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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第91話 決着をつけちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む濃縮した闇属性の魔力を結集させて放つ、破壊光線。
大量破壊の権化と化した漆黒の光線は、易々とゴブリンロードの巨体を覆い尽くした。
だけど、ゴブリンロードも咄嗟に強化したバリアを展開し、わたしのデストロイキャノンを受け止める。
「グガァ……コ、コレハ、ワレノ、マホウ……!?」
ゴブリンロードは困惑したような声で叫ぶ。
まさか自分の必殺魔法がコピーされるとは思わなかったんだろう。
だけど、今回は相手が悪かったね。
魔法っていうのは、イメージの世界だ。
わたしはこの攻撃を実際に食らったことで、これ以上ない破壊光線のイメージを獲得することができた。
さらに、わたしは神さまから貰ったチートスキルのおかげで自分のイメージを忠実に再現することが可能な魔法適正と魔力量を持っている。
だからこそ、これほどハイレベルな魔法をゴブリンロードに撃ち返すことができたのだ!
……とはいえ、さすがはゴブリンロード。
この初撃で倒れてくれれば良かったんだけど、そうは行かないみたい。
「ダ、ダガ……コレ、クライナラバ……!!」
ゴブリンロードも持てる魔力を全てバリアに投入し、過去最大の防御で対抗してくる。
さっきは虚を突いたからこのままデストロイキャノンを押し込めそうだったけど、戸惑いながらも冷静さを取り戻し始めた。
今は防御に全神経を注いでいるからか、どんどんバリアが硬くなっていく感触がある。
「くっ、このままだと魔力消費の耐久勝負になる……! できればデストロイキャノンでトドメを刺したいところだけど――」
ネックなのはゴブリンロードの残存魔力がどれくらいあるのかわからない所なんだよね。
鑑定で相手の魔力量なんかも調べられれば便利なんだけど、わたしの食の鑑定ではそんな詳細情報は教えてくれないので仕方ない。
だから今みたいな魔力消費の耐久勝負になっちゃうと、万が一わたしよりもゴブリンロードの方が魔力が多かったら終わりだ。
だからどうにか、このデストロイキャノンの威力を今よりも上げたいんだけど……。
「……もしかして、今よりもデストロイキャノンを集約させたらいけるかな?」
今のデストロイキャノンは、ゴブリンロードの体を余裕で押し潰せるくらいの大規模な破壊光線として発動している。
なにせ、わたしが食らったゴブリンロードの破壊光線もこれくらい巨大なものだったからね。
だけど、これだと広範囲にデストロイキャノンが分散してしまうから、威力が弱まっているのかもしれない。
いや、今でも十分にとんでもない破壊力を持っているんだけど、ゴブリンロードのバリアを確実に突破するには、デストロイキャノンの攻撃範囲を狭めた方が良いかもしれない。
ホースで水を流す時だって、普通に水を出すよりもホースの口を指で押さえた方が水圧が上がって激しい水がでるのと同じだ。
「もっと一点集中にして……わたしも残ってる魔力をこの一撃に突っ込む!」
ゴブリンロード全体を易々と呑み込むくらい巨大だったデストロイキャノンを、徐々に中央に密集させていく。
それに加えて、まだわたしの体内に巡っている魔力もどんどん追加で注入していく。
すると、早くもゴブリンロードに変化が現れた。
「ヌゥッ……グググ……!」
どうやら、この一点集中が効いているみたいだ。
デストロイキャノン越しに伝わってくるバリアの感触も、さっきよりも硬さを感じなくなっている!
これは多分、ゴブリンロードのバリアが弱まったんじゃなくて、わたしのデストロイキャノンの威力が上昇したからだろう。
ゴブリンロードの後ろは《魔の大森林》だから、無理に力をセーブする必要はないよね。
後ろにある《魔の大森林》ごと破壊するくらいの気持ちで、さらにデストロイキャノンに魔力を投入し、威力を強化する。
「この一撃で終わらせるぞゴブリンロード!! これが――『暴食の魔王』の全力だぁああああああああ!!」
「ニンゲンゴトキガ……コシャクナァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
わたしのデストロイキャノンとゴブリンロードのバリア魔法の衝突が激化する。
バジバジバジバジ!! と、お互いの魔法が火花のように削られながら、拮抗状態となった。
「コンナモノ……ワレニ、トドクモノカァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
衝突していたわたしたちの魔法がさらにぶつかり合い、衝撃で《魔の大森林》の木々がたわむ。
森全体も巨大な嵐に見舞われたかのようにごうごうと枝葉を暴れさせていた。
わたしもしっかりと地面に足をつけていないと反動で吹き飛ばされてしまいそうだ……!
でも、わたしの魔法はこんなもんじゃ終わらない!!
「いっけぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
さらに莫大な魔力をデストロイキャノンに投入した。
最初は何とか拮抗している状態だったけど、徐々にその趨勢は崩れ始める。
視界が漆黒の魔力に染め上げられる中、ついにバリアにビキリとヒビが入った。
そして、次の瞬間。
――――バリィィィィィィイイイン!!
辺り一帯に、ガラスのように砕け散るバリアの破壊音が響き渡った。
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