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ザクセン国の王弟殿下
努力するエラディオ
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「カーリン辺境伯からの軍事強化の為の武器の支援申請はどうする?」
「んなもん却下だ。戦争が起こる訳でもねぇし、どうせくだらねぇ事考えてんだろ」
「あの人前科があるもんなぁ」
カーリン辺境伯領は凄腕の騎士達がいる国の重要拠点だ。勿論他国からの侵入や魔物の討伐等、役割としては多岐にわたるが。
「武器を壊しすぎだ。実際軍事拠点として武器が大量に必要なのは分かるが、これだと武器の横流しを疑うぜ」
「そうだねぇ。実際そう言って糾弾しようとしている貴族もいるし」
「国境付近の魔物を間引くのに苦労してんのは分かるが、それを中央の奴らが認識してないのも困るがな」
「カーリン辺境伯軍の連中は荒っぽいからなぁ」
だからと言って軍の備品である武器をこうも簡単に壊されてはたまらない。
「…よし、なら反対している奴に辺境伯領へ視察に行ってもらうか」
「まさか、魔物討伐に参加させるのか?」
「それが一番早いだろ。そうすりゃ両者が納得できるぜ」
「まぁそうだけど、荒治療だなぁ」
反対しているのは主に予算関係を取り仕切っている財務官達だ。そして辺境伯を軽く見ている連中も同じくだ。
「あいつらがカーリン領へ行けば魔物の討伐がいかに大切で大変かが分かるだろう。そして武器があんなに壊れる原因も分かる。実際に自分達の目で確認して、適正な量を支援するように指示しておけ」
「わかった」
コクリと頷くと書類と一緒に指示書を作成し、バルテルが財務官行の箱に入れた。この指示書を見たら、文句を言った自分を後悔するに違いないだろう。何しろ財務官達は言わずもがな文官なのだから、戦闘には不向きの人間が要職についている。絶対に嫌がる事は間違いない。
「それと、ゴメス公爵のリシュア令嬢が、令嬢の誕生日パーティーにエラディオを招待したいと招待状が来てるぞ」
「絶対行かねぇ」
「即答だな」
リシュア・ベリカ・ゴメスはゴメス公爵家の長女だ。ゴメス公爵家には長男がいるので、彼女は後を継ぐ必要はない。
公爵家ともあれば王家とも幼少から付き合いがあり、エラディオも何度も顔を合わせている。
彼女は公爵令嬢という身分であるにも関わらず、婚約者がいない状態で来月18歳の誕生日を迎えるのだ。
「リシュア嬢の誕生パーティーなんかに出向いてみろ。勝手に婚約者に仕立て上げられるっての」
「ゴメス公爵ならやりかねないね」
「分かってんなら断りの手紙を出しとけ」
「了解」
リシュアはとても美しい令嬢だ。それこそ引く手あまただろう。公爵家と言う肩書もさることながら、見た目の美しさも貴族男性達から大層人気だと聞いている。
それと余談だがさっき目の前で転んだシルバーバーグ侯爵令嬢やミナージュ伯爵令嬢とは仲が悪い。
理由は三人ともエラディオの妻の座を狙っているからだが。
「はぁ…ナディア嬢に会いたいぜ…」
思わず呟いてしまい、そんな自分が信じられないと驚いて口元を手で覆う。バルテルも驚いたようにこちらを見ていたので非常に気まずい。
「…今のは無意識だ」
「余計にダメじゃん。エラディオ、随分と本気なんだな」
ナディアが目の前で転んだりしたら、きっと誰よりも先に手を貸すだろう。曲がり角でぶつかりでもしたら、どさくさに紛れて抱きしめてしまうかもしれない。
「ああ、ザクセンはつまんねぇな」
「何てこと言うんだよ、全く。本当に、ドルフィーニ国のサルトレッティ公爵令嬢は罪な方だよ」
「ああそうだな。彼女の魅力は罪以外の何物でもねぇよ」
「…嫌味が通じない」
呆れたようにバルテルが呟くが、エラディオは全く聞いていない。それどころか何かブツブツと呟き、突然何かひらめいたように立ち上がった。
「エラディオ?」
「街に行くぞ」
「は?」
「贈り物を買いに行く。お前も来い」
「え、ちょっ…仕事は!?」
「終わった」
そう言って書類の山を顎で指す。が、ブツブツ言いつつもきちんと目を通していたようで、しっかりと処理が終わっていた。
全ての書類が分類別に分けられ、行き先別に箱へ入れられている。否決の書類も否決の箱に入れられており、気のせいじゃなければそっちの方が多い。
しっかりと仕事をこなしていれば言う事はない。バルテルは苦笑しながらもエラディオの申し出に頷き、二人は街へ向かう事になった。
※※※
数時間後、エラディオとバルテルは数人の護衛騎士と一緒に街を探索していた。
向かう先は何故かファンシーな雑貨店や宝石店だった。そこでエラディオが唸りながら商品を眺めているので、バルテルがエラディオに問いかけた。
「宝石は分かるけどさ、こんなぬいぐるみだの人形だの置いてる雑貨店で何を買う気なんだよ?」
「うーん…ちょっと待てって…」
真剣に選んでいる姿が異常だ。何しろもう一度言うがここは子供用の雑貨店なのだから。
一つ一つ手に取っては眺め、そして棚に戻すを繰り返していたエラディオだったが、一つのぬいぐるみを手にして動きが止まった。
「これ…」
「それにするのか?」
ようやく決まったのかとバルテルが覗き込む。するとエラディオが少し嬉しそうな顔をして、ぬいぐるみをバルテルに見せた。
「ナディア嬢に似てないか?」
「…は?」
バルテルに見せたのは、シルバーの長毛猫のぬいぐるみだ。
長毛猫とは普通の猫と違い、毛がフサフサでモフモフしている。そしてエラディオの持っている猫のぬいぐるみは瞳の色が紫水晶のような瞳だった。
「絶対ナディア嬢にそっくりだ。よし、これを贈ろう」
「え、何だよ、彼女に贈る物を選んでたのか!?公爵令嬢だぞ!ぬいぐるみを贈るのか!?」
「ああ、ナディア嬢がぬいぐるみが好きだって言ってたからな」
「いや…いくらそう言ってたからってお前…」
「何だよ?」
「せめて宝石とかアクセサリーとか贈ったらいいだろ。なんでぬいぐるみなんだよ…」
バルテルが呆れたように呟くが、エラディオはちゃんとアクセサリーも贈るつもりだった。その為に宝石店にも行ったのだから。
けれど思っていたのが見つからず、結局何も買わなかった。
「ピンとくるのが無かったんだよ」
「じゃあもうお前が作ったらどうだ?得意だろ、そういうの」
「え」
「ん?」
なるほど、その手があったか。
エラディオは目を丸くしてバルテルを凝視し、そしてぬいぐるみを清算すると再び宝石店へ向かった。
そして店内の宝石をくまなく眺め、少し大きめのルビーとアメシストとエメラルドの原石をいくつか購入した。
「よし、これでいい。後は帰ってから作るか」
「冗談だったんだが、本気で作るのか…」
「何だよ。俺の腕前は知ってるだろ」
「知ってるけど、その三つの宝石で何を作るんだ?」
「髪飾りだよ。まあ見とけって」
そう言ってエラディオはニヤリと笑みを浮かべる。
結局その日はそのままバルテルとは解散し、エラディオは屋敷に帰って自室に籠った。
金や銀を使って留め金や台座を作り、そこにカッティングした宝石を嵌め込む。一心不乱に作業に没頭し、丸二日かかって髪飾りを仕上げた。
仕上がりを屋敷のメイド達に見せて感想を聞いてみると、中々の好感触だった。
エラディオの好いた女性にプレゼントする物だと言えば、皆お世辞を言わずに真剣に意見をしてくれた。
「この宝石で作ったチューリップがとても可愛らしいです!」
「葉の部分はエメラルドなんですね!素敵!」
「花束のように作られているのもいいですね!このボリュームのあるリボンもアクセントでいいです!」
「普段使いでもお茶会でも使えそうですね!」
ルビーとアメシストは彫ってチューリップ型にし、エメラルドはその茎と葉の形にした。それを銀の台座で固定し、花束がより豪華に見えるように銀細工でもチューリップの花を作った。花束を纏めるようにつけられたリボンは薄いピンク色だが、これも生花を髪飾りにする時と同じような結び方にしてある。
つまり立体的な生花の髪飾り風に仕上げたのだった。
「ちょっと派手か?」
「そんな事はないと思います。大きすぎればパーティー等にしか使えませんが、程よい大きさですので悪目立ちしませんし、何よりとても可愛らしいです」
「宝石も原石を削って作られているのでギラギラしてませんし、いいんじゃないでしょうか」
今回エラディオが選んだのが宝石とは言え原石だったので、自分でカットし磨く必要があった。が、エラディオはわざとあまり磨かないようにし、輝きを抑えて作ってある。
「あんまり高価そうだと貰ってくれねぇだろうからな」
「まあ、謙虚な御方なのですね」
謙虚と言っていいのかは分からないが、確実に見るからに高い物は受け取らないだろう。
それを回避する為のぬいぐるみと髪飾りだ。
エラディオは長毛猫のぬいぐるみの頭にその髪飾りを付け、ぬいぐるみごとナディアに贈るつもりだ。
「セルゲイ、これを綺麗にラッピングしてからドルフィーニ国のサルトレッティ公爵令嬢宛に送ってくれ」
「お手紙はよろしいのですか?」
「もう書いた。これも一緒に頼む」
「畏まりました」
丁寧にお辞儀をしたセルゲイは、エラディオから髪飾りを付けた猫のぬいぐるみを受け取る。それを侍女長に渡し、綺麗にラッピングをさせた後、サルトレッティ公爵領へと届けたのだった。
「んなもん却下だ。戦争が起こる訳でもねぇし、どうせくだらねぇ事考えてんだろ」
「あの人前科があるもんなぁ」
カーリン辺境伯領は凄腕の騎士達がいる国の重要拠点だ。勿論他国からの侵入や魔物の討伐等、役割としては多岐にわたるが。
「武器を壊しすぎだ。実際軍事拠点として武器が大量に必要なのは分かるが、これだと武器の横流しを疑うぜ」
「そうだねぇ。実際そう言って糾弾しようとしている貴族もいるし」
「国境付近の魔物を間引くのに苦労してんのは分かるが、それを中央の奴らが認識してないのも困るがな」
「カーリン辺境伯軍の連中は荒っぽいからなぁ」
だからと言って軍の備品である武器をこうも簡単に壊されてはたまらない。
「…よし、なら反対している奴に辺境伯領へ視察に行ってもらうか」
「まさか、魔物討伐に参加させるのか?」
「それが一番早いだろ。そうすりゃ両者が納得できるぜ」
「まぁそうだけど、荒治療だなぁ」
反対しているのは主に予算関係を取り仕切っている財務官達だ。そして辺境伯を軽く見ている連中も同じくだ。
「あいつらがカーリン領へ行けば魔物の討伐がいかに大切で大変かが分かるだろう。そして武器があんなに壊れる原因も分かる。実際に自分達の目で確認して、適正な量を支援するように指示しておけ」
「わかった」
コクリと頷くと書類と一緒に指示書を作成し、バルテルが財務官行の箱に入れた。この指示書を見たら、文句を言った自分を後悔するに違いないだろう。何しろ財務官達は言わずもがな文官なのだから、戦闘には不向きの人間が要職についている。絶対に嫌がる事は間違いない。
「それと、ゴメス公爵のリシュア令嬢が、令嬢の誕生日パーティーにエラディオを招待したいと招待状が来てるぞ」
「絶対行かねぇ」
「即答だな」
リシュア・ベリカ・ゴメスはゴメス公爵家の長女だ。ゴメス公爵家には長男がいるので、彼女は後を継ぐ必要はない。
公爵家ともあれば王家とも幼少から付き合いがあり、エラディオも何度も顔を合わせている。
彼女は公爵令嬢という身分であるにも関わらず、婚約者がいない状態で来月18歳の誕生日を迎えるのだ。
「リシュア嬢の誕生パーティーなんかに出向いてみろ。勝手に婚約者に仕立て上げられるっての」
「ゴメス公爵ならやりかねないね」
「分かってんなら断りの手紙を出しとけ」
「了解」
リシュアはとても美しい令嬢だ。それこそ引く手あまただろう。公爵家と言う肩書もさることながら、見た目の美しさも貴族男性達から大層人気だと聞いている。
それと余談だがさっき目の前で転んだシルバーバーグ侯爵令嬢やミナージュ伯爵令嬢とは仲が悪い。
理由は三人ともエラディオの妻の座を狙っているからだが。
「はぁ…ナディア嬢に会いたいぜ…」
思わず呟いてしまい、そんな自分が信じられないと驚いて口元を手で覆う。バルテルも驚いたようにこちらを見ていたので非常に気まずい。
「…今のは無意識だ」
「余計にダメじゃん。エラディオ、随分と本気なんだな」
ナディアが目の前で転んだりしたら、きっと誰よりも先に手を貸すだろう。曲がり角でぶつかりでもしたら、どさくさに紛れて抱きしめてしまうかもしれない。
「ああ、ザクセンはつまんねぇな」
「何てこと言うんだよ、全く。本当に、ドルフィーニ国のサルトレッティ公爵令嬢は罪な方だよ」
「ああそうだな。彼女の魅力は罪以外の何物でもねぇよ」
「…嫌味が通じない」
呆れたようにバルテルが呟くが、エラディオは全く聞いていない。それどころか何かブツブツと呟き、突然何かひらめいたように立ち上がった。
「エラディオ?」
「街に行くぞ」
「は?」
「贈り物を買いに行く。お前も来い」
「え、ちょっ…仕事は!?」
「終わった」
そう言って書類の山を顎で指す。が、ブツブツ言いつつもきちんと目を通していたようで、しっかりと処理が終わっていた。
全ての書類が分類別に分けられ、行き先別に箱へ入れられている。否決の書類も否決の箱に入れられており、気のせいじゃなければそっちの方が多い。
しっかりと仕事をこなしていれば言う事はない。バルテルは苦笑しながらもエラディオの申し出に頷き、二人は街へ向かう事になった。
※※※
数時間後、エラディオとバルテルは数人の護衛騎士と一緒に街を探索していた。
向かう先は何故かファンシーな雑貨店や宝石店だった。そこでエラディオが唸りながら商品を眺めているので、バルテルがエラディオに問いかけた。
「宝石は分かるけどさ、こんなぬいぐるみだの人形だの置いてる雑貨店で何を買う気なんだよ?」
「うーん…ちょっと待てって…」
真剣に選んでいる姿が異常だ。何しろもう一度言うがここは子供用の雑貨店なのだから。
一つ一つ手に取っては眺め、そして棚に戻すを繰り返していたエラディオだったが、一つのぬいぐるみを手にして動きが止まった。
「これ…」
「それにするのか?」
ようやく決まったのかとバルテルが覗き込む。するとエラディオが少し嬉しそうな顔をして、ぬいぐるみをバルテルに見せた。
「ナディア嬢に似てないか?」
「…は?」
バルテルに見せたのは、シルバーの長毛猫のぬいぐるみだ。
長毛猫とは普通の猫と違い、毛がフサフサでモフモフしている。そしてエラディオの持っている猫のぬいぐるみは瞳の色が紫水晶のような瞳だった。
「絶対ナディア嬢にそっくりだ。よし、これを贈ろう」
「え、何だよ、彼女に贈る物を選んでたのか!?公爵令嬢だぞ!ぬいぐるみを贈るのか!?」
「ああ、ナディア嬢がぬいぐるみが好きだって言ってたからな」
「いや…いくらそう言ってたからってお前…」
「何だよ?」
「せめて宝石とかアクセサリーとか贈ったらいいだろ。なんでぬいぐるみなんだよ…」
バルテルが呆れたように呟くが、エラディオはちゃんとアクセサリーも贈るつもりだった。その為に宝石店にも行ったのだから。
けれど思っていたのが見つからず、結局何も買わなかった。
「ピンとくるのが無かったんだよ」
「じゃあもうお前が作ったらどうだ?得意だろ、そういうの」
「え」
「ん?」
なるほど、その手があったか。
エラディオは目を丸くしてバルテルを凝視し、そしてぬいぐるみを清算すると再び宝石店へ向かった。
そして店内の宝石をくまなく眺め、少し大きめのルビーとアメシストとエメラルドの原石をいくつか購入した。
「よし、これでいい。後は帰ってから作るか」
「冗談だったんだが、本気で作るのか…」
「何だよ。俺の腕前は知ってるだろ」
「知ってるけど、その三つの宝石で何を作るんだ?」
「髪飾りだよ。まあ見とけって」
そう言ってエラディオはニヤリと笑みを浮かべる。
結局その日はそのままバルテルとは解散し、エラディオは屋敷に帰って自室に籠った。
金や銀を使って留め金や台座を作り、そこにカッティングした宝石を嵌め込む。一心不乱に作業に没頭し、丸二日かかって髪飾りを仕上げた。
仕上がりを屋敷のメイド達に見せて感想を聞いてみると、中々の好感触だった。
エラディオの好いた女性にプレゼントする物だと言えば、皆お世辞を言わずに真剣に意見をしてくれた。
「この宝石で作ったチューリップがとても可愛らしいです!」
「葉の部分はエメラルドなんですね!素敵!」
「花束のように作られているのもいいですね!このボリュームのあるリボンもアクセントでいいです!」
「普段使いでもお茶会でも使えそうですね!」
ルビーとアメシストは彫ってチューリップ型にし、エメラルドはその茎と葉の形にした。それを銀の台座で固定し、花束がより豪華に見えるように銀細工でもチューリップの花を作った。花束を纏めるようにつけられたリボンは薄いピンク色だが、これも生花を髪飾りにする時と同じような結び方にしてある。
つまり立体的な生花の髪飾り風に仕上げたのだった。
「ちょっと派手か?」
「そんな事はないと思います。大きすぎればパーティー等にしか使えませんが、程よい大きさですので悪目立ちしませんし、何よりとても可愛らしいです」
「宝石も原石を削って作られているのでギラギラしてませんし、いいんじゃないでしょうか」
今回エラディオが選んだのが宝石とは言え原石だったので、自分でカットし磨く必要があった。が、エラディオはわざとあまり磨かないようにし、輝きを抑えて作ってある。
「あんまり高価そうだと貰ってくれねぇだろうからな」
「まあ、謙虚な御方なのですね」
謙虚と言っていいのかは分からないが、確実に見るからに高い物は受け取らないだろう。
それを回避する為のぬいぐるみと髪飾りだ。
エラディオは長毛猫のぬいぐるみの頭にその髪飾りを付け、ぬいぐるみごとナディアに贈るつもりだ。
「セルゲイ、これを綺麗にラッピングしてからドルフィーニ国のサルトレッティ公爵令嬢宛に送ってくれ」
「お手紙はよろしいのですか?」
「もう書いた。これも一緒に頼む」
「畏まりました」
丁寧にお辞儀をしたセルゲイは、エラディオから髪飾りを付けた猫のぬいぐるみを受け取る。それを侍女長に渡し、綺麗にラッピングをさせた後、サルトレッティ公爵領へと届けたのだった。
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