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第二章 仲間とともに
熱帯雨林 1
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翌日、テオたちは熱帯雨林の入り口に差しかかった。
「トラウケル鉱山へ行くにはこの熱帯雨林を抜けるか、さもなくば北側の岩山を超えていくしかありません。どちらも険しい道ですが、熱帯雨林のほうが比較的安全かと思います」
とココも言っていたし、リーナやギザもそれに賛成した。
ギザからはいまだに「子ども賢者」とからかわれながらも、ココは頭脳としての役割をしっかりと果たしている。まだ十二歳だが、テオのパーティはもはやココ抜きの旅など考えられなかった。
「君は将来、大賢者になるだろうな」
鬱蒼と茂る木立の中に踏み入りながらテオが言うと、ココは真顔のまま、
「ええ。両親も僕をそうなるように育てましたから」
と、当然のように告げた。
熱帯雨林の中はじめついて薄暗かった。
頭上の高いところでは枝や蔦が複雑に絡み合い、すぐ近くで鳥の声が聞こえても鳥の姿はどこにも見えない。
視界が思うように利かないことで、テオたちは次第に不安に苛まれてきた。
「気を付けましょう。こんなところでパニックになったら、最悪の場合、全滅もあり得ます」
ココが低い声で警告した。
しかし、その言葉も大げさとは思えなかった。
木々から垂れ下がっているのが何かの植物の蔓なのか危険な毒蛇なのかも、ちょっと見ただけでは判別できない状況なのだ。
思わぬことから恐怖心に駆られ、パニックに陥らないとは断言できなかった。
「蒸し暑いわね。なんだか気温が一気に上がったみたい」
リーナがつぶやき、顎まで滴った汗を拭った。
「休み休み行こう。焦ったら体力の消耗が早くなるから」
テオは我ながら名案だと思いつつ、皆にそう声を掛けたが、
「いや、急いだほうがいいんじゃないか? こんなところでぐずぐずしてたらモンスターの餌食だぞ」
とギザが反対し、リーナも援護するように、
「私もできるだけ早く出たほうがいいと思う。早くシャワー浴びたいし」
三人の間で意見が割れたとき、頼りになるのはココの助言だ。
「ココはどう思う?」
「そうですね……」
と、ココが何かを言いかけた、そのときだった。
「トラウケル鉱山へ行くにはこの熱帯雨林を抜けるか、さもなくば北側の岩山を超えていくしかありません。どちらも険しい道ですが、熱帯雨林のほうが比較的安全かと思います」
とココも言っていたし、リーナやギザもそれに賛成した。
ギザからはいまだに「子ども賢者」とからかわれながらも、ココは頭脳としての役割をしっかりと果たしている。まだ十二歳だが、テオのパーティはもはやココ抜きの旅など考えられなかった。
「君は将来、大賢者になるだろうな」
鬱蒼と茂る木立の中に踏み入りながらテオが言うと、ココは真顔のまま、
「ええ。両親も僕をそうなるように育てましたから」
と、当然のように告げた。
熱帯雨林の中はじめついて薄暗かった。
頭上の高いところでは枝や蔦が複雑に絡み合い、すぐ近くで鳥の声が聞こえても鳥の姿はどこにも見えない。
視界が思うように利かないことで、テオたちは次第に不安に苛まれてきた。
「気を付けましょう。こんなところでパニックになったら、最悪の場合、全滅もあり得ます」
ココが低い声で警告した。
しかし、その言葉も大げさとは思えなかった。
木々から垂れ下がっているのが何かの植物の蔓なのか危険な毒蛇なのかも、ちょっと見ただけでは判別できない状況なのだ。
思わぬことから恐怖心に駆られ、パニックに陥らないとは断言できなかった。
「蒸し暑いわね。なんだか気温が一気に上がったみたい」
リーナがつぶやき、顎まで滴った汗を拭った。
「休み休み行こう。焦ったら体力の消耗が早くなるから」
テオは我ながら名案だと思いつつ、皆にそう声を掛けたが、
「いや、急いだほうがいいんじゃないか? こんなところでぐずぐずしてたらモンスターの餌食だぞ」
とギザが反対し、リーナも援護するように、
「私もできるだけ早く出たほうがいいと思う。早くシャワー浴びたいし」
三人の間で意見が割れたとき、頼りになるのはココの助言だ。
「ココはどう思う?」
「そうですね……」
と、ココが何かを言いかけた、そのときだった。
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