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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第94話 大まかな説明をしちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「これがあのコロネって……何度言われても信じられねぇぜ」
地面にへたりこんで座るわたしに、デリックが不躾な視線を向けてくる。
邪な意思は感じないけど、こうあからさまに直視されるとちょっと恥ずかしい。
そんな感情を抱いていると、レイラが割って入ってくれた。
「あまりコロネ殿をじろじろと見るな。変態がバレるぞ」
「バレるか! てか、そもそも俺は変態じゃねぇ!」
「今の目付きはかなり怪しいところだが」
「俺の知ってるコロネと印象が違いすぎて、物珍しさから眺めてただけだっつの! 勘違いすんなよな!」
デリックがツンデレみたいなセリフを吐いている。
そんなにレイラに変態扱いされるのが嫌だったのかな。
まあ、今のわたしの状態を見たら興味津々になる気持ちもわかるけどね。
ちなみに、ジャージのズボンなど気を抜くとずり落ちそうな部分は出涸らしの魔力で何とか固定している。
これで多分、さっきみたいに不意にジャージが脱げてしまうこともないだろう。
するとデリックが立ち上がりながら呆れたような声をあげる。
「……にしても、とんでもねぇ状態になってんなぁ。一体どんな戦い方したらこんなにムチャクチャな地形にできるんだ?」
デリックが信じられないものを見る目で周囲を見渡した。
たしかに、今この辺りはかなり酷い状態になっている。
えぐれて土が溢れている草原。
デストロイキャノンの余波で吹き飛んで直線上のクレーターが形成された《魔の大森林》。
その他にもへし折れた木々が散乱していたり、落雷の影響で黒焦げになった草原の一部など、惨状で溢れている。
まさに大災害の被害を受けた直後みたいな感じでズタボロだった。
「……ん? あの向こうに倒れてるデケェのはなんだ? 魔物か?」
辺りを見渡していたデリックが、向こうに倒れているゴブリンロードの死体を見つけた。
ああ、そうか。
まずはあのゴブリンロードについて説明しないといけないね。
わたしはデリックの疑問に普通に答えた。
「ああ、あれはゴブリンロードだよ」
「「ゴブリンロード!!?」」
デリックとレイラが同時にわたしへ振り返って声を合わせる。
「う、うん。そうだけど、そんなに驚くこと?」
「ゴ、ゴブリンロードといえば百年に一度生まれるかどうかというほど珍しい魔物だ。だが、その脅威は本物で、過去には小国が滅ぼされたという言い伝えもある。もしあのゴブリンロードが街まで侵攻してきていたら、このベルオウンの街は再起不能なレベルで破壊されていたかもしれない」
「……そんなバケモンをコロネ一人で倒したってのか?」
いやいやそんな大げさなぁ~、ってツッコミを入れようかと思ったけど、実際にゴブリンロードと正面から戦ったわたしにそんなセリフは吐けなかった。
レイラの言う通り、多分ゴブリンロードを野放しにしていたらベルオウンは滅んでいたかもしれない。
それほど強大な敵だったのは間違いないよ。
事実、わたしもこんなにも体型が変貌するほどダメージを受けたわけだしね……。
「まあ、たしかにかなり強い魔物だったのは間違いないね。わたしも全力を出さなきゃ勝ちきれなかったし。それに、わたし一人で戦ったんじゃなくて、サラも手伝ってくれたから何とか倒すことができたんだよ」
「ぷるん!」
近くでコロコロと転がっていたサラは、自分の話がされているのを感じるとぽよんと跳ねて寄ってきた。
サラがゴブリンから回収した大量の剣があったからこそ、ゴブリンロードをバリア魔法で足止めすることができて、決め手となったデストロイキャノンを撃つことかできたんだからね。
あ、あとゴブリンロードに関してはあのことも伝えておかないといけない。
「それと、これは確証はないんだけど、狂乱化の原因はあのゴブリンロードかもしれないよ」
「なんだと? そりゃどういうことだコロネ」
「ゴブリンロードと戦った時に、部下のゴブリンたちや他の魔物を従えているような素振りがあったんだよ。しかもその魔物たちも自分の意志で従っているというよりかは、強制的に暴走させられてるような感じだったんだ。戦ってみても、街の方にいた魔物と同じで怯むことなく特攻してきたし」
「たしかにゴブリンは群れを形成するタイプの社会的な魔物だが……あれだけの魔物を一度に操ってたっていうのか? しかもゴブリン以外の魔物まで?」
デリックがわたしの言葉に疑問を呈する。
やっぱりいきなりは信じられないか。
皆は今回の狂乱化を自然現象だと思っているんだもんね。
それに、今言ったのだってあくまでもわたしの感想に過ぎないから、正しい保証もないし。
レイラは顎に手を当てて、思案しながら口を開く。
「……いや、たしかゴブリンロードは部下を強制的に操る能力を持っていると文献に記述があった。もしや本当に狂乱化騒動の原因はゴブリンロードだったのだろうか……?」
「正確にはわからないけど、少なくともわたしは、ゴブリンロードが自分の意思で他の魔物を狂乱化させて襲わせるような光景も見たよ」
「……これは、ギルドに報告すんのがめんどくさそうだなぁ」
デリックが頭をかきながらぼやく。
かなり情報量が多いから、今回の一連の事態をギルドに説明するのは時間がかかりそうだね。
ま、そこはデリックに任せよう。
するとふと、わたしは酷い倦怠感と同時に、もう一つのある感覚に襲われた。
レイラが、わたしの変化に目敏く気づく。
「どうかしたのかだろうか、コロネ殿?」
わたしは、絞り出すような声で答える。
「…………おっ」
「お?」
その瞬間。
――――ぐぅぅぅ~~~~~~~~~~~~~!!!
「――――お腹減ったぁああああああああああああああああああああ!!」
腹部から魔物の唸り声のような音が鳴ると同時、わたしの渾身の叫び声が草原全体に響き渡った。
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