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16、『ヒロイン』はどこに!?
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「……ふうっ。」
ドレッサーの椅子に座って髪を乾かしていたフィオナは溜め息をつく。
鏡に映る自分はどこか不安げだ。
ーーそれもそのはず……そして、自分でも自覚してる。
アレクシア・ヴァルリア公爵
小説『悪役公爵の哀しみ』の主人公。
そんな彼とお見合いするのは《ヒロイン》。
ーーそれなのに実際にお見合いしたのは、この私、フィオナ・ローレル伯爵令嬢。
あんな素敵な……ううん。
とにかく、本当ならお見合いをしたのは私ではない。
そう、お見合いをしたのはヒロインの■■■■■。
……私ではない。
勿論、私はヒロインではない。
そもそもヒロインの見た目からして違う。
だって、ヒロインの■■■■■の髪は、美しいピンクで、目も薔薇色の瞳をしているのだ。
私、フィオナは、ホワイトブロンドの髪で、目はアクアマリンのような青色だ。
その点からしてもヒロインとは違う。
……私ではない。
それなのに『ヒロインの役目』をした。
まあ、こういう展開も数ある小説の中にもあるにあるけど……それでも、そうではないのだと、何か違うのだということがわかる。
ーー溜め息をついて、少し考え込んで、テリーにいれて貰った紅茶に口をつける。
「(……そういえば、■■■■■ってどこに住んでいたっけ?)」
紅茶をお飲みながら、ヒロインが暮らしていた家がどこだったかを思い出そうと小説を思い浮かべる。
ーー確かヒロインの■■■■■が小説に登場したのは、確か……。
確か、お見合いのシーンの前にも出てたはずだけど……。
う~~ん。
なかなか思い出せないや。
あくまでこの小説の主人公は、アレクシア・ヴァルリア公爵だ。
主に彼の視点で語られることが多い。
彼の視点でない場合も、物語は彼中心で進んでいた。
「ーーああ。そうだった。」
私はようやく思い出すことができた。
なかなか思い出せなかったのもそのはず……ヒロインが初めて登場したシーンはほんの一瞬だったからだ。
そう、小説の前半に公爵が『お見合いを薦められる』シーンがあった。
薦めた相手はほとんど覚えていないけど……多分、すごく年上の貴族だったはず。
その時に《お見合い相手》として《ヒロインの名前》が上がっていた。
ーーそうそう、その時にヒロインの名前『■■■■■』が初めて書かれてたのだ。
だから、まあこれが初登場と言ってもいいけど、やっぱりきちんとした初登場は、お見合いのシーンだね。
「うーーーん。」
ふと思い当たって、紙とペンを取り出して『相関図』を書いて、人間関係を整理しようとする。
中心人物であるヴァルリア公爵とエミリーちゃんの名前と自分の名前を書いていく。
それから、《ヒロインの名前》を書こうとする。
「…………あれ?」
ようやく私はその違和感に気が付いた。
「まさか」ともう一度書いてみようとするものの、書けなかった。
ーーそう、ヒロインの名前を書くことが出来ないのだ。
「ーーーどうして?」
何度も書こうとするが、書けない。
他の人間の名前はいくらでも書けるけど、ヒロインの名前だけが書けない状況に戸惑いを隠せない。
「……どうして書けないの!?」
どうしてもヒロインの名前だけ書けない事実にかなり動揺してしまう。
「……ただ、ヒロインの名前である《■■■■■》を書けばいいのに!!」
バンッとドレッサーの天板を思わず握った拳で叩いてしまう。
ーーほんの少しだけ落ち着いてから、更なる違和感に気付く。
「ゴクリッ」と唾を飲むと、
「『■■■■■』」
「!?」
もう一度、
「『■■■■■』」
と、何度も試してみても書けないどころか、ヒロインの名前を声に出して言うことも出来ないことに、最早恐怖でしかない。
ヒロインの名前を書けない、
ヒロインの名前を口に出せない。
そんな異常な状況に背筋に嫌な汗が出てくる。
「……ぐ、偶然……よね。偶然……。」
心臓の鼓動が速くなっていく。
「……そんなことがあるわけないよね。」
自分い言い聞かせて、もしかしたらと、《心の中でヒロインの名前を思い浮かべてみた》。
「……………。」
ーー目を閉じて、頭に名前を思い浮かべてみる。
「(……フィオナ……アレクシア……エミリー…………■■■■■……)」
「!!!!!」
驚いて目を開ける。
「……嘘でしょう……」
衝撃の事実にそれ以上言葉が出てこなかった。
ーーそう、私は《ヒロインの名前》を《言葉》にも《文字》にも《思い浮かべる》ことすら出来ない事実に恐怖すら感じるのだった。
ドレッサーの椅子に座って髪を乾かしていたフィオナは溜め息をつく。
鏡に映る自分はどこか不安げだ。
ーーそれもそのはず……そして、自分でも自覚してる。
アレクシア・ヴァルリア公爵
小説『悪役公爵の哀しみ』の主人公。
そんな彼とお見合いするのは《ヒロイン》。
ーーそれなのに実際にお見合いしたのは、この私、フィオナ・ローレル伯爵令嬢。
あんな素敵な……ううん。
とにかく、本当ならお見合いをしたのは私ではない。
そう、お見合いをしたのはヒロインの■■■■■。
……私ではない。
勿論、私はヒロインではない。
そもそもヒロインの見た目からして違う。
だって、ヒロインの■■■■■の髪は、美しいピンクで、目も薔薇色の瞳をしているのだ。
私、フィオナは、ホワイトブロンドの髪で、目はアクアマリンのような青色だ。
その点からしてもヒロインとは違う。
……私ではない。
それなのに『ヒロインの役目』をした。
まあ、こういう展開も数ある小説の中にもあるにあるけど……それでも、そうではないのだと、何か違うのだということがわかる。
ーー溜め息をついて、少し考え込んで、テリーにいれて貰った紅茶に口をつける。
「(……そういえば、■■■■■ってどこに住んでいたっけ?)」
紅茶をお飲みながら、ヒロインが暮らしていた家がどこだったかを思い出そうと小説を思い浮かべる。
ーー確かヒロインの■■■■■が小説に登場したのは、確か……。
確か、お見合いのシーンの前にも出てたはずだけど……。
う~~ん。
なかなか思い出せないや。
あくまでこの小説の主人公は、アレクシア・ヴァルリア公爵だ。
主に彼の視点で語られることが多い。
彼の視点でない場合も、物語は彼中心で進んでいた。
「ーーああ。そうだった。」
私はようやく思い出すことができた。
なかなか思い出せなかったのもそのはず……ヒロインが初めて登場したシーンはほんの一瞬だったからだ。
そう、小説の前半に公爵が『お見合いを薦められる』シーンがあった。
薦めた相手はほとんど覚えていないけど……多分、すごく年上の貴族だったはず。
その時に《お見合い相手》として《ヒロインの名前》が上がっていた。
ーーそうそう、その時にヒロインの名前『■■■■■』が初めて書かれてたのだ。
だから、まあこれが初登場と言ってもいいけど、やっぱりきちんとした初登場は、お見合いのシーンだね。
「うーーーん。」
ふと思い当たって、紙とペンを取り出して『相関図』を書いて、人間関係を整理しようとする。
中心人物であるヴァルリア公爵とエミリーちゃんの名前と自分の名前を書いていく。
それから、《ヒロインの名前》を書こうとする。
「…………あれ?」
ようやく私はその違和感に気が付いた。
「まさか」ともう一度書いてみようとするものの、書けなかった。
ーーそう、ヒロインの名前を書くことが出来ないのだ。
「ーーーどうして?」
何度も書こうとするが、書けない。
他の人間の名前はいくらでも書けるけど、ヒロインの名前だけが書けない状況に戸惑いを隠せない。
「……どうして書けないの!?」
どうしてもヒロインの名前だけ書けない事実にかなり動揺してしまう。
「……ただ、ヒロインの名前である《■■■■■》を書けばいいのに!!」
バンッとドレッサーの天板を思わず握った拳で叩いてしまう。
ーーほんの少しだけ落ち着いてから、更なる違和感に気付く。
「ゴクリッ」と唾を飲むと、
「『■■■■■』」
「!?」
もう一度、
「『■■■■■』」
と、何度も試してみても書けないどころか、ヒロインの名前を声に出して言うことも出来ないことに、最早恐怖でしかない。
ヒロインの名前を書けない、
ヒロインの名前を口に出せない。
そんな異常な状況に背筋に嫌な汗が出てくる。
「……ぐ、偶然……よね。偶然……。」
心臓の鼓動が速くなっていく。
「……そんなことがあるわけないよね。」
自分い言い聞かせて、もしかしたらと、《心の中でヒロインの名前を思い浮かべてみた》。
「……………。」
ーー目を閉じて、頭に名前を思い浮かべてみる。
「(……フィオナ……アレクシア……エミリー…………■■■■■……)」
「!!!!!」
驚いて目を開ける。
「……嘘でしょう……」
衝撃の事実にそれ以上言葉が出てこなかった。
ーーそう、私は《ヒロインの名前》を《言葉》にも《文字》にも《思い浮かべる》ことすら出来ない事実に恐怖すら感じるのだった。
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