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9、初めてのお見合い相手

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ーードキドキワクワクソワソワ……と、期待と不安でいっぱいのままに目的地らしき場所に到着する。
先に馬車から降りた父にエスコートしてもらって馬車を降りる。
想像以上に大きくて立派な屋敷だったので、その持ち主はかなり高い身分の人だと思ってしまう。

内心不安に思っていると、若い男性が近付いてきて、
「ようこそいらっしゃいました。私はのトーマスと申します。」
と、胸に手を当てて頭を下げて挨拶してきます。

「スチュアート•ローレル伯爵だ。こっちは娘の……。」
と、父親が挨拶して自分を紹介しようとしたので、半歩前に出て、
「フィオナ・ローレルと申します。今日はよろしくお願いします。」
と丁寧に挨拶する。

ーーいくら執事長といえど、公爵家の執事長だからね。彼が真っ先に挨拶したってことは、公爵家として代表しているのでしょうから。

「……それでは、旦那様の元へ案内いたします。」
と言って、屋敷の中に入っていくトーマス。

父を先頭に私と付き添ってくれた侍女のテリー、私の専属護衛騎士のジャックとローレル家の騎士のトムと続いてトーマスの後を追っていく。

公爵家の廊下はとても立派で、壁の絵画や置物も高そうで、うかつに近付けない。

ーー廊下の真ん中を進んでいくと、トーマスはまた扉を潜る。
開いた瞬間、光が入ってきて、その中を進むと回廊の両側に庭が広がる。
回廊を抜けると、また扉を潜って今度は庭の中を歩いていくトーマス。

「……わあぁ~~~。」

美しい庭の中を進んでいくと、東屋が見えてくる。
そこが目的地なのかと見ていると、トーマスの進む先にを発見。

その人物に一礼して、
「ローレル伯爵とご息女のフィオナ様をお連れ致しました。」
と、告げるトーマス。

「ーーそうか。ご苦労。」
透き通った声でトーマスを労うと、一歩前に出て光が差す位置に立つ。

「お初にお目にかかる。アレクシア・ヴァルリア公爵です。」
と、胸に手を当てて、決して地位が逆転するような隙を見せない挨拶するヴァルリア公爵。
銀髪で赤い目の美しい顔立ちと、その完璧なオーラに気圧されそうになっていると、さすがの父、伯爵と言うのも伊達じゃないね。

「……今日はお時間作っていただきありがとうございました。フィオナ嬢にもお礼を。」
最後の部分は言って微笑んだ。

「(ーーーーッ!?)」
その完璧な微笑みに危うくやられそうになる。

「……も、申し遅れました。フィオナ・ローレルと申します。……今日はよろしくお願いいたします。」

淑女らしい挨拶を決めると、私を見下ろしていた公爵が小さく笑っていた。

「?」の意味がわからず、思わずお辞儀したままそのまま固まってしまう。

「楽にして下さい。どうぞ、こちらへ。」

公爵は東屋に用意されたテーブルに座るように手で示す。
テーブルには豪華なティータイムのお菓子が用意されていた。その華やかさに目を奪われたせいで、奥にことに気付くのが遅れてしまう。

ーー公爵が座るであろう席の隣に座っていたのは、銀髪で赤い目をした
ーーん?
「(え!?まさか娘もいるの!?)」
私が戸惑っていると、
「……公爵の亡くなられた兄君のお嬢さんらしい。」
と、私の疑問に気が付いた父がそっと教えてくれる。
「………なるほど。」
私が納得したように頷くと、椅子の後ろに立っていた公爵と目があって微笑まれてしまう。

父に背中を軽く押されて、ようやく気が付いて、慌てて、それでいて優雅に公爵が引いた椅子の前に立って、公爵の気遣いを受けながら座った。
続けて父も私の隣に座ると、公爵も自分の席に座る。

「改めまして、アレクシア・ヴァルリアです。この子は、私のであり、亡くなった兄のチャールズ・ヴァルリアの娘のエミリー・ヴァルリアです。」

あくまで丁寧に接してくれる公爵は隣に座る娘を笑顔で紹介する。

「エミリー・ヴァルリアです。よろしくお願いします。」
と座ったままだけど、きちんと挨拶してくれる。

「(可愛い~~~~~)」
思わず心の中で叫んでしまう。
そんな私の気持ちを察したのか照れくさそうにうつむく。

「(安心して! 貴女みたいな可愛い子をいじめたりしないわ……こっそりよ!)」

エミリーの可愛さに視線を奪われてると、

「……クスッ。」と小さな笑い声のした方を見ると、笑ったのは公爵で、目があうとさっきよりも、もっと優しく微笑まれてしまい、その完璧な微笑えみを向けられて真っ赤になってしまう。

「令嬢は優しいですね。」
公爵に誉められて、弾かれるように顔を上げて公爵の顔を見た瞬間、は突然やってきた。


『ーー敵味方の関係なく、悪事を働いた者を許さない。敵であれば尚更に容赦しない。その敵を討ち取るのが役目ーー』
『ーー弱いものいじめをする輩であれば誰であろうと許さない。女の涙などは信用しないーー』
『ーー大切な者を守るためであれば、どんなに傷付いても構わないーー』
『ーードラゴンが相手でも退くわけにはいかない。敵は殲滅する。それがこの小説の残虐非道の冷酷無慈悲な悪役公爵(ダークヒーロー) アレクシア・ヴァルリア、その人である。』

ーー小説の一文やファンの評価の言葉が頭によぎる。
ーーそう、が《》の一番人気のダークヒーローだったのか。

ーーあの最終的には皆殺しちゃったヤバくてコアなファンに人気ある小説『悪役公爵の哀しみ』のダークヒーロー……の彼。

この世界が私も好きだった小説の世界であったことを18年生きてきて、ようやく知ることができたのだった。
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