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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第80話  違和感に気づいちゃう、ぽっちゃり

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「スパークリングボム!!」

 バスケットボール大の電撃エネルギーの塊が、魔物の群れの中心で爆発する。
 数秒間ほど電撃がほとばしった後、バタバタと魔物たちが倒れていく。

「よーし、これで結構片付いたかな?」

 前方に広がる草原は先ほどまでとは違い、だいぶ見晴らしが良くなっていた。
 まあ、それもそのはず。
 いま発射したのを合わせて、合計で十発くらいスパークリングボムを撃ったから、《魔の大森林》から暴れ出てきていた魔物はほぼほぼ片付いた。
 それにしても、仮にスパークリングボム一発で百体の魔物を倒したとしても、十発も撃てば千体も倒してるんだよね……。
 草原は見晴らしが良くなったとは言ったけど、それはあくまでも遠方を見た場合の話。
 視界の下の方は積み上がって倒れる無数の魔物たちで埋め尽くされていて、ぶっちゃけ足の踏み場もないほどだ。
 普通これだけ味方がやられているのを見たら魔物も怖じ気づいて逃げるはずなんだけど、そんなものお構いなしに突っ込んできたことから狂乱化の恐ろしさを垣間見た気がするよ。

「魔物の侵攻もちょっと落ち着いてきたみたいだし、先に進んでみよっかな。サラ、行こう!」
「ぷるん!」

 わたしは足元で大人しく待っててくれていたサラに呼び掛ける。
 一応メインとなる魔物の群れはほぼ無力化したけど、まだ《魔の大森林》から増援がやって来るかもしれないからね。
 また戦闘が勃発した時にこの魔物の死体は邪魔になるので、今のうちにサラに回収してもらおう。

 わたしとサラは小走りで百メートルほど進み、魔物の群れが倒れる所まで行った。

「それじゃ、ここにいる目につく魔物をぜ~んぶ回収しちゃって! パッと見千体くらいいそうだから、もしキャパが満杯になりそうだったら気にせず言ってね!」

 サラは魔物を回収&解体してくれるとっても便利なスキルを持っているけど、今回は異常なほど数が多すぎる。
 もしかするとサラも回収しきれないかもしれないから、一応伝えておく。
 キャパオーバーになったらわたしのアイテムボックスに収納したら良いだけだからね。

「ぷるーん!」

 わたしの指示を受けたサラは張り切ってぼよよん! とスライムボディを大きくし、一度に何体もの魔物を呑み込んで回収していく。
 実に効率的な回収方法だね!
 だけどこの方法でも全て回収し終えるのに数分はかかりそうだから、その間わたしは付近に注意を向けておこう。
 万が一、奇襲なんかをしてくる魔物がいるかもしれないし、狂乱化に関する何らかの情報が得られるかもしれない。

「うーん、とは言っても、特に変わったものはないかなぁ。草原も森もいつも通りだしね。まあ、この大量の魔物の死体を除けばだけど……ん?」

 倒れている魔物たちをひょひょいっと飛んで何となく見回っていると、一つあることに気がついた。

「ん~……なんか、ゴブリンの数が多い?」

 最初わたしに突っ込んできた第一陣の魔物の群れは多種多様な魔物が襲いかかってきた。
 たしか第二陣、第三陣も同じような感じで色んな魔物がいた。
 だけど、今わたしがいる魔物の群れの後方あたり、第五陣以降の魔物の部隊はやけにゴブリン率が高い。
 周りに倒れているのはゴブリンまみれだ。

「ゴブリン……ゴブリンかぁ。ゴブリンとは何かと因縁があるからね、わたしは」

 ゴブリンの姿を見ると、二日前の出来事が脳裏に蘇ってくる。
 忘れられるはずもない、わたしがこの異世界に召喚(?)されてから初めて出会った魔物の一体がゴブリンだ。
 そしてわたしの体を縄でぐるぐる巻きにしてくれやがったのもゴブリンたちであるらしい……!
 もう一体、ギガントボアっていう別の巨大な魔物もいたけどね。
 ……そういえば、今日はギガントボアを見ていないな。
 ゾウよりも大きな体をしていたから、あれだけの巨体であれば見逃すことはないはずだけど、ギガントボアは狂乱化していないのかな?
 あの魔物の骨付き肉はとっても美味しかったからね。
 もし他の魔物たちと同様、《魔の大森林》から出てきて襲いかかってきたらサクッと倒してこの場で第二の昼食タイムを取ってもいいね!
 こんなことを言うと、さっきヤマト国の屋台でご飯を食い尽くしただろとかって言葉が返ってきそうだけど、わたしの胃袋があれっぽっちのご飯で満足することがないことなど言うまでもないだろう!

 わたしがそんなとりとめもないことを考えながら付近を練り歩いていると、サラの声が響いた。

「ぷるるーん!!」

 振り返ってみると、一軒家くらいの大きさまで膨らんだサラが最後の魔物たちを呑み込んでいる最中だった。
 その呑み込んでいる魔物は、さっきわたしが違和感を覚えていたゴブリンたちだ。
 謎にゴブリン率が多かったけど、まあ偶然かな?

「ありがとう、サラ! お腹のキャパは大丈夫?」
「ぷるるん!」

 全ての魔物を回収し終え、しゅるるるる、と小さくしぼんでいくと、サラはぴょんぴょん跳ねてわたしにダイブしてきた。
 それを受け止め、まんまるスライムボディをなでなでして褒めてあげる。
 千体以上もの魔物を回収したからキャパが心配だったけど、当のサラはまだまだへっちゃらみたいだ。

「付近をざっと見てみたけど、まあそこまで気になる所もなかったなぁ。一旦街に戻ろっか、サラ」
「――ぷるん!」

 街への帰還を提案したわたしに、サラは何かに反応するように震えた。
 どうしたんだろう。
 何かあったのかな?
 わたしは何気なくサラの視線が向いていそうな方向、《魔の大森林》に目を凝らしてみる。

「……んん? なんだろう……なにか、いる?」

《魔の大森林》を注意深く観察していると、何か大きな影が動いたような気がした。
 何故だかわからないけど、姿が見えないのに並々ならぬオーラを放っている気がする。

「あれは放ってはおけないね。街に戻る前に、ちょっと確認を――――」

 わたしがサラを抱っこしながら《魔の大森林》に歩みを進めた、刹那。

 突如発生した地鳴りのような轟音と共に、わたしの視界が漆黒の巨大光線で覆い尽くされた。



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