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異世界ライフを満喫しちゃう、ぽっちゃり

第21話  思わぬ大金にビックリしちゃう、ぽっちゃり

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 ギルド総出の鑑定祭りからしばらくった後、わたしは受付に移動した。
 ニコニコ笑顔のクレアさんが、小さな麻袋をドンと置く。

「ブラックウルフとファングオーク、そしてギガントボアの諸々もろもろの素材を合わせまして、白金貨はっきんか四枚と金貨六十枚の買取となります」

 見たところ、麻袋はパンパンに膨らんでる。
 え、これいくら入ってるの……?
 紐をほどいて中から白みを帯びたコインを取り出す。
 表面には、この国の国旗のようなマークが刻印されている。

「す、すげぇ……! 白金貨はっきんかなんて滅多に見れないぜ」
「ああ。高ランク冒険者でなければまずお目にかかることはない額だからな」

 わたしが手に取った白いコインを見て、デリックとレイラがゴクリと喉を鳴らしている。
 どれくらいの価値があるのか、試しに鑑定してみるか。

 ―――――――――――――――――――
 白金貨はっきんか 

 ノルヴァーレ王国で使用される通貨。
 ―――――――――――――――――――

 うん、やっぱりわたしの『食の鑑定』は食材以外の調べものにおいてはポンコツなようだ。
 んなこと分かっとるわ! という情報しか出てこない。

「これほどの高額買取は久しぶりだからな。多少だが色をつけてある。今後も素材を売るのは我がギルドで頼むぞ、コロネ」

 レスターさんがなぜか得意気に威張っている。

 うーん、この世界の通貨が分からないから具体的にいくらぐらいの金額を貰ったのか不明だけど、白金貨はっきんかが高額なのは分かる。
 レイラに焼き鳥を奢ってもらった時は、たしか焼き鳥六十本で金貨二枚とか言ってたっけ。
 え、それじゃあ端数の金貨六十枚だけでも、合計で焼き鳥が一八〇〇本も買えてしまうということ!?

 これに白金貨はっきんか四枚も加えたら……どうやらとんでもない額を貰ってしまったらしい。
 通貨が詰まった麻袋を持ってみると、めっちゃ重い。
 確実に、一介の高校生が手にしていい金額じゃないよね。
 さっさとアイテムボックスにしまっておこう。

 わたしは手にしていた白金貨はっきんかを麻袋に戻して紐を縛り、アイテムボックスを発動させる。
 すると、麻袋はわたしの手に吸い込まれるようにして消えた。
 何気に初めてアイテムボックスを使ったけど、無事にお金を収納できて良かったよ。
 これで盗難の心配もないね。

「そう言えばコロネ、もう宿やどは取っているのか?」
「え、宿?」
「ああ。この街は他の都市部と違って宿屋が少ないからな。早めに取っておかないと泊まれなくなるかもしれないぞ」

 確かに、どこにも泊まるあてがないわたしに宿屋は必須だ。
 言われるまで気づかなかった。
 でも、どこに宿屋があるのか分からないから、話の流れで聞いてみよう。

「宿屋ってどこら辺にあるの?」
「このギルドを出て右に曲がった大通りの突き当たりに良い宿屋がある。相場よりも値段は高めだが、その分サービスもよくて飯も美味い。俺のオススメだ」
「ご飯美味しいの!?」
「ああ。あの宿で出てくる飯は絶品だ」

 飛び付くわたしに、レスターさんはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 宿屋の魅力の一つは、何といっても提供される料理だろう。
 この街の文化的に多分日本みたいな海鮮料理とかじゃなさそうだけど、一体どんなご飯が出てくるのか楽しみだ。 
 想像するだけで、じゅるりとよだれが出てくるよ。

 宿はそこで決まったから、すぐに部屋を取りにいかないと。
 異世界に来て野宿はいやだからね。

「それじゃあ、わたしはもう行くよ。宿も早めに取っておきたいしね」
「そうか。何かあれば気軽にこのギルドへ来るといい」
「コロネさん、またのお越しをお待ちしております! レア素材など入手されましたら、買取はぜひ当ギルドでお願いしますね!!」
「う、うん。ありがとう。それじゃ」

 レスターさんとクレアさんの見送りっぽい宣伝活動を受けながら、わたしはギルドを出ていく。
 そう言えばわたしがぶん殴った〈獅獣の剛斧ビーストアックス〉の冒険者たちがいなくなってる。
 わたしたちが素材買取をしている間に、別の職員の人が撤去したのかな。
 ありがたいね。

「コロネ、俺たちはこっちだから今日はここでお別れだな」

 一緒にギルドを出てきたデリックが、左側の道を指しながら言ってきた。
 今からわたしが向かう宿とは正反対の方向だ。

「デリックたちの宿は別の場所にあるんだね」
「いや、私たちはパーティーで一軒家を買っていて、そこに住んでいるんだ」
「あ、そうなんだ。一軒家なんてすごいね」
「それも結構広めの家だからな! コロネにはピンとこないかもしれねぇが、これでも俺たちは街で上位の冒険者パーティーなんだぜ?」
「広い家に住めるようになれば冒険者として一人前だと言われている」

 冒険者の間ではそういう風に言われてるんだね。
 確かに家を購入していれば今のわたしみたいに宿を探す必要もないし、帰る場所が決まっていれば色々と生活はしやすくなるだろう。
 そう考えると、デリックとレイラは稼いでる方の冒険者なんだね。
 焼き鳥を何十本も奢ってくれたレイラはお金持ちっぽいし。

 レイラの経済事情について考えていると、わたしはあることを思い出す。

「あ、そうだ。レイラ、さっき借りてたお金返すよ。はい、コレ」
「ああ、ありがとう」

 わたしは金貨一枚をレイラに渡した。
 これはわたしが冒険者登録をする際の登録料として借りたお金だ。
 レイラはあんまり執着してなかったみたいだけど、こういうお金のやり取りはきっちり清算しておかないとね。
 後から変に揉めるのも嫌だし。

「それじゃあ、二人とも今日はありがとう。わたしはもう行くよ! ばいばーい!」
「ああ! コロネも気を付けて帰れよ!」
「コロネ殿と出会えたことに感謝する。それでは、また会うことがあれば」

 別れの挨拶を交わして、わたしたちはお互い反対方向へと進んでいく。

「それじゃ宿に向かおうか、サラ」
「ぷるん!」

 サラはぽよんと跳ねて答える。

 それにしても、パーティーで一軒家に住むとかちょっと憧れる。
 わたしたちの世界で言う、シェアハウスみたいな感じなのかな。

 もしわたしもこれから仲間ができるようなことがあれば、家を借りて一緒に住むのも楽しそうだね。



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