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16、妹思いの兄

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ーー自分の部屋に戻るところに帰宅した兄と顔を合わせたセレス。

「セレス!」
「お兄様!」
嬉しそうな笑顔でゆっくりと近づいてくる兄のヴィンセント。優しく抱き締められると、その温もりは久しぶりでホッとしていた。

「こんなところで何をしていたんだ?」
兄のヴィンセントに聞かれて、
「お母様とお父様とお茶をしていました」
そう答えると、少し何かを考え込んだヴィンセントから、
「私ともお茶をしないかい?」
と誘われた。
「勿論です!」
思わずすぐに返事をすると、兄には嬉しそうに微笑まれた。
そのまま兄のエスコートで歩き出す。


ヴィンセント·ヴィクター·ダリアートン。
優しくて仕事は真面目で剣と魔法を使えて、それでいて物凄く強いのに、、金髪で青い目のイケメンの


――私の部屋に戻ると、隣同士に座った。すぐにケイトがお茶の用意をする。
兄が紅茶を一口飲むのを見てから、
「それで、?」
私がそう切り出すと、思うところがあったのか兄は苦笑していた。

カップをテーブルに置くと、
「……そうだね。さて、話したものか……」
とどこか言いにくそうにしている兄。少し考え込んで、意を決したように、
「……なんだけど」
と話を切り出した。

「(!)」
名前を聞いただけで、心が反応してしまう。

兄からも何かを言われるのかと、思わず自然に身構えてしまう。
そんな私の様子に気が付いたのか、小さく笑った兄は私の頭を撫でながら、
「別に責めているとかではないよ。……ただ、
真っ直ぐと見つめるその目は本当に私のことを心配してくれている。
両親に続き、兄にも本気で心配してくれていることに、心が温かくなってしまう。
「ありがとうございます」
私は素直にお礼を言う。

「《》のことは知っているか?」
そう聞かれて、やはり兄の話しもそのことかと思いつつ、さっきの《》もそのことだったことを伝える。

「……?」
その言葉だけでも、どうやら兄も公爵とのことは特に反対しているようには見えなかった。

「はい」と私が頷くと、そうだと思ったと二人の反応を予想していたようだ。

ーーそれにしても、はかなり高いのね。
意外と家族の公爵への好感度が高いことに少しだけ驚いてしまう。

「……まあ、からな」
兄の言葉に思わず、「?」となってしまう。

調
兄のとんでもなくに呆れつつも、見守ってくれていることに関しては、素直に嬉しかったのも事実。
ーーそれでも……と、とりあえず《》しておくことにする。

それから、『調』と聞いて、正直、内心かなり動揺していた。

ーーまさか、《》とは思っていなくて、さすがに驚いてしまう。
ーー正直、ミシェルのことを疑ったりするようなことは、ないと思っていた。
小説でもどちらかと言うと、だったような気がする。
……って言うか、だった気がする。

それでも、兄はミシェルのことを疑い、調査までしていたことにちょっと嬉しくなってしまう。

テーブルにが置かれる。
「これを読むかどうかは
そう言って、紅茶を口にした。

話の流れから、
調調
調調
のことだとわかったセレス。

ただ、書類をじっと見ていた私の頭を撫でると、
「無理して読む必要もないし、読まなかったとしても、特に問題ない。(何とかすればいいだけだしな)」
兄はフッと笑うと、
「読んだとしても問題ない。……だ」
と、を言った。
「……よくわからないのですが」
私が戸惑っていると、
「ハハハッ。……はあればあるほどに物事が有利に運ぶ」
といつもより真面目な表情で言われた。

「…………ですか?」
「(結局は、書類を読んだ方がいいって言ってるのよね?)」
ーー結局は、兄は自分のことを気遣ってくれているのがよくわかった。

「そうだ。特にだからね。セレスもおいおい覚えていくといいよ」
そう言って、また頭を撫でてくれる。
「……はい」
兄の愛情に少しだけ泣きそうになった。

ーーその後は、とりとめのない話をしながら、兄とのティータイムを楽しんだのだった。
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