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公爵令嬢の婚約事情
勝負の行方2
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勝負は五分五分と言った所だった。
何故かと言えば二人共ほとんど的の中心を射抜いていたからだ。
「すげぇ…、サーシス第一王子殿下は分かるが、サルトレッティ公爵令嬢の腕前が半端ねぇな…」
「ああ、あんな才能あったなんて痺れるぜ…」
見物に来ていた王宮騎士団の団員達が二人の対決を見てポツリと呟く。
そんな風に外野がザワザワと騒いでいたが、ナディアもローデウェイクも集中しているらしく、まったく耳に入って来ないようだ。
― ズバン!! ―
また中央に刺さる。
「こりゃあ勝負は分からねぇな」
「そのようですね」
エラディオとマティアスが呟く。
そうして、ようやく全ての矢を射つくした後、審判が的へ確認に向かった。
理由は二人が殆ど中央に当てていたので、より中心に近い場所を射た方を勝ちとする為だ。
「…勝者、サーシス第一王子殿下!!」
どうやらこの勝負はローデウェイクが勝ったようだった。
審判の声にローデウェイクがホッとする。正直負けるつもりはなかったが、ナディアの腕前が想像以上だったので焦っていたのだ。
さすがにストレート負けはありえない。
そして、次は乗馬での勝負だ。
「いい勝負でしたわ、ローデウェイク殿下」
「ナディア嬢も素晴らしい腕前だった」
お互いに握手をし、健闘を称える。
そこへエラディオ達が駆け寄り、ナディアとローデウェイクに声をかけた。
「二人共いい勝負だったな」
「ナディア嬢の弓の腕がここまでだとは思いませんでした」
何だかんだ言ってもこれで一勝一敗なのだから、ローデウェイクは内心ホッとしていた。
投擲武器ではないが、飛び道具には違いない。ナディアは何故かこういった武器の扱いに長けていた。
「負けてしまって残念ですわ。石を投げて的に当てるのであれば勝てたかもしれませんが」
「石を?さすがに女性の腕力であんな遠い場所にある的に当てるのは無理だろう」
「あら、ローデウェイク殿下。あの程度の距離ならば当てられますわよ」
「まさか」
いくら何でも弓の的に石を当てるのは無理があるだろう。男性が投げたとしても、よほど肩に自信がないと難しい。届きはしても当てるのは至難の業ではないのか。
そう思って的を眺めていたら、ナディアがクスリと笑みをこぼす。
「では、勝負とは関係ありませんがお見せしますわ」
そう言ってナディアはシュルリと髪につけていたリボンを解いた。
シルバーブロンドの髪が、リボンが解けたと同時にフワリと風になびくように肩へと落ちる。
思わず見惚れていると、ナディアは徐にリボンの片方の端をを右の手首に巻き付けた。
「ナディ、何してんだ?」
「うふふ、まあ見ていてください」
エラディオが訪ねると、ナディアは悪戯っぽく微笑んで見せる。そして結んでいない方の端を同じ右手で握り、リボンの中央の部分に手ごろな大きさの石を包むように置き、ブンブンと頭上で振り回しだした。
「な、何を…」
マティアスが驚いて声をかけようとするが、ナディアは真剣な目で的を見据えている。
石を包んだリボンの回転が速くなり、勢い付いた所でナディアがタイミングを見計らって右手を投げるように放した。
「はっ!!」
「「「!!!!?」」」
勢い付いた石は矢よりも早いスピードで飛んでいく。
そして、バコン!と音を立てて的にぶち当たり、そのまま地面にポトリと落下した。
「やった!見ました!?結構いい位置に当たりましたわよ!」
嬉しそうに振り返って笑顔を向けるナディアだったが、周囲の人達の驚きの表情を見てピタリと動きを止める。
そして恐る恐るエラディオに視線を向け、コテンと首を傾げた。
「…あの、皆様の様子がおかしいのですが」
「あー…ナディは何も悪くねぇよ。ただ、そうだな。まさかあんな手法で石を投げると思わなかったが」
「ああ、そうですわね!今回は手持ちの道具がなかったのでリボンで代用しましたけど、本来は両サイドに紐が付いている布に石を包んで、それを標的に向けて回す力を利用して飛ばすんです。そうすると普通に投げるよりも速く強力に的に向かって行きますし、何なら弓矢よりも遠くへ飛ばす事もできますのよ」
「…なるほど」
ナディアが嬉しそうに説明していると、的を確認しに行った審判が青ざめた顔で戻って来る。
それを見たローデウェイクは審判に声をかけた。
「どうかしたのか?」
「そ、それが…的にヒビが入ってしまっていまして…と言いますか壊れてます…」
「はあ!?」
どうやら衝撃で壊れてしまっているらしい。
それを聞いてナディアがバツの悪そうな顔を審判に向ける。
「も、申し訳ありません。きちんと弁償いたします…」
「め、滅相もありません!」
「ですが王宮の大切な訓練所の備品を壊すなんて、何とお詫びをすれば…」
「いえ、的も消耗品ですので代わりはまだあります。それよりもサルトレッティ公爵令嬢の投擲技術に恐れ入りました。女性の腕でここまでの破壊力、是非騎士達にも試させてみたいです」
「まあ」
意外な言葉にナディアが目を丸くし、そしてフワリと微笑む。
「お遊びの延長のようなものですので、休憩の時間にでも是非試してみてください。リボンが無ければスカーフやタオルなんかで代用してもいいですよ。ただし少し投げにくいですが」
「なるほど、わかりました。ありがとうございます」
真面目にお礼を言う審判役の騎士にナディアは苦笑を漏らす。
こんな、遊びの延長のような事を真剣に訓練に取り入れるつもりなのかは分からないが、特に断る理由もない。
けれどこれを見ていたエラディオがポツリと呟いた。
「…なるほど、戦場で武器が底をついても、石ならそこら辺にゴロゴロしてる。適当な布を使って投げれば木の的を壊す程の破壊力があるくらいだし、結構有用かもしれねぇな」
「え」
「そうですね。少々原始的ではありますが、スリングショットと似たようなものでしょう」
オブライエンもエラディオの意見に同意し、二人は何やらああでもないこうでもないと論議をしだす。
それにはさすがに呆れて溜息を零すが、ローデウェイクに声をかけられナディアも顔を上げた。
「ナディア嬢。次は乗馬の試合だ」
「あ、はい。このまま移動しますか?」
「疲れていないのか?」
「あれしきで疲れたりしませんわよ。それよりも殿下の滞在期間もそれ程ありませんし、時間がおありでしたら次の勝負に移りましょう」
「わかった。では確認だが、勝負に勝てば願いを一つ聞いてくれるんだよな?」
「常識の範囲内ですわよ。無理な事は聞きません」
ニッコリと微笑んで告げると、ローデウェイクは少し考えるような素振りをする。
が、すぐにこちらも笑顔を見せ、二人はそのまま厩舎に向かった。
王宮の侍従の一人がナディア達を案内し、そして厩舎で馬と対面する。
公平性を考えて、この場で自分が気に入った馬を見繕い、その馬で対決するというルールだ。
これはローデウェイクが自分の馬をドルフィーニ国に連れて来ていないので、ナディアがサルトレッティ家の馬を使えば不公平ではないかと思った故、どちらも初めて乗る馬で勝負する事にしたのだ。
「素敵な馬達ですわね」
「さすがは王家所有の名馬達だな」
ナディアとローデウェイクは厩舎の馬達を見て感嘆の声を上げる。
見事な毛並みに逞しい躰の馬は、どれを選んでも立派に駆けてくれるだろう。
「では、私はこの子を」
「なら俺はこの馬を」
二人が選んだ馬は。
「…普通そこで真っ黒な馬を選ぶか」
「あら、素敵じゃないですか。それに真っ黒じゃありませんわよ?この子は白いブーツを履いていますもの」
「ブーツって、足の毛が白いだけだろ」
「そこが魅力的でしょう?ローデウェイク殿下こそ白馬を選ぶなんて、意外に乙女チックなのですね」
「なっ、誰が!」
指摘されて恥ずかしかったのか、ローデウェイクが慌てたように否定している。
けれど見るからに顔を赤くしているので、一応自覚はあったのだろう。
「では白馬の王子様。勝負と行きましょう」
「うっ…、いいだろう。必ず勝って願いを聞いてもらうからな!」
「そういうセリフは勝ってから仰ってくださいな」
ツンと顎を上げて生意気な顔でローデウェイクを煽る。
けれどそんな表情も可愛く見えてしまうのは惚れた弱みだろう。
他の令嬢がそんな態度をすれば、ローデウェイクは必ず不快な気持ちになっているのに、目の前の愛しい女性にされると不快さは全くわいて来ない。
「さあ、勝負だ」
次も負けない。
ローデウェイクはそう決意し、手綱をぎゅっと握りしめたのだった。
何故かと言えば二人共ほとんど的の中心を射抜いていたからだ。
「すげぇ…、サーシス第一王子殿下は分かるが、サルトレッティ公爵令嬢の腕前が半端ねぇな…」
「ああ、あんな才能あったなんて痺れるぜ…」
見物に来ていた王宮騎士団の団員達が二人の対決を見てポツリと呟く。
そんな風に外野がザワザワと騒いでいたが、ナディアもローデウェイクも集中しているらしく、まったく耳に入って来ないようだ。
― ズバン!! ―
また中央に刺さる。
「こりゃあ勝負は分からねぇな」
「そのようですね」
エラディオとマティアスが呟く。
そうして、ようやく全ての矢を射つくした後、審判が的へ確認に向かった。
理由は二人が殆ど中央に当てていたので、より中心に近い場所を射た方を勝ちとする為だ。
「…勝者、サーシス第一王子殿下!!」
どうやらこの勝負はローデウェイクが勝ったようだった。
審判の声にローデウェイクがホッとする。正直負けるつもりはなかったが、ナディアの腕前が想像以上だったので焦っていたのだ。
さすがにストレート負けはありえない。
そして、次は乗馬での勝負だ。
「いい勝負でしたわ、ローデウェイク殿下」
「ナディア嬢も素晴らしい腕前だった」
お互いに握手をし、健闘を称える。
そこへエラディオ達が駆け寄り、ナディアとローデウェイクに声をかけた。
「二人共いい勝負だったな」
「ナディア嬢の弓の腕がここまでだとは思いませんでした」
何だかんだ言ってもこれで一勝一敗なのだから、ローデウェイクは内心ホッとしていた。
投擲武器ではないが、飛び道具には違いない。ナディアは何故かこういった武器の扱いに長けていた。
「負けてしまって残念ですわ。石を投げて的に当てるのであれば勝てたかもしれませんが」
「石を?さすがに女性の腕力であんな遠い場所にある的に当てるのは無理だろう」
「あら、ローデウェイク殿下。あの程度の距離ならば当てられますわよ」
「まさか」
いくら何でも弓の的に石を当てるのは無理があるだろう。男性が投げたとしても、よほど肩に自信がないと難しい。届きはしても当てるのは至難の業ではないのか。
そう思って的を眺めていたら、ナディアがクスリと笑みをこぼす。
「では、勝負とは関係ありませんがお見せしますわ」
そう言ってナディアはシュルリと髪につけていたリボンを解いた。
シルバーブロンドの髪が、リボンが解けたと同時にフワリと風になびくように肩へと落ちる。
思わず見惚れていると、ナディアは徐にリボンの片方の端をを右の手首に巻き付けた。
「ナディ、何してんだ?」
「うふふ、まあ見ていてください」
エラディオが訪ねると、ナディアは悪戯っぽく微笑んで見せる。そして結んでいない方の端を同じ右手で握り、リボンの中央の部分に手ごろな大きさの石を包むように置き、ブンブンと頭上で振り回しだした。
「な、何を…」
マティアスが驚いて声をかけようとするが、ナディアは真剣な目で的を見据えている。
石を包んだリボンの回転が速くなり、勢い付いた所でナディアがタイミングを見計らって右手を投げるように放した。
「はっ!!」
「「「!!!!?」」」
勢い付いた石は矢よりも早いスピードで飛んでいく。
そして、バコン!と音を立てて的にぶち当たり、そのまま地面にポトリと落下した。
「やった!見ました!?結構いい位置に当たりましたわよ!」
嬉しそうに振り返って笑顔を向けるナディアだったが、周囲の人達の驚きの表情を見てピタリと動きを止める。
そして恐る恐るエラディオに視線を向け、コテンと首を傾げた。
「…あの、皆様の様子がおかしいのですが」
「あー…ナディは何も悪くねぇよ。ただ、そうだな。まさかあんな手法で石を投げると思わなかったが」
「ああ、そうですわね!今回は手持ちの道具がなかったのでリボンで代用しましたけど、本来は両サイドに紐が付いている布に石を包んで、それを標的に向けて回す力を利用して飛ばすんです。そうすると普通に投げるよりも速く強力に的に向かって行きますし、何なら弓矢よりも遠くへ飛ばす事もできますのよ」
「…なるほど」
ナディアが嬉しそうに説明していると、的を確認しに行った審判が青ざめた顔で戻って来る。
それを見たローデウェイクは審判に声をかけた。
「どうかしたのか?」
「そ、それが…的にヒビが入ってしまっていまして…と言いますか壊れてます…」
「はあ!?」
どうやら衝撃で壊れてしまっているらしい。
それを聞いてナディアがバツの悪そうな顔を審判に向ける。
「も、申し訳ありません。きちんと弁償いたします…」
「め、滅相もありません!」
「ですが王宮の大切な訓練所の備品を壊すなんて、何とお詫びをすれば…」
「いえ、的も消耗品ですので代わりはまだあります。それよりもサルトレッティ公爵令嬢の投擲技術に恐れ入りました。女性の腕でここまでの破壊力、是非騎士達にも試させてみたいです」
「まあ」
意外な言葉にナディアが目を丸くし、そしてフワリと微笑む。
「お遊びの延長のようなものですので、休憩の時間にでも是非試してみてください。リボンが無ければスカーフやタオルなんかで代用してもいいですよ。ただし少し投げにくいですが」
「なるほど、わかりました。ありがとうございます」
真面目にお礼を言う審判役の騎士にナディアは苦笑を漏らす。
こんな、遊びの延長のような事を真剣に訓練に取り入れるつもりなのかは分からないが、特に断る理由もない。
けれどこれを見ていたエラディオがポツリと呟いた。
「…なるほど、戦場で武器が底をついても、石ならそこら辺にゴロゴロしてる。適当な布を使って投げれば木の的を壊す程の破壊力があるくらいだし、結構有用かもしれねぇな」
「え」
「そうですね。少々原始的ではありますが、スリングショットと似たようなものでしょう」
オブライエンもエラディオの意見に同意し、二人は何やらああでもないこうでもないと論議をしだす。
それにはさすがに呆れて溜息を零すが、ローデウェイクに声をかけられナディアも顔を上げた。
「ナディア嬢。次は乗馬の試合だ」
「あ、はい。このまま移動しますか?」
「疲れていないのか?」
「あれしきで疲れたりしませんわよ。それよりも殿下の滞在期間もそれ程ありませんし、時間がおありでしたら次の勝負に移りましょう」
「わかった。では確認だが、勝負に勝てば願いを一つ聞いてくれるんだよな?」
「常識の範囲内ですわよ。無理な事は聞きません」
ニッコリと微笑んで告げると、ローデウェイクは少し考えるような素振りをする。
が、すぐにこちらも笑顔を見せ、二人はそのまま厩舎に向かった。
王宮の侍従の一人がナディア達を案内し、そして厩舎で馬と対面する。
公平性を考えて、この場で自分が気に入った馬を見繕い、その馬で対決するというルールだ。
これはローデウェイクが自分の馬をドルフィーニ国に連れて来ていないので、ナディアがサルトレッティ家の馬を使えば不公平ではないかと思った故、どちらも初めて乗る馬で勝負する事にしたのだ。
「素敵な馬達ですわね」
「さすがは王家所有の名馬達だな」
ナディアとローデウェイクは厩舎の馬達を見て感嘆の声を上げる。
見事な毛並みに逞しい躰の馬は、どれを選んでも立派に駆けてくれるだろう。
「では、私はこの子を」
「なら俺はこの馬を」
二人が選んだ馬は。
「…普通そこで真っ黒な馬を選ぶか」
「あら、素敵じゃないですか。それに真っ黒じゃありませんわよ?この子は白いブーツを履いていますもの」
「ブーツって、足の毛が白いだけだろ」
「そこが魅力的でしょう?ローデウェイク殿下こそ白馬を選ぶなんて、意外に乙女チックなのですね」
「なっ、誰が!」
指摘されて恥ずかしかったのか、ローデウェイクが慌てたように否定している。
けれど見るからに顔を赤くしているので、一応自覚はあったのだろう。
「では白馬の王子様。勝負と行きましょう」
「うっ…、いいだろう。必ず勝って願いを聞いてもらうからな!」
「そういうセリフは勝ってから仰ってくださいな」
ツンと顎を上げて生意気な顔でローデウェイクを煽る。
けれどそんな表情も可愛く見えてしまうのは惚れた弱みだろう。
他の令嬢がそんな態度をすれば、ローデウェイクは必ず不快な気持ちになっているのに、目の前の愛しい女性にされると不快さは全くわいて来ない。
「さあ、勝負だ」
次も負けない。
ローデウェイクはそう決意し、手綱をぎゅっと握りしめたのだった。
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