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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第98話 レスターさんに釘を刺されちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「やはり、あの災害級の大魔法はお前の仕業だったのか……」
ナターリャちゃんを宥めていると、横で聞いていたレスターさんが頭を押さえていた。
「そうだよ。新開発した、ライトニングストームっていう大魔法なんだ! てか、レスターさんもわたしの大魔法知ってるの?」
「当たり前だ! あんな大嵐みたいな巨大魔法、ここからでも容易に観測できる! 狂乱化現象が発生している真っ只中だったから、さらなる凶兆ではないかと街がパニックになりかけたぐらいだ!!」
「そ、そうだったんだね。なんか、ごめん」
たしかにライトニングストームは草原と《魔の大森林》の境目のエリア全体を覆い尽くすほど巨大な魔法だった。
しかも天候にも影響を与えて、あの辺りだけものすごい曇天、落雷、暴風があったからね。
まさに、雨が降っていない巨大ハリケーンさながらだった。
あれだけ大規模な魔法だと街からでも普通に見えただろうし、もしかしたらその雲と落雷がベルオウンにまで接近してくるんじゃないかと不安にさせてしまったかな。
まあ、あの時はあれくらいゴリ押しの大魔法じゃないと《魔の大森林》からうじゃうじゃ湧いてくる魔物の軍勢を倒せなかったから、大目に見てもらいたい。
「……まあいい。それで《魔の大森林》の魔物たちを倒してくれていたなら大助かりだ。あの規模の魔物の群れはさすがに冒険者にも少なからず死傷者が出ていただろう」
「それじゃあ、今のところ死傷者はいないの?」
「ああ。冒険者、一般人ともに死者は確認されていない。多少の怪我を負った者はいるが、十分に回復魔法で対応できるレベルで命に支障はない」
「そうなんだ。それなら良かったよ」
そこそこ激しい戦いだったように見えたけど、さすが冒険者稼業をやってるだけあって、皆それなりに強いみたいだ。
レスターさんの冒険者ギルドに来ている冒険者の数からして、街の付近で魔物と戦ってた冒険者の大半が〈獅獣の剛斧〉所属の冒険者だったんだろうけど、実力だけはあるって評判は嘘じゃなかったみたいだね。
あとは一部のロクでなし冒険者の性格を叩き直せれば完璧だ。
一応の死者ゼロの報告を聞いて安心したわたしは、ふとお腹がぎゅるっとうなる。
そして、ぐうぅぅ~~~~~~~~!! と、盛大にお腹が鳴った。
「……はあぁぁ~~~。お腹すいたなぁ」
「コロネお姉ちゃん、大丈夫……?」
わたしのお腹の音と心の底からのため息に、ナターリャちゃんが心配してくれる。
うう、ありがとねナターリャちゃん。
でも、この後わたしはゴブリンロード報告の件でギルドに連行されるから、すぐにご飯は食べられないんだよ……。
明らかにどんよりとしたわたしの雰囲気を察してか、レスターさんが難しい顔をしながら割って入ってくる。
「……分かった。コロネ、そんなにメシが食いたいなら、ギルドで販売している料理を好きなだけ食うといい。ギルド内にストックしてある料理はコロネに惜しまず提供するよう職員に伝えておく。だからまずは今からギルドに行け! メシを食いながらでもいいから、ゴブリンロードの件を報告しろ! いいな!!」
「うぅ、わかったよ。行くからそんなに怖い顔しないでよ」
言われてみれば、冒険者ギルドにも中に酒場とかあった気がする。
別に仕事をしてるわけでもなさそうな気だるげな冒険者が何人かお酒飲みながら寝てたよね。
わたしはお酒は飲まないけど、つまみとかがあるならちょっとした腹ごしらえにはなるかも?
「てかよ、そんなにコロネがギルドに来るか気になってんなら、ギルマスが一緒についていけばいいじゃねぇか」
「無論、俺もすぐにギルドへ向かう。だが、その前に門兵や騎士、冒険者たちの調整を色々としなければならない。狂乱化の原因がゴブリンロードにあったのならば今回の騒動は解決したかもしれないが、まだ気を緩めることはできんからな。それに、ゴブリンロードの件はすぐには公表できん。それゆえ、しばらくは警戒体制が続くだろうから、その手配なども必要になる」
「へえぇ~、ギルマスも大変なんだなぁ」
デリックが呑気に応えると、レスターさんはデリックをギロリと睨んだ。
「ゆえに、デリック、レイラ、お前たち二人に命じる。何がなんでも、このままコロネをギルドまで連れていけ! 俺はもう行くが、ギルドに戻った時コロネがいなかったらどうなるか分かっているな!!」
「……おいおい、マジかよ」
「……可能な限り、善処しよう」
デリックとレイラは共にはっきりしない口調で了承した。
一応、形だけのOKを聞き入れたレスターさんは、わたしをギロリと見た後、門の方へ走っていった。
「それでは行こうか、コロネ殿」
「ギルマス直々に頼まれちまったんだから……お願いだから逃げるなよ? コロネに撒かれたら俺たちが怒鳴られるんだからな?」
え、どうして二人ともそんな目でわたしを見るのかな?
今のわたしは魔力がないから逃げようと思っても逃げられないよ?
まあ魔力の残存量はわたしにしかわからないから、もしかしたらまだ少し魔力を残していて虎視眈々と逃亡のチャンスをうかがっているとか思われてるのかな。
さっき一回前科あるしね。
「わかったよ。大人しくしてるよ」
「コロネお姉ちゃん、今から冒険者ギルドに行くの?」
「うん。色々と説明をしなきゃいけないからね」
「それじゃあ、ナターリャも一緒についていくね!」
「ありがとう、ナターリャちゃん!!」
わたしはナターリャちゃんにお礼を言ってから、冒険者ギルドへ向けて歩きだした。
しばらく歩いていると、わたしの肩に乗っていたわいちゃんが話し出した。
「それにしてもご主人、随分と体型が変わったんやなぁ。わいはドラゴンやさかい、人間よりも多少鼻が効くからご主人やとわかったけど、普通の人間なら誰も気づけへんで、これ」
「そうだよねぇ……わたしも自分で自分の姿が信じられないから、気づけなくて普通だと思うよ。そう言えば、ナターリャちゃんはよくわたしのことわかったね? 今も魔力はほとんどないんだけど」
「遠くからだと魔力は視えなかったけど、これだけ近づいたらちょっとだけコロネお姉ちゃんの魔力が体に漂ってるのがわかったから。うーん、なんでかわからないけど、特に腰回りに輪っか状の魔力が視えるよ」
「ああ、それはジャージの固定に使ってるわたしのなけなしの魔力だね……」
普通に歩きながら喋ってるけど、今のわたしが来ているジャージはぽっちゃり時代に愛用していたもの。
そのサイズもぽっちゃり体型に適応しているから、今はダホダボになっていて、こうして魔力で固定しとかないと全部ずり落ちてしまうのだ。
こうして痩せてみて実感したけど、普段のわたしってこのブカブカのジャージがジャストフィットしてるってすごいね。
そんなこんなで皆で談笑をしながら大通りを歩いていると、不意に目の前に誰かが立ちはだかった。
「……止まれ。そこの冒険者ども」
視線を向けると、そこにいたのはむさ苦しそうなおっさん。
だけど背中にはレスターさんと同じかそれ以上に巨大な斧を背負っている。
格好からして、冒険者だよね。
でも、何となく友好的な雰囲気は感じられない。
一体何の用なのかな?
そう思っていると、低い声で言葉を続けた。
「お前たち――――コロネという冒険者を知っているか?」
おっさんは怒りを押し殺したような表情で、わたしたちを睨みつけた。
え、用があるのってまさか……わたし!?
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