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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり
第29話 料理意欲がわいてきちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む「ジャガイモも買えたし、塩と油も買えたし、これでポテトとポテチが作れる! 時間があったら作ってみるから、出来上がったら一緒に食べようねサラ!」
「ぷるーん!」
芋系料理を思い描き、ルンルン気分で市場を練り歩くわたし。
サラも楽しそうに震えている。
やっぱり食べ物は見て回ってるだけでも楽しいよね!
「それにしても、本当に色んな食材があるんだなー」
全体的に見た感じ、大体の食材はこの市場に揃っていると思う。
唯一、数が少なかったのは魚介類くらいかな。
こっちは干物みたいな長期間保存が効くようなものしかなくて、生魚などはあまり売っていなかった。
ベルオウンの近くには海はないのかもしれないね。
「その代わりと言っちゃなんだけど、こういうのがあるんだよね。マンドラゴラ漬け……なんだこれ」
ムンクの叫びみたいな顔をした木の根っこが、謎の液体に浸されてビンに詰められている。
見た目はホルマリン漬けみたいで完全にホラーなんだけど……異世界ならではの生薬かなんか?
他にもホブゴブリンの生き血やリザードマンの目玉、オークのしゃれこうべなんかも売っていた。
こういう食材(?)は一体誰に需要があるんだろうね……?
「だけど、こうもたくさん食材に囲まれると両親のお弁当屋さんを手伝っていた時を思い出すなぁ」
両親は地元ではそこそこ人気のあるお弁当屋さんを経営していたからね。
そんな環境だったからか、わたしも小さい頃から料理のお手伝いをしていたものだ。
実際に料理を作るのはもちろん、調理中に足りなくなった食材があるとわたしが近所のスーパーに買い出しに行ったり、翌日にお弁当で使う料理の仕込みをやったこともある。
わたしは食べるのは大好きだけど、料理を作るのも好きなのだ。
だからこんな風に色んな食材を見ていると、何だかお弁当を作りたくなってくるな。
「いつかわたしもお弁当屋さんを開業してみてもいいかもしれないなぁ。どう思う、サラ?」
「ぷるん!」
「賛成ってこと? それじゃちょっと考えてみようかなぁー」
「ぷるーん!」
わたしのお弁当屋さん開業案には、サラも賛成してくれてるみたいだ。
それならちょっと本気で考えてみようかと思ったけど……この市場にはお米が売ってないんだよね。
やっぱりお弁当を作るには白ご飯は必要だ。
昨日、ルカの宿屋の夕食でご飯が出てきた時、たしかヤマト国から仕入れたって言ってたよね。
どうしてもご飯が欲しかったら、ヤマト国の商人から買い付けるしかないか。
お金はたんまりあるのである程度の量を購入しても大丈夫だろう。
問題なのは、そのヤマト国の商人がどこにいるのか分からないことだ。
宿を出る前にルカに聞いておいたら良かったな。
よし、帰ったら聞いてみよっと。
そう結論づけて歩いていると、少しずつ人混みが解消されていった。
どうやら、市場を抜けたみたいだ。
すると、三十メートルくらい離れた先に一つの屋台が建っていた。
「ん、あれはもしかして例のホットドッグ屋さん!?」
わたしは一気に記憶がよみがえる。
市場でポテトの材料を買ったり色んな食材を見てたりしてて忘れていたけど、わたしはケバブのおじさんからオススメされたホットドッグ屋さんを探してここに来たんだったよ。
これは必ず食べないとね!
わたしは小走りでホットドッグ屋さんまで行くと、店番の若いお兄さんが笑顔で対応してくれる。
「いらっしゃいませ! お一ついかがですか?」
「うわぁ、ホットドッグがたくさん!」
ショーケースの中に、いくつものホットドッグが大量に並べられている。
これはいくつか種類があるのかな?
「一番シンプルな作りのプレーンドッグ、野菜多めのベジタブルドッグ、マスタード強めのレッドスパイシードッグの三種類をご用意してます。お決まりになりましたら――」
「それじゃあ、全部一つずつお願いします!」
「あ、はい! 三種類一つずつで、合計銀貨三枚になります」
わたしは銀貨三枚を渡す。
今までは白金貨と金貨しか持っていなかったけど、さっきのケバブ屋さんで最初にケバブ一人前を頼んだ時にお釣りとして獲得した銀貨だ。
さっきの市場もそうだけど、こういう屋台とかで買い物する時は銀貨ベースで持ってると便利みたいだね。
代金を受け取ったお兄さんはショーケースを開けて三種それぞれのホットドッグを取り出す。
そして簡単に紙で包んでわたしに渡してくれた。
「こちらホットドッグ三つになります」
「ありがとうございます!」
三つのホットドッグを受け取ったわたしは、早速そのホットドッグを確認する。
おお、キレイに湾曲した太いソーセージに少量のレタス、その上からケチャップとマスタードがかけられている。
わたしが想像していた通りのホットドッグだ。
これはお兄さんが言っていたプレーンホットドッグかな。
「それではいただきます! あ~むっ! んんんん美味しー!」
ガブリ、とホットドッグをかじると、プリップリのソーセージの肉が弾ける。
その後、一歩遅れてやってくるケチャップとマスタードの力強い味付けに食欲が満たされる。
これぞホットドッグだね!
もぐもぐと食べていると、すぐに食べきってしまったので次に移る。
「お次はベジタブルドッグ! 名前の通り、これは野菜が多めだね」
ベジタブルドッグは、さっきのホットドッグに比べてレタスの量が多い。
さらにソーセージの下にもオニオンやアボカドっぽい野菜が入っている。
食べてみると、パリッと割れるソーセージとシャキシャキとした野菜が組み合わさってとても美味しい。
マスタードも少し弱めで、食材の味をより感じられるようになっている。
色んな食感も楽しめるから、食べてて全く飽きないね。
美味しいからこれもすぐに食べ終わっちゃったよ。
「さてさて最後は、レッドスパイシードッグだね。これは結構辛そうだけど大丈夫かな」
このホットドッグに至ってはマスタードが黄色ではなく真っ赤だ。
いかにも辛そうな感じ。
激辛系の料理はそこまで得意ってわけじゃないけど、何事もチャレンジが大切。
わたしは思いきってバクリとレッドスパイシードッグを食べた。
やっぱ辛い!
だけどソーセージの肉汁と辛いマスタードが絡んでめっちゃ美味しい!
食べてるとだんだん病みつきになってきて、しかもこの辛さがさらに食欲を増進させてくれる気がするよ。
あー、このホットドッグもめっちゃ美味しかった~。
わたしの手には、ホットドッグの包装紙が三枚あるだけ。
もう全て完食してしまったのだ。
まあホットドッグって思ったより小さいから、すぐに食べきっちゃうよね。
てなわけで――
「すみません!」
「はい? どうされました?」
ホットドッグ屋のお兄さんは、きょとんとした顔で振り返る。
そのお兄さんの下にあるショーケースの中には、まだまだたくさんのホットドッグたちが眠っている。
それを見たわたしは、例によってあの悪魔のセリフを言うことになった。
「ここにあるホットドッグ、全部ください!!」
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