18 / 50
第二章 仲間とともに
アルトー氏の罪
しおりを挟む
「牢獄?」
おうむ返しに口にしたテオに、ココは頷いて、
「ええ。殺人罪で投獄され、処刑予定と聞いています。法務大臣がいつ死刑執行の書類にサインするかは不明ですが、もう十数年も牢獄の中らしいので、そろそろかもしれません」
「殺人って、誰を殺したんだよ」
上ずった声で訊ねたギザに、ココは初めて「それは僕にも分かりません」と答えた。
「でも、それじゃパーティに加えることはできないじゃないか」
口を尖らせたテオに、ココはうっすらと笑みを浮かべて、
「ご存じありませんか? この国の法律では、特別なスキルを持った冒険者に限り、身元引受人がいれば保釈されるんです。それだけモンスター退治は人手不足ってことですけどね」
「それじゃ、誰かが引受人になれば……」
ギザの言葉に、ココは「パーティに加えることは可能です」と断言した。
しかし、リーナは形のよい眉の間に皺を寄せて、
「私は反対だわ」
「どうして?」
「いくら強いスキルを持ってると言っても、要は殺人犯なんでしょ? そんな人と冒険なんかできないわよ」
「何か事情があったのかもしれないじゃん」
ギザが食い下がる。
けれど、リーナは真剣な瞳で、
「その吟遊詩人は強大なスキルを持っているのかもしれない。けど、その代償に人の心を失ってるんでしょう。そんな人と旅ができる?」
リーナの言葉に、テオは唸らざるを得なかった。
アルトー・ラトゥールの持つスキルは確かに魅力的だ。けれど、人殺しであることに変わりはない。
パーティを組むにあたっては、互いの信頼関係が何よりも大事だ。殺人者をパーティに加えれば、みな疑心暗鬼に駆られて気の休まる暇もないのではないか。
「テオ、あなたのパーティよ。あなたが決めて」
リーナに促され、テオは絞り出すような声で、
「他の案を検討しよう」
と告げた。
おうむ返しに口にしたテオに、ココは頷いて、
「ええ。殺人罪で投獄され、処刑予定と聞いています。法務大臣がいつ死刑執行の書類にサインするかは不明ですが、もう十数年も牢獄の中らしいので、そろそろかもしれません」
「殺人って、誰を殺したんだよ」
上ずった声で訊ねたギザに、ココは初めて「それは僕にも分かりません」と答えた。
「でも、それじゃパーティに加えることはできないじゃないか」
口を尖らせたテオに、ココはうっすらと笑みを浮かべて、
「ご存じありませんか? この国の法律では、特別なスキルを持った冒険者に限り、身元引受人がいれば保釈されるんです。それだけモンスター退治は人手不足ってことですけどね」
「それじゃ、誰かが引受人になれば……」
ギザの言葉に、ココは「パーティに加えることは可能です」と断言した。
しかし、リーナは形のよい眉の間に皺を寄せて、
「私は反対だわ」
「どうして?」
「いくら強いスキルを持ってると言っても、要は殺人犯なんでしょ? そんな人と冒険なんかできないわよ」
「何か事情があったのかもしれないじゃん」
ギザが食い下がる。
けれど、リーナは真剣な瞳で、
「その吟遊詩人は強大なスキルを持っているのかもしれない。けど、その代償に人の心を失ってるんでしょう。そんな人と旅ができる?」
リーナの言葉に、テオは唸らざるを得なかった。
アルトー・ラトゥールの持つスキルは確かに魅力的だ。けれど、人殺しであることに変わりはない。
パーティを組むにあたっては、互いの信頼関係が何よりも大事だ。殺人者をパーティに加えれば、みな疑心暗鬼に駆られて気の休まる暇もないのではないか。
「テオ、あなたのパーティよ。あなたが決めて」
リーナに促され、テオは絞り出すような声で、
「他の案を検討しよう」
と告げた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる