上 下
95 / 247
異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第94話  大まかな説明をしちゃう、ぽっちゃり

しおりを挟む

「これがあのコロネって……何度言われても信じられねぇぜ」

 地面にへたりこんで座るわたしに、デリックが不躾な視線を向けてくる。
 よこしまな意思は感じないけど、こうあからさまに直視されるとちょっと恥ずかしい。

 そんな感情を抱いていると、レイラが割って入ってくれた。

「あまりコロネ殿をじろじろと見るな。変態がバレるぞ」
「バレるか! てか、そもそも俺は変態じゃねぇ!」
「今の目付きはかなり怪しいところだが」
「俺の知ってるコロネと印象が違いすぎて、物珍しさから眺めてただけだっつの! 勘違いすんなよな!」

 デリックがツンデレみたいなセリフを吐いている。
 そんなにレイラに変態扱いされるのが嫌だったのかな。
 まあ、今のわたしの状態を見たら興味津々になる気持ちもわかるけどね。

 ちなみに、ジャージのズボンなど気を抜くとずり落ちそうな部分は出涸らしの魔力で何とか固定している。
 これで多分、さっきみたいに不意にジャージが脱げてしまうこともないだろう。

 するとデリックが立ち上がりながら呆れたような声をあげる。

「……にしても、とんでもねぇ状態になってんなぁ。一体どんな戦い方したらこんなにムチャクチャな地形にできるんだ?」

 デリックが信じられないものを見る目で周囲を見渡した。
 たしかに、今この辺りはかなり酷い状態になっている。
 えぐれて土が溢れている草原。
 デストロイキャノンの余波で吹き飛んで直線上のクレーターが形成された《魔の大森林》。
 その他にもへし折れた木々が散乱していたり、落雷の影響で黒焦げになった草原の一部など、惨状で溢れている。
 まさに大災害の被害を受けた直後みたいな感じでズタボロだった。

「……ん? あの向こうに倒れてるデケェのはなんだ? 魔物か?」

 辺りを見渡していたデリックが、向こうに倒れているゴブリンロードの死体を見つけた。
 ああ、そうか。
 まずはあのゴブリンロードについて説明しないといけないね。

 わたしはデリックの疑問に普通に答えた。

「ああ、あれはゴブリンロードだよ」
「「ゴブリンロード!!?」」

 デリックとレイラが同時にわたしへ振り返って声を合わせる。

「う、うん。そうだけど、そんなに驚くこと?」
「ゴ、ゴブリンロードといえば百年に一度生まれるかどうかというほど珍しい魔物だ。だが、その脅威は本物で、過去には小国が滅ぼされたという言い伝えもある。もしあのゴブリンロードが街まで侵攻してきていたら、このベルオウンの街は再起不能なレベルで破壊されていたかもしれない」
「……そんなバケモンをコロネ一人で倒したってのか?」

 いやいやそんな大げさなぁ~、ってツッコミを入れようかと思ったけど、実際にゴブリンロードと正面から戦ったわたしにそんなセリフは吐けなかった。
 レイラの言う通り、多分ゴブリンロードを野放しにしていたらベルオウンは滅んでいたかもしれない。
 それほど強大な敵だったのは間違いないよ。
 事実、わたしもこんなにも体型が変貌するほどダメージを受けたわけだしね……。

「まあ、たしかにかなり強い魔物だったのは間違いないね。わたしも全力を出さなきゃ勝ちきれなかったし。それに、わたし一人で戦ったんじゃなくて、サラも手伝ってくれたから何とか倒すことができたんだよ」
「ぷるん!」

 近くでコロコロと転がっていたサラは、自分の話がされているのを感じるとぽよんと跳ねて寄ってきた。
 サラがゴブリンから回収した大量の剣があったからこそ、ゴブリンロードをバリア魔法で足止めすることができて、決め手となったデストロイキャノンを撃つことかできたんだからね。

 あ、あとゴブリンロードに関してはあのことも伝えておかないといけない。

「それと、これは確証はないんだけど、狂乱化の原因はあのゴブリンロードかもしれないよ」
「なんだと? そりゃどういうことだコロネ」
「ゴブリンロードと戦った時に、部下のゴブリンたちや他の魔物を従えているような素振りがあったんだよ。しかもその魔物たちも自分の意志で従っているというよりかは、強制的に暴走させられてるような感じだったんだ。戦ってみても、街の方にいた魔物と同じで怯むことなく特攻してきたし」
「たしかにゴブリンは群れを形成するタイプの社会的な魔物だが……あれだけの魔物を一度に操ってたっていうのか? しかもゴブリン以外の魔物まで?」

 デリックがわたしの言葉に疑問を呈する。
 やっぱりいきなりは信じられないか。
 皆は今回の狂乱化を自然現象だと思っているんだもんね。
 それに、今言ったのだってあくまでもわたしの感想に過ぎないから、正しい保証もないし。

 レイラは顎に手を当てて、思案しながら口を開く。

「……いや、たしかゴブリンロードは部下を強制的に操る能力を持っていると文献に記述があった。もしや本当に狂乱化騒動の原因はゴブリンロードだったのだろうか……?」
「正確にはわからないけど、少なくともわたしは、ゴブリンロードが自分の意思で他の魔物を狂乱化させて襲わせるような光景も見たよ」
「……これは、ギルドに報告すんのがめんどくさそうだなぁ」

 デリックが頭をかきながらぼやく。
 かなり情報量が多いから、今回の一連の事態をギルドに説明するのは時間がかかりそうだね。
 ま、そこはデリックに任せよう。

 するとふと、わたしは酷い倦怠感と同時に、もう一つのある感覚に襲われた。
 レイラが、わたしの変化に目敏めざとく気づく。

「どうかしたのかだろうか、コロネ殿?」

 わたしは、絞り出すような声で答える。

「…………おっ」
「お?」

 その瞬間。

 ――――ぐぅぅぅ~~~~~~~~~~~~~!!!

「――――お腹減ったぁああああああああああああああああああああ!!」

 腹部から魔物の唸り声のような音が鳴ると同時、わたしの渾身の叫び声が草原全体に響き渡った。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そんなに幼馴染の事が好きなら、婚約者なんていなくてもいいのですね?

新野乃花(大舟)
恋愛
レベック第一王子と婚約関係にあった、貴族令嬢シノン。その関係を手配したのはレベックの父であるユーゲント国王であり、二人の関係を心から嬉しく思っていた。しかしある日、レベックは幼馴染であるユミリアに浮気をし、シノンの事を婚約破棄の上で追放してしまう。事後報告する形であれば国王も怒りはしないだろうと甘く考えていたレベックであったものの、婚約破棄の事を知った国王は激しく憤りを見せ始め…。

婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?

江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】 ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる! ※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。  カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過! ※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪ ※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。 そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。 頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります! エメルロ一族には重大な秘密があり……。 そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

呪いのせいで太ったら離婚宣告されました!どうしましょう!

ルーシャオ
恋愛
若きグレーゼ侯爵ベレンガリオが半年間の遠征から帰ると、愛するグレーゼ侯爵夫人ジョヴァンナがまるまると太って出迎え、あまりの出来事にベレンガリオは「お前とは離婚する」と言い放ちました。 しかし、ジョヴァンナが太ったのはあくまでベレンガリオへ向けられた『呪い』を代わりに受けた影響であり、決して不摂生ではない……と弁解しようとしますが、ベレンガリオは呪いを信じていません。それもそのはず、おとぎ話に出てくるような魔法や呪いは、とっくの昔に失われてしまっているからです。 仕方なく、ジョヴァンナは痩せようとしますが——。 愛している妻がいつの間にか二倍の体重になる程太ったための離婚の危機、グレーゼ侯爵家はどうなってしまうのか。

転生幼女の愛され公爵令嬢

meimei
恋愛
地球日本国2005年生まれの女子高生だったはずの咲良(サクラ)は目が覚めたら3歳幼女だった。どうやら昨日転んで頭をぶつけて一気に 前世を思い出したらしい…。 愛されチートと加護、神獣 逆ハーレムと願望をすべて詰め込んだ作品に… (*ノω・*)テヘ なにぶん初めての素人作品なのでゆるーく読んで頂けたらありがたいです! 幼女からスタートなので逆ハーレムは先がながいです… 一応R15指定にしました(;・∀・) 注意: これは作者の妄想により書かれた すべてフィクションのお話です! 物や人、動物、植物、全てが妄想による産物なので宜しくお願いしますm(_ _)m また誤字脱字もゆるく流して頂けるとありがたいですm(_ _)m エール&いいね♡ありがとうございます!! とても嬉しく励みになります!! 投票ありがとうございました!!(*^^*)

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

処理中です...