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王弟殿下と公爵令嬢
サプライズ
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エラディオとナディアは予定通り、ドルフィーニを出発して二週間でザクセンに到着した。
荷物やらなにやらはそのままエラディオの邸宅へと運ばせ、二人は先に国王であるエーベルハルトの元へ向かった。
「ただいま戻りました、国王陛下」
「やっと戻ったか!ナディア嬢も長旅ご苦労だったな!」
「はい、ありがとうございます」
お辞儀をしようとするナディアをエーベルハルトが手で制止する。
「いい、ここはプライベートな場所だ。畏まるな」
「ですが陛下…」
「弟の嫁になるんだろ?なら俺達は家族だ。だよな、エラディオ?」
「まあそうだが…」
エラディオが少し複雑そうな顔をしていたが、今いる場所はエーベルハルトの執務室だ。
謁見室での公式な面談でもないので、確かに問題はないが。
「それよりも義姉上殿は?」
エラディオがエーベルハルトに問うと、エーベルハルトは苦笑しながらもそれに答えた。
「アステリアなら今令嬢達と茶会中だ」
「なるほど。じゃあ義姉上殿には後日紹介するか」
「悪いな。リアも早く会いたいと言ってたんだが」
「茶会じゃ仕方ない。じゃあ俺達はいったん家に帰る」
「晩餐を一緒にしないのか?」
「疲れてんだよ。晩餐なら明日にしてくれ」
「分かった、なら明日の晩餐を楽しみにしておこう」
そう言うとエーベルハルトはそれ以上食い下がる事もなく、あっさりと見送る。
その様子を訝し気に見たエラディオだったが、とにかく疲れているのは確かなのだ。
いや、自分ではなく、ナディアを早く休ませたい。
「では兄上、また明日な」
「ああ。ナディア嬢も今日はゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします」
立ち去る二人にエーベルハルトはヒラヒラと手を振る。
気さくな感じがエラディオによく似ていると感じるが、それでも一国の王だ。
ナディアは丁寧にお辞儀をし、エラディオと共に退室した。
そして、久しぶりのエラディオの屋敷に到着すると、家令が慌てて駆け寄ってきた。
「お、お帰りなさいませ!」
「セルゲイはどうした?」
「そ、それが…」
「?」
いつもなら馬車の音で必ず出迎えるはずのセルゲイの姿が見えない。
不思議に思ったエラディオは、目の前の若い家令にじっと視線を向ける。
「何だ、何かあったのか?」
「い、いえ!その、お疲れだと思いますのですぐにご案内いたしますっ!」
「…わかった。ナディ、手を」
スッと手を差し出され、ナディアがおずおずとその手に自分の手を乗せる。
少し恥ずかしそうにしている姿を見てエラディオの気分が上がるが、その様子をチラリと見ていた家令はホッと胸をなでおろしている。
(何か企んでんのか…しかし顔に出すぎだな)
まだまだ教育が必要だなとエラディオが考えているのも知らず、家令は安心したように二人を案内する。
屋敷の中に入ると、予想以上に静かな様子にエラディオとナディアは顔を見合わせた。
「とても静かですね」
「そうだな。妙だ」
「あ、あの、セルゲイ様からお庭にご案内するよう仰せつかっておりますが…」
「庭?」
「はい」
エントランスで家令に告げられ、エラディオが片眉を上げる。
そして少し考えるそぶりを見せたが、ナディアに視線を向けた。
「ナディ、どうする?」
「えっ?」
「一旦部屋に戻ってから庭に出てもいいが、どうやら今来て欲しいようだぜ」
「そうなんですか?」
ナディアがコテンと首を傾げると、エラディオがフッと笑みを浮かべた。
「疲れてなければ付き合ってやろうぜ」
「はい、わかりました」
「て事だ。案内しろよ」
「は、はいっ」
ホッとしたように家令が頭を下げ、二人を庭園へと案内する。
そしてなぜか温室の方へと案内されたかと思うと、突然開けた場所でワッと声援が上がった。
「「「「「「お帰りなさいませ!!」」」」」」
「えっ?」
「は?」
案内された場所に着くと、そこには邸の使用人達が全員そろっていて、皆で二人を見て拍手をしていた。
「こりゃあ一体…」
エラディオが呆気に取られていると、セルゲイが恭しく近付きお辞儀をする。
「お帰りなさいませ、エラディオ様。そして、ようこそお越しいただきました、ナディア様。我々使用人一同、ナディア様のお輿入れに心よりお祝い申し上げます」
「まあ…」
どうやらサプライズパーティ―のようだ。
庭園にはケーキやら軽食やらの用意がしてある。
そして、ナディアが目を白黒させていると、使用人達の後ろから一人の女性が現れた。
「ウフフフ、お久しぶりねエラディオ。サプライズ成功かしら」
「…は?」
「え?」
現れた女性は使用人とは違い、高貴な装いをしている。
傍らには侍女が控えていて、一目で身分の高いご令嬢だと分かったのだが。
ナディアが目を丸くしてエラディオの様子を伺うと、エラディオは呆れたようにその女性を眺めていた。
「…今日はご令嬢達と茶会じゃなかったのかよ、義姉上」
「…え!?」
義姉上とエラディオが呼んだと言う事で、ナディアも目の前の女性の正体が分かった。
つまり、エーベルハルトの妻でこの国の王妃…
「初めまして、ナディア様。わたくしエラディオの兄の妻でこの国の王妃をしております、アステリア・ファン・ザクセンですわ」
「お、王妃様…!失礼いたしました、私はドルフィーニ国のサルトレッティ家が娘、ナディアと申します」
「いいのよいいのよ、楽にしてちょうだい。何しろ今日はサプライズパーティーだから!」
「も、勿体ないお言葉、ありがとうございます…」
「おい」
ナディアが少々委縮しながらもお辞儀をするが、アステリアはヒラヒラと手を振る。
それを見ていたエラディオが不機嫌そうにアステリアに視線を向けた。
「相変わらず悪趣味だな、義姉上。兄上は知ってんのかよ」
「やだ、勿論知ってるわよ。ハルト様ももうすぐ来る事になってるし」
「はあ!?一国の国王と王妃が何やってんだよ!」
「何って、可愛い義弟のお祝いじゃないの。それにしてもエラディオって女性に興味ないのかと思ってたのに、滅茶苦茶綺麗な子連れて来ちゃって…隅に置けないわね~」
「うるさい、ナディに変な事吹き込むんじゃねぇよ!」
「まあ!愛称で呼ぶなんて、エラディオが成長してるわ…!」
終始からかわれているエラディオをナディアは何とも言えない表情で眺める。
今のやりとりからしても、二人はかなり気の置けない仲のようだ。
そんな二人の様子をナディアが無言で眺めていると、いつの間にかいたのか、オルガがこそっとナディアに耳打ちした。
「王弟殿下と王妃様は、王様も交えた幼馴染らしいですよ」
「え、そうなの?」
「はい。先程セルゲイ様に教えていただきました。お嬢様より先にお邸に来ましたので、パーティーの準備もお手伝いしたのですが、王妃様が嬉しそうに率先して準備してましたよ」
「え」
まさかの王妃直々にパーティーの準備をしていたとは。
驚きのあまり目を瞠るが、ナディアと目が合ったアステリアはにっこりと微笑んだ。
「王妃様自らご用意していただけるなんて、何とお礼を申し上げたら…」
「嫌だわ、私達もうすぐ義理の姉妹になるのよ?王妃様じゃなくて、アステリアと呼んでちょうだい」
「さ、さすがにそれは…」
「うふふふ、これは王妃命令よ。わかった?ナディアちゃん?」
パチンとウインクをされ、ナディアがたじろぐ。
それを見ていたエラディオが呆れたようにアステリアを眺め、ナディアの肩をポンと叩いた。
「…諦めろ。義姉上は言い出したら聞かない。義姉上の言う通りもうすぐ家族になるんだ。名前で呼んでやれって」
「ですが…」
「私的な場だけでいいさ」
「…分かりました。ではそうさせてもらいます、アステリア様」
「呼び捨てでいいのに」
「それはご容赦ください」
「分かったわ。とりあえず今はそれでいいわ」
少々不満気だがそこは我慢してほしい。
何しろ何度も言うが一国の王妃なのだから、そうやすやすと呼び捨てで名を呼ぶなんて事はできるはずがない。
それにナディアとアステリアは初対面なのだ。ここはナディアの言い分の方が正しいだろう。
「おっ、まだ始まってないのか?」
「ハルト様!」
建物の方から声がしたと思ったら、アステリアが嬉しそうに振り返り、声の主の方へ駆け寄る。
ナディアが視線を向けると、さっき謁見したばかりのエーベルハルトが軽装で現れた。
「兄上…何やってんだよ」
「どうだ、驚いたか?リアの考えたサプライズハーティーは」
「驚かない方がおかしいだろ」
「ふっふっふっ、サプライズ成功だな」
何故か勝ち誇った顔をするエーベルハルトを見て、ナディアがチラリとエラディオの様子を伺う。
その視線に気付いたエラディオは、困ったような顔をしながらも、ナディアに向かって微笑んだ。
「悪いな、ナディ。兄上も義姉上も昔から悪戯好きなんだよ。今は立場上、悪戯できんのは俺相手くらいだろ?」
「まあ…」
「ま、悪い事はしねぇし、許してやってくれ」
「許すだなんて」
そもそもナディアが非難する訳もない。
そしてそう言っているエラディオも、どこか嬉しそうな顔をしていて。
「…愛されてるわね、エディ」
「…!い、今…!」
「さあ、せっかく用意してくださったんですから、早くみんなでパーティーをはじめましょう」
「そうね、ナディアちゃん。ハルト様もお席に座ってくださいな」
「そうだな。ん?何だエラディオ、ぼーっと突っ立って。さっさと座れよ」
二人に言われてエラディオがハッとする。
そしてクスクスと笑うナディアをジトっと見つめ、すぐに不敵な笑みを浮かべてナディアの隣に座った。
「後で覚えとけよ、ナディ」
「まあ、何の事かしら」
そう言って楽しそうに微笑むナディアを愛おしそうに眺めるエラディオを、エーベルハルトとアステリアは微笑ましそうに眺めていたのだった。
荷物やらなにやらはそのままエラディオの邸宅へと運ばせ、二人は先に国王であるエーベルハルトの元へ向かった。
「ただいま戻りました、国王陛下」
「やっと戻ったか!ナディア嬢も長旅ご苦労だったな!」
「はい、ありがとうございます」
お辞儀をしようとするナディアをエーベルハルトが手で制止する。
「いい、ここはプライベートな場所だ。畏まるな」
「ですが陛下…」
「弟の嫁になるんだろ?なら俺達は家族だ。だよな、エラディオ?」
「まあそうだが…」
エラディオが少し複雑そうな顔をしていたが、今いる場所はエーベルハルトの執務室だ。
謁見室での公式な面談でもないので、確かに問題はないが。
「それよりも義姉上殿は?」
エラディオがエーベルハルトに問うと、エーベルハルトは苦笑しながらもそれに答えた。
「アステリアなら今令嬢達と茶会中だ」
「なるほど。じゃあ義姉上殿には後日紹介するか」
「悪いな。リアも早く会いたいと言ってたんだが」
「茶会じゃ仕方ない。じゃあ俺達はいったん家に帰る」
「晩餐を一緒にしないのか?」
「疲れてんだよ。晩餐なら明日にしてくれ」
「分かった、なら明日の晩餐を楽しみにしておこう」
そう言うとエーベルハルトはそれ以上食い下がる事もなく、あっさりと見送る。
その様子を訝し気に見たエラディオだったが、とにかく疲れているのは確かなのだ。
いや、自分ではなく、ナディアを早く休ませたい。
「では兄上、また明日な」
「ああ。ナディア嬢も今日はゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします」
立ち去る二人にエーベルハルトはヒラヒラと手を振る。
気さくな感じがエラディオによく似ていると感じるが、それでも一国の王だ。
ナディアは丁寧にお辞儀をし、エラディオと共に退室した。
そして、久しぶりのエラディオの屋敷に到着すると、家令が慌てて駆け寄ってきた。
「お、お帰りなさいませ!」
「セルゲイはどうした?」
「そ、それが…」
「?」
いつもなら馬車の音で必ず出迎えるはずのセルゲイの姿が見えない。
不思議に思ったエラディオは、目の前の若い家令にじっと視線を向ける。
「何だ、何かあったのか?」
「い、いえ!その、お疲れだと思いますのですぐにご案内いたしますっ!」
「…わかった。ナディ、手を」
スッと手を差し出され、ナディアがおずおずとその手に自分の手を乗せる。
少し恥ずかしそうにしている姿を見てエラディオの気分が上がるが、その様子をチラリと見ていた家令はホッと胸をなでおろしている。
(何か企んでんのか…しかし顔に出すぎだな)
まだまだ教育が必要だなとエラディオが考えているのも知らず、家令は安心したように二人を案内する。
屋敷の中に入ると、予想以上に静かな様子にエラディオとナディアは顔を見合わせた。
「とても静かですね」
「そうだな。妙だ」
「あ、あの、セルゲイ様からお庭にご案内するよう仰せつかっておりますが…」
「庭?」
「はい」
エントランスで家令に告げられ、エラディオが片眉を上げる。
そして少し考えるそぶりを見せたが、ナディアに視線を向けた。
「ナディ、どうする?」
「えっ?」
「一旦部屋に戻ってから庭に出てもいいが、どうやら今来て欲しいようだぜ」
「そうなんですか?」
ナディアがコテンと首を傾げると、エラディオがフッと笑みを浮かべた。
「疲れてなければ付き合ってやろうぜ」
「はい、わかりました」
「て事だ。案内しろよ」
「は、はいっ」
ホッとしたように家令が頭を下げ、二人を庭園へと案内する。
そしてなぜか温室の方へと案内されたかと思うと、突然開けた場所でワッと声援が上がった。
「「「「「「お帰りなさいませ!!」」」」」」
「えっ?」
「は?」
案内された場所に着くと、そこには邸の使用人達が全員そろっていて、皆で二人を見て拍手をしていた。
「こりゃあ一体…」
エラディオが呆気に取られていると、セルゲイが恭しく近付きお辞儀をする。
「お帰りなさいませ、エラディオ様。そして、ようこそお越しいただきました、ナディア様。我々使用人一同、ナディア様のお輿入れに心よりお祝い申し上げます」
「まあ…」
どうやらサプライズパーティ―のようだ。
庭園にはケーキやら軽食やらの用意がしてある。
そして、ナディアが目を白黒させていると、使用人達の後ろから一人の女性が現れた。
「ウフフフ、お久しぶりねエラディオ。サプライズ成功かしら」
「…は?」
「え?」
現れた女性は使用人とは違い、高貴な装いをしている。
傍らには侍女が控えていて、一目で身分の高いご令嬢だと分かったのだが。
ナディアが目を丸くしてエラディオの様子を伺うと、エラディオは呆れたようにその女性を眺めていた。
「…今日はご令嬢達と茶会じゃなかったのかよ、義姉上」
「…え!?」
義姉上とエラディオが呼んだと言う事で、ナディアも目の前の女性の正体が分かった。
つまり、エーベルハルトの妻でこの国の王妃…
「初めまして、ナディア様。わたくしエラディオの兄の妻でこの国の王妃をしております、アステリア・ファン・ザクセンですわ」
「お、王妃様…!失礼いたしました、私はドルフィーニ国のサルトレッティ家が娘、ナディアと申します」
「いいのよいいのよ、楽にしてちょうだい。何しろ今日はサプライズパーティーだから!」
「も、勿体ないお言葉、ありがとうございます…」
「おい」
ナディアが少々委縮しながらもお辞儀をするが、アステリアはヒラヒラと手を振る。
それを見ていたエラディオが不機嫌そうにアステリアに視線を向けた。
「相変わらず悪趣味だな、義姉上。兄上は知ってんのかよ」
「やだ、勿論知ってるわよ。ハルト様ももうすぐ来る事になってるし」
「はあ!?一国の国王と王妃が何やってんだよ!」
「何って、可愛い義弟のお祝いじゃないの。それにしてもエラディオって女性に興味ないのかと思ってたのに、滅茶苦茶綺麗な子連れて来ちゃって…隅に置けないわね~」
「うるさい、ナディに変な事吹き込むんじゃねぇよ!」
「まあ!愛称で呼ぶなんて、エラディオが成長してるわ…!」
終始からかわれているエラディオをナディアは何とも言えない表情で眺める。
今のやりとりからしても、二人はかなり気の置けない仲のようだ。
そんな二人の様子をナディアが無言で眺めていると、いつの間にかいたのか、オルガがこそっとナディアに耳打ちした。
「王弟殿下と王妃様は、王様も交えた幼馴染らしいですよ」
「え、そうなの?」
「はい。先程セルゲイ様に教えていただきました。お嬢様より先にお邸に来ましたので、パーティーの準備もお手伝いしたのですが、王妃様が嬉しそうに率先して準備してましたよ」
「え」
まさかの王妃直々にパーティーの準備をしていたとは。
驚きのあまり目を瞠るが、ナディアと目が合ったアステリアはにっこりと微笑んだ。
「王妃様自らご用意していただけるなんて、何とお礼を申し上げたら…」
「嫌だわ、私達もうすぐ義理の姉妹になるのよ?王妃様じゃなくて、アステリアと呼んでちょうだい」
「さ、さすがにそれは…」
「うふふふ、これは王妃命令よ。わかった?ナディアちゃん?」
パチンとウインクをされ、ナディアがたじろぐ。
それを見ていたエラディオが呆れたようにアステリアを眺め、ナディアの肩をポンと叩いた。
「…諦めろ。義姉上は言い出したら聞かない。義姉上の言う通りもうすぐ家族になるんだ。名前で呼んでやれって」
「ですが…」
「私的な場だけでいいさ」
「…分かりました。ではそうさせてもらいます、アステリア様」
「呼び捨てでいいのに」
「それはご容赦ください」
「分かったわ。とりあえず今はそれでいいわ」
少々不満気だがそこは我慢してほしい。
何しろ何度も言うが一国の王妃なのだから、そうやすやすと呼び捨てで名を呼ぶなんて事はできるはずがない。
それにナディアとアステリアは初対面なのだ。ここはナディアの言い分の方が正しいだろう。
「おっ、まだ始まってないのか?」
「ハルト様!」
建物の方から声がしたと思ったら、アステリアが嬉しそうに振り返り、声の主の方へ駆け寄る。
ナディアが視線を向けると、さっき謁見したばかりのエーベルハルトが軽装で現れた。
「兄上…何やってんだよ」
「どうだ、驚いたか?リアの考えたサプライズハーティーは」
「驚かない方がおかしいだろ」
「ふっふっふっ、サプライズ成功だな」
何故か勝ち誇った顔をするエーベルハルトを見て、ナディアがチラリとエラディオの様子を伺う。
その視線に気付いたエラディオは、困ったような顔をしながらも、ナディアに向かって微笑んだ。
「悪いな、ナディ。兄上も義姉上も昔から悪戯好きなんだよ。今は立場上、悪戯できんのは俺相手くらいだろ?」
「まあ…」
「ま、悪い事はしねぇし、許してやってくれ」
「許すだなんて」
そもそもナディアが非難する訳もない。
そしてそう言っているエラディオも、どこか嬉しそうな顔をしていて。
「…愛されてるわね、エディ」
「…!い、今…!」
「さあ、せっかく用意してくださったんですから、早くみんなでパーティーをはじめましょう」
「そうね、ナディアちゃん。ハルト様もお席に座ってくださいな」
「そうだな。ん?何だエラディオ、ぼーっと突っ立って。さっさと座れよ」
二人に言われてエラディオがハッとする。
そしてクスクスと笑うナディアをジトっと見つめ、すぐに不敵な笑みを浮かべてナディアの隣に座った。
「後で覚えとけよ、ナディ」
「まあ、何の事かしら」
そう言って楽しそうに微笑むナディアを愛おしそうに眺めるエラディオを、エーベルハルトとアステリアは微笑ましそうに眺めていたのだった。
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