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「また、あの方と一緒にいらっしゃるわ」 

誰かがの姿を見て、ヒソヒソと噂する。 

そう、とは、侯爵令嬢である私、フィオナ・クロプトンの婚約者である王太子のヘンリー・バーネル様と平民であるリリーの仲睦まじい二人の姿が学園のあちこちで目撃されていたのだ。 

「よろしいのですか?」 

学園の友人達や会う人会う人がそう聞いてくる。
時には嫌みな言葉も一緒に。 

でも、私はいつも「預かり知らぬこと」だと言って、質問からも問題の二人からも極力距離を置いていた。 

勿論、時々起こる不可思議な出来事からも。


ーーそうこう爆弾を抱えたまま、卒業パーティー当日。 

「フィオナ・クロプトン、貴様との婚約は破棄させて貰う!!」 

と、パーティー開始と同時に王太子がリリーを伴って、を突きつけてくる。


ーー狙いどおり。 

「ーー理由は何でしょうか?」 

そう冷静に聞き返すと、私の態度が気に入らなかったのか、王太子が怒り出す。 

「何だ!その態度は!」
「やはり、悪女だな。貴様がリリーにしていた数々の嫌がらせは許すことはできない!!」 

左手でリリーを抱き寄せながらの断罪。 

ーーはい。まったく関係ありません。 

「そのような真似は致しておりません」 

顔色変えずに冷静な私を見て、さらに王太子の怒りが爆発する。 

ーーどんなしたか追求してくるが、だ。 

ーー何故なら、それらはすべて…… 

と、不敵な笑みを浮かべるフィオナ。


「ーー何をしている!」 

国王·カリス・バーネルと王妃·ユニス・バーネルが兵を伴い乱入ーーと同時に王太子を兵に拘束させる。 

「ーー父上!?」 

驚く王太子に父である国王は告げる。 

「事実確認もしないで、こんな暴挙にでるとは何事だ!!」 

「ーーですが」 

「言い訳無用!連れていけ!!」 

騒ぐ王太子に構わずに兵士に連行させる。 

その時、一緒に連行されるリリーが小さく会釈したように見えたのは気のせいかーー。


「ーー大丈夫か?」 

いつの間にか父·フレッド・クロプトン伯爵と母·メアリーがそばに寄り添ってくれていた。


とすまなかったな」 

国王はフィオナと伯爵夫妻に謝罪する。 

「いえ、スムーズに解決できて良かったです」 

二人は意味深な視線を交わす。


ーー今回のは、実は。 

そう、国王夫妻に伯爵夫妻、そして当事者のフィオナ、及び信頼の厚い最側近達とで。 

すべては一味と、それに踊らされていた王太子を一気に粛清するためにだったのだ。 

ーー勿論、


「ーー私の役目もここまでね」 

学園で見かけた「ふわふわした男受けするリリー」とは正反対な「強気な一人の謎の女」がフードを被って姿を消す。


あの「リリー」もまたであった。


ーー翌日、「王太子の廃嫡」と「反王家派粛清」されて、新たな王太子には、第2王子のジョセフ・バーネルがつき、その婚約者にフィオナ・クロプトンがついたと発表された。 

「本当にお疲れ様でした」 

王太子となったジョセフとガゼホでティータイムしていたフィオナ。 

「ーーそうですね。計画が上手くいって良かったです」 

私が微笑むと顔を赤くしたジョセフが、 

「ーーなので、必ず貴方を幸せにしてみせます!」 

不意に握られた両手の温もりと真摯で真っ直ぐな瞳に、心の中が温かく幸福な想いに満ちていくのだった。
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