんって、商人の家系だったんだね! ナターリャ、知らなかったよ!」
「あはは、別に隠していたわけではないのですが、言う機会がなかったもので……」
たしかにわたしも意外だった。
エミリーはメイドのイメージしかなかったから、まさか家族が商売人だとは思わなかったよ。
商会の名前は〈グリーン商会〉って言うんだね。
ドルートさんと商談ができるっていうくらいだから、〈グリーン商会〉も結構大きな組織なのかな。
「てか、そもそも今回ラグリージュに行くキッカケになったのって、エミリーのお父さんが大事な話があるとかでエミリーが帰ってくるのを促したからだったよね。つまり、そのお父さんってのが〈グリーン商会〉のトップっていうこと?」
「そうですね。一体どういう要件なのか……」
エミリーは複雑な表情で答える。
たしかに、そこそこ大きな商会のトップである父から大事な話があると言われて帰郷を促されればちょっと怖いよね。
まあ、今は考えても仕方がないし、実際にお父さんと会ってから考えた方がいいかな。
わたしはエミリーを励ましつつ、ドルートさんたちと交流を深めていった。
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