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2、その世界の綻び

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ーこの小説『光の果てに』は、さっきも思い出した通り、ヒロインと男主人公が数々の試練を乗り越えて結ばれる恋愛ファンタジーものだ。 

しかも、そのというものの中には、
というのもある。 

その友人は……その友人の名前はーーーって、
何で、「セレスティーヌ·シャルレ·ダリアートン」になってるのよぉぉ~~~。 

しかも、セレスティーヌは名前がついていてもでしかない。 

思わず手でテーブルを何度も叩くような仕草で心の中で叫んでいた。 

紅茶を飲んで無理やり何とか気持ちを落ち着かせると、 

「そう、セレスティーヌはモブなんだ」 

と、改めて自分の置かれている立場を口にした。 

ヒロインであるミシェル・ナヴァール男爵令嬢 

ピンクの長い髪に緑の目をした愛らしい見た目。 

優しくて良い子だけど、ちょっと思い込みの激しいところあって、、、そうだ。 

ミシェルは優しくて良い子だけど、ちょっと思い込みが激しいところがあって、友人であるセレスはよく巻き込まれていたっけ? 

幼なじみでもあったから、子供の頃から知っていた。 

ミシェルは時々、、いや、よく暴走しては、セレスをはじめ、周りの人間を巻き込んでいた事を。 

大抵は些細なことだったけど、時々やらかしていた。 

幼なじみで友達でもあるセレスは、一番近くにいたせいで、他の人よりも大変な目に。 

目をきゅっと閉じると、子供の頃にミシェルに連れられて行った先で派手に転んだり、
落ちてきた虫を一人であびてしまったり、
夜森の中で一人取り残された事もあったと、
これまでミシェルのせいでひどい目に遭った事が甦ってくる。 

当のミシェルはというと、悪気なく可愛く笑って謝ってきたり、素直に泣いて何度も謝るものだから、被害者よりも周りの大人に慰められていた。 

ーーハッ。 

「ホント、悪意がない分、余計にたちが悪いわね」 

痛むこめかみを押さえながら、嫌な記憶の数々に気が重くなってしまった。 

「まったくセレスはなんでこんなトラブルメイカーといつまでも友達でいたのかしら?」 

正直、セレスがどんなに酷いことに巻き込まれ続けてもミシェルと友達で居続けた事が理解できなかった。 

「友達なら他にもいたのに……」 

私は腕を組ながらセレスの思いを考えてみた。 

ーーただ好きだったから?
そんな風に思っても理解できなかった私は、のことを思い出してみた。


小説で起きた大きな事件。 

『王太子婚約者暗殺未遂事件』 

王太子 レイモンド·ヒュー·アイルフェルリア
の婚約者であるアイリーン・リリー・ハーティア公爵令嬢は、王室主催のパーティーで暗殺されそうになる。 

彼女の控え室に仕掛けられた爆弾。 

偶然、それを暗殺犯が仕掛けている所を発見する事になったセレスとミシェル。 

正義感が発動したミシェルは、セレスにその場に残って見張るように告げて人を呼びに行く。 

セレスが戸惑っていると、暗殺犯に気付かれて、慌ててミシェルを見つめると、明らかに事を見てるのにセレスに言って人を呼びに行ったミシェル。 

二人に気付いた暗殺犯。 

攻撃魔法を使おうと構えたところにたまたま異変に気付いて駆けつけてきたアルフレッド。 

暗殺犯の攻撃魔法を防ごうと構えたその腕に抱きついたミシェル。 

もたついている間にセレスは暗殺犯の攻撃魔法で命を落としたのだった。 

結局、アルフレッドはセレスが殺されてから、暗殺犯を魔法で攻撃。 

命を落としたセレスの亡骸を見て苦痛の表情を浮かべるのでした。


ーーここまでがセレスが死ぬまでの流れ。 

深く息を吐いて、嫌な思いを飲み込むように紅茶を一口。 

「ーーまったく二人で助けを呼びに行けばいいものをーー」 

そう呟いた瞬間、私はあることに気付いてしまう。 

ーー特に光と防御魔法が得意なミシェル・ナヴァールーー 

ーそうよ。 

、あの時、光魔法で暗殺犯の目を目眩まして助けを呼びに行ったり、防御魔法で足止めしたり、防御魔法使って二人で一緒に逃げたり、 

そう、ならば何でもできたはずなんだ。 

それなのにセレスに見張りを頼んだりして、
「そこに………はず」
そう呟くと、ふとよぎったに額からこめかみに汗が一筋たらりと流れる。 

「いやいや、まさか」
と首を振って慌てて否定すると、紅茶を一口。 

カップを見つめながら、 

ーー二人は仲が良かった幼なじみで友達ーー 

そう考えつつ、これまで子供の頃からを思い浮かべる。 

悪意がないからと言って、嫉妬とかという感情が持っていないという事には、ならない。 

紅茶が冷たくなってしまう程にテーブルの上でカップを両手で包んだまま、考え込んでしまうのでした。
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