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第8章

【51】新学期!

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 ――新学期。廊下にて。
 ラフーワ魔法学院生活の1年目の最終学期です。1年間の総括をする時期が近付いていますわ。

「ヒロさん! 今年もよろしくお願いいたしますわ!」
 冬期休暇、『聖夜祭』以降ヒロさんにお会いする機会が無かった私はヒロさんを補給したくてしたくてウズウズしていましたわ……!
 前世だったら毎日ゲーム機やイラスト集やグッズを眺めれば良かったのですが、今生ではそれも出来なく、かつ、生身の主人公ヒロさんを知ってしまった私はもう色々と後戻り出来なくなっていましたの……っ!
「あはは! カレンちゃんこちらこそ今年もよろしくね!」
 ああっ、ヒロさんの笑顔が眩しい……っ! このまま抱きついてしまってもよろしいかしら、ハァ……ハァ……。

「カレンちゃん、なんだか息が荒いけど大丈夫? 保健室に行く?」
「え! ええ、そんな、だ、大丈夫ですわ……!! 久しぶりにヒロさんにお会いできて嬉しくて興奮してしまったみたいで――いや待ってコレじゃ私変質者ですわあの普通に嬉しくて舞い上がってしまいましてその――……」
 口を滑らしてしまったのでもう遅いですわっ!
「えへへ。私もカレンちゃんに久しぶりに会えて嬉しいよ~!」
 変質者、もとい偏愛者な私にもこの聖女のような笑顔……! いえ彼女は確かに聖女ヒロインそのものでしたっけ!
「みゃ、みゃー……」
 私の肩の上のハクテイさんが若干引いているような声を出していますがそんなことは知りません。
「そうそう、そういえばベルちゃんったら、また太っちゃったみたいで。年末年始にずっとフルーツばかり食べて運動しなかったからかなぁ……。カレンちゃんのハクテイさんは小さくてスリムなままでいいね~」

 間に、なぜかニーハイムス様ことニース先生が入ってきましたわ。
「ベルさんは『幼生』ですからね……。これから大きくなるのではないでしょうか。それに対してハクテイさんは『成獣』なので、体格が変わらないのでしょう」
「にゃー!」
「ぴゅい!」
 ハクテイさんもベルさんも同意のような声を出しましたわ。

「あ! ニース先生! 今年もよろしくおねがいします!」
 ヒロさんが元気にニース先生にご挨拶しましたわ。
「ニース先生、今年もよろしくおねがいします」
 私も『ニース先生』に新年のご挨拶ですわ。
「はい、ヒロもカレンも元気そうで何よりです。今年もよろしくおねがいしますね」

 ニース先生とヒロさんと私は揃って教室に入っていきました。

「ニース師匠! 今年もよろしくおねがいします!」
 ニース先生が教室に入ると同時に、キースが大きな声でご挨拶したわ。
 今年も相変わらず『師匠』なのですね……ふふ。
 続いてエルゼンもニース先生にご挨拶します。
 オルキスは無言で会釈いたしましたわ。こういう時、無口なのは勿体ないですわね。

 そして『聖夜祭』で買い物に行った時に会って以来だったシュリはというと、前学期と変わらず、窓の外を眺めていましたわ……。全く何を考えているのか解らない人です。

 さて、今学期も魔法理論学の授業が始まります。
「年度末になってくると、いよいよ基礎から離れて本番突入って感じですね」
 ニース先生はこころなしか楽しそうですわ。
「皆さん、春からここまでよく頑張ってきました。これからもこの調子で頑張ってくださいね」
 魔法理論学は徐々に魔法の基礎から応用に移って来ていましたわ。キース先生の授業は解りやすいと評判ですの。このまま2年生、3年生とキース先生の授業を受けるのが楽しみですわ。


  ※


 ――放課後。
 校舎裏の休憩所にて。

 今日はヒロさんと私の他に、エルゼン、キース、オルキスに加えてニース先生にシオン神父様に妖精王リュオン様と、事情を知る皆さんが勢揃いでしたわ。
 皆さん新年のご挨拶もそこそこに、ヒロさん中心の魔法練習を始めました。

「うわっ!」
「ヒロさん!?」
 以前ヒロさんは自分の背丈ほどの火柱を出したことが有りましたけど、今回は水柱が出ましたわ!
「お、驚いたぁ……!」
 ヒロさん本人も驚いて腰を抜かしています。
 私はヒロさんの手を持って引き上げながら、
「凄いですわ! 火柱の次は水柱なんて!」
 ニース先生も感心して仰っしゃりました。
「火と水、反対相性を同じだけ出力できるなんてやはり全属性は凄いなぁ……」
「ぴゅい!」
 ベルさんもヒロさんに何か言っています。ご機嫌のようですわ。
 リュオン様がヒロさんに仰っしゃりましたわ。
「今のそれがベルのヒロに対する『加護』じゃな。そのうち加護無しでもそれくらいの魔法なら使えるようになるじゃろうて」

「そうなんですか! ありがとう、ベルちゃん!」
 ヒロさんはベルさんをぎゅっと抱きしめましたわ。
「ぴゅ!」
 ベルさんもまんざらでも無さそうです。というか、ヒロさんに抱きしめられて羨ましいですわ……!

「へぇ~。『全属性』持ちなんて居るんだ?」
 枯れ葉を踏んで、登場したのはシュリ・ハイドレンジアでしたわ。
ってやっぱり大勢の『たまり場』な感じ? せっかく静かな場所だと思ってたのに」
「シュリはご存知無かったかもしれませんが、ヒロさんは『全属性』持ちの魔法使いなのですわよ!」
 つい、私が1歩前へ出て説明をしてしまいましたわ。シュリとヒロさんと会話させるのはなぜか、危険な気がして。

「水、風、火、土、雷、治癒、防御……それで本当に『全属性』なのかなぁ?」
 シュリは意味ありげな言葉を言いました。
「……それはどういうことだい?」
 ニース先生は尋ねます。
「いいや、俺の勘だからアテにはなりませんよ。それじゃ。俺は安住の地を探すんで」
 シュリはそう言ってまた、のらりくらりと他所へ向かって歩いていきましたわ。

「…………『全属性』か」
 リュオン様がひとこと、つぶやきました。
「確かに、『全属性』には2つほど魔法が足りんのじゃよ」
 ニース先生がその話に食いつきましたわ。
「それは初耳です! 一体どういうことですかリュオン様」
「――……とうの昔に人間には失われし属性じゃからのう。今の勉学には無関係なのじゃが」

「かつての『全属性』は『光、闇、水、風、土、雷、治癒、防御』とあったのじゃ」
 シオン神父様も驚いていますわ。
「『光と闇』――ですか。それは神職には興味深いお話しですね」
「うむ。900年ほど前に現王家が台頭すると同時に大陸全土で協定をし封印された魔法のはずじゃ」
 ニース先生も仰っしゃりましたわ。
「……それは、初耳です。王家の話なら――私も一研究員として調査していますが――」
 リュオン様は続けます。
「ちょっとやそっとの調査では出てこないじゃろうよ。その当時の文献は全て燃やされて葬られているはずじゃ」

「ちょっと待ってください!」
 私はリュオン様に質問したわ。
「ヒロさんが『全属性』ということは、その『光、闇』も使えると言うことですか――?」
 リュオン様はお答えくださったわ。
「適応調査していないだけで、恐らく使えるじゃろうな――」

 ヒロさんが驚いています。
「――え!?」
 リュオン様は続けます。
「それが『聖女』と言うものじゃ」
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