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婚約破棄後の公爵令嬢
そして公爵令嬢は
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夜会での婚約破棄から一か月後。
領地でのんびりしていたナディアだったが、父であるサルトレッティ公爵の元にはナディアへの婚約の申し込みが山のように届いていた。
それを公爵は娘に知らせる事なく、全て処分している。
婚約破棄をしてまだ一か月しか経っていないのだ。平然としているが多少なりとも傷ついているはず。
そう思った公爵の気遣いだったのだが、母である公爵夫人は少し違っていた。
「旦那様、せめてナディアに見せてあげたらどうですか?」
そう言ってポイポイと釣書を捨てる公爵に夫人が訪ねる。が、公爵は全くその気がないのか、チラリと妻の顔を見ただけで無言で釣書をゴミ箱に捨て続けた。
「一応中は見ている」
「それはそうでしょうけど」
返事も書かずにポイポイ捨てる夫に公爵夫人も溜息をつく。
夫の気持ちはよく分かる。自分もナディアにはしばらくゆっくりさせてやりたいと思っている。
「あの子は随分と長い間頑張ってきたんだ。学園も単位は全て取ってあるのだし、後は卒業式だけ行けばいい。今はやりたいようにさせてやりたい」
「貴方の気持ちは分かりますけど、ナディアがどう思ってるのか聞いてあげてもいいんじゃないですか?」
「必要ない」
バッサリと切り捨てられ、公爵夫人は再び呆れたように溜息をついた。
そこへ、遠慮がちに扉をノックする音が聞こえる。
「入れ」
サルトレッティ公爵が入室を許可すると、ナディアがそっと入ってきた。
「ナディアか、どうした?」
「お父様…と、お母様もご一緒でしたか。お邪魔でしたか?」
「いいえ、大丈夫よ。それよりもどうしたの?」
「あ、はい。実は…」
ナディアが何かを言いかけてから、ある場所に視線を移して言葉を止める。
見ていた先は公爵の手元にある釣書の束と、それを捨てていたゴミ箱だった。
「それ、ひょっとして私宛ではございませんか?」
「いや、違う」
「え、でも…どう見ても釣書ですわよね」
「う…」
父が言葉を詰まらせたのを見て、ナディアがクスクスと笑い出す。
それを黙って見ていた公爵夫人は、仕方ないように苦笑した。
「貴女が婚約破棄で傷ついているだろうからって、お父様が見せないようにしていたのよ」
「そうだったんですか」
意外にあっさり納得するナディアに公爵もホッとする。
そこへ執事から来客の知らせが届いた。
「来客の予定はないが」
「それが、ナディアお嬢様にお客様です」
「え、私ですか?」
「はい」
領地まで誰かが来るなんて思ってもみなかったナディアは、本当に心当たりがないらしく首を傾げている。それもそのはず、サルトレッティ公爵家の領地は王国に数か所あり、ここは王都からそこそこ遠い場所だからだ。とは言ってもサルトレッティ領で一番の街でもあり、元々この地が初代から続く由緒正しい領地ではあるが。
けれど王都から来るとなると、馬車で最低三日はかかる。そんな場所に態々ナディアに会いに来るとなると、どうにもいい予感はしないと、公爵は頭の中で呟いた。
「私も同席しよう」
「え、お父様も?」
「ではわたくしも一緒に」
「お母様まで?」
急に二人が同席を言い出したのを不思議には思ったが、ナディアに反対する理由はない。執事には応接室にお客様を通すよう指示し、ナディア達も応接室に向かった。
「失礼します。お客様をお連れしました」
応接室で来客を待っていると、思いもよらない人物が現れた。
「え、殿下?」
「…やあ」
若干気まずそうなジョバンニが、誰かを連れて現れたのだ。
「トーマス、お客様がお帰りだ」
「畏まりました」
「おい!今来たばかりだろう!」
ジョバンニを見た瞬間、公爵が執事にジョバンニを追い出すよう冷たく言い放つ。それを慌ててジョバンニが抗議し、公爵もチッと舌打ちしながらも最後は渋々ジョバンニに座るよう促した。
「来てすぐ追い返されるとは思わなかった…」
「普通は思いますよ。何しに来たんですか」
「ナディアまでそんな事を言うのか」
「気安く呼ばないでください」
「う…、ナディア嬢…」
フイッとそっぽを向くと、さらに気まずげに呼び方を訂正する。そんなジョバンニを見てずっと黙っていた彼の同行者が、クスクスと笑い出した。
そしてようやくその同行者に全員が視線を向け、何故か公爵が目を瞠った。
その意味を理解したらしく、同行者の青年はクスリと小さく笑う。
「ああ、失礼。サルトレッティ公爵と公爵夫人、そしてナディア嬢には初めてお目にかかりますね」
「貴方はひょっとして…」
「私の名はエラディオ・ファン・ザクセンと申します。以後お見知りおきを」
エラディオ・ファン・ザクセン。
その名前を聞いてすぐ彼の正体が分かった。
隣国の王弟殿下だ。
「隣国の王族の方がナディアにどういったご要件でしょうか?」
微笑みを浮かべたまま公爵夫人が尋ねると、エラディオは恥ずかしそうに顔を赤らめながらも口を開く。
「いえ、ジョバンニの元婚約者殿の顔を見て見たかったので、彼に無理を言って案内してもらったんです」
「はあ?」
興味深そうにこちらを眺めるエラディオに、ナディアは少々困惑する。
その気持ちを察したサルトレッティ公爵は、毅然とした態度を崩さずにエラディオとジョバンニの様子を伺うよう視線を向けた。
「それで、大勢の前で辱められた娘に、その張本人が一体何の用ですか?」
盛大に嫌味を込めて問いかけると、ジョバンニが落ち着かない様子でチラリとナディアに視線を向ける。それを訝しげにナディアが見返すと、エラディオがゴホンとわざとらしく咳払いをした。
「公爵が不快に思うのはもっともなんですが、まずはジョバンニとナディア嬢お二人でお話する機会をいただけないでしょうか?」
「断る」
即答で断った公爵にエラディオがプッと吹き出す。
このままでは埒が明かないと理解したナディアは、盛大に溜息をついて両親へ視線を向けた。
「お父様、お母様。さっさと帰っていただきたいので少しだけ二人にしていただけませんか?」
「おい」
本音を全く隠さずに告げると、小さい声でジョバンニからツッコミが入る。それをまるっと無視して両親をじっと見ると、二人は仕方ないとばかりに溜息をついた。
「仕方ありませんわ、旦那様。ナディア、殿下と庭でも散歩してらっしゃい」
「わかりました。さあ、早く行きましょう殿下」
「あ、ああ。サルトレッティ公爵、それに夫人も。感謝する」
「そんなものは結構。トーマス、ザクセン王弟殿下にお茶を」
「畏まりました」
あくまで塩対応の両親に苦笑を漏らしながらも、ジョバンニを伴って庭へ移動した。
とは言っても会話は全くなく、ジョバンニは無言でナディアに着いてくる。
今更何の用かとは思うが、そろそろ口を開いて貰わないと…そう思ったその時、ジョバンニがポツリと呟いた。
「すまなかった」
「は?」
今何と言われたのか、ナディアが理解できずに首を傾げる。
「…幻聴かしら。殿下から謝罪の言葉が聞こえましたが…」
「聞こえた通り謝罪しただろ!全く、何でお前はそういう…」
ブツブツと文句を言っているが、どうやら本当に謝罪したらしい。そんなジョバンニを驚いたようにナディアは見つめる。
「え、まさか何かおかしな物でもお食べになったんですか?」
「食べてないわっ!本当にお前は失礼な奴だな!」
「えー、だってまさか殿下が私に謝るなんて。あの日だって全く悪いと思ってらっしゃらなかったじゃないですか」
「それは…私も反省した…」
語尾が小さくなりつつも、気まずそうに視線をそらしながら呟く。
どうやら謝罪は本当のようだった。
「それはそれは、どういった心境の変化ですの?もしかして王太子の地位に戻してもらう代わりに、私に謝って来いとでも陛下に言われました?」
「な、違う!た、確かに謝罪して来いとは言われたが…私も少し…う、浮かれていたのもあったし、お前には本当に悪い事をしたと…」
「…何がです?」
領地でのんびりしていたナディアだったが、父であるサルトレッティ公爵の元にはナディアへの婚約の申し込みが山のように届いていた。
それを公爵は娘に知らせる事なく、全て処分している。
婚約破棄をしてまだ一か月しか経っていないのだ。平然としているが多少なりとも傷ついているはず。
そう思った公爵の気遣いだったのだが、母である公爵夫人は少し違っていた。
「旦那様、せめてナディアに見せてあげたらどうですか?」
そう言ってポイポイと釣書を捨てる公爵に夫人が訪ねる。が、公爵は全くその気がないのか、チラリと妻の顔を見ただけで無言で釣書をゴミ箱に捨て続けた。
「一応中は見ている」
「それはそうでしょうけど」
返事も書かずにポイポイ捨てる夫に公爵夫人も溜息をつく。
夫の気持ちはよく分かる。自分もナディアにはしばらくゆっくりさせてやりたいと思っている。
「あの子は随分と長い間頑張ってきたんだ。学園も単位は全て取ってあるのだし、後は卒業式だけ行けばいい。今はやりたいようにさせてやりたい」
「貴方の気持ちは分かりますけど、ナディアがどう思ってるのか聞いてあげてもいいんじゃないですか?」
「必要ない」
バッサリと切り捨てられ、公爵夫人は再び呆れたように溜息をついた。
そこへ、遠慮がちに扉をノックする音が聞こえる。
「入れ」
サルトレッティ公爵が入室を許可すると、ナディアがそっと入ってきた。
「ナディアか、どうした?」
「お父様…と、お母様もご一緒でしたか。お邪魔でしたか?」
「いいえ、大丈夫よ。それよりもどうしたの?」
「あ、はい。実は…」
ナディアが何かを言いかけてから、ある場所に視線を移して言葉を止める。
見ていた先は公爵の手元にある釣書の束と、それを捨てていたゴミ箱だった。
「それ、ひょっとして私宛ではございませんか?」
「いや、違う」
「え、でも…どう見ても釣書ですわよね」
「う…」
父が言葉を詰まらせたのを見て、ナディアがクスクスと笑い出す。
それを黙って見ていた公爵夫人は、仕方ないように苦笑した。
「貴女が婚約破棄で傷ついているだろうからって、お父様が見せないようにしていたのよ」
「そうだったんですか」
意外にあっさり納得するナディアに公爵もホッとする。
そこへ執事から来客の知らせが届いた。
「来客の予定はないが」
「それが、ナディアお嬢様にお客様です」
「え、私ですか?」
「はい」
領地まで誰かが来るなんて思ってもみなかったナディアは、本当に心当たりがないらしく首を傾げている。それもそのはず、サルトレッティ公爵家の領地は王国に数か所あり、ここは王都からそこそこ遠い場所だからだ。とは言ってもサルトレッティ領で一番の街でもあり、元々この地が初代から続く由緒正しい領地ではあるが。
けれど王都から来るとなると、馬車で最低三日はかかる。そんな場所に態々ナディアに会いに来るとなると、どうにもいい予感はしないと、公爵は頭の中で呟いた。
「私も同席しよう」
「え、お父様も?」
「ではわたくしも一緒に」
「お母様まで?」
急に二人が同席を言い出したのを不思議には思ったが、ナディアに反対する理由はない。執事には応接室にお客様を通すよう指示し、ナディア達も応接室に向かった。
「失礼します。お客様をお連れしました」
応接室で来客を待っていると、思いもよらない人物が現れた。
「え、殿下?」
「…やあ」
若干気まずそうなジョバンニが、誰かを連れて現れたのだ。
「トーマス、お客様がお帰りだ」
「畏まりました」
「おい!今来たばかりだろう!」
ジョバンニを見た瞬間、公爵が執事にジョバンニを追い出すよう冷たく言い放つ。それを慌ててジョバンニが抗議し、公爵もチッと舌打ちしながらも最後は渋々ジョバンニに座るよう促した。
「来てすぐ追い返されるとは思わなかった…」
「普通は思いますよ。何しに来たんですか」
「ナディアまでそんな事を言うのか」
「気安く呼ばないでください」
「う…、ナディア嬢…」
フイッとそっぽを向くと、さらに気まずげに呼び方を訂正する。そんなジョバンニを見てずっと黙っていた彼の同行者が、クスクスと笑い出した。
そしてようやくその同行者に全員が視線を向け、何故か公爵が目を瞠った。
その意味を理解したらしく、同行者の青年はクスリと小さく笑う。
「ああ、失礼。サルトレッティ公爵と公爵夫人、そしてナディア嬢には初めてお目にかかりますね」
「貴方はひょっとして…」
「私の名はエラディオ・ファン・ザクセンと申します。以後お見知りおきを」
エラディオ・ファン・ザクセン。
その名前を聞いてすぐ彼の正体が分かった。
隣国の王弟殿下だ。
「隣国の王族の方がナディアにどういったご要件でしょうか?」
微笑みを浮かべたまま公爵夫人が尋ねると、エラディオは恥ずかしそうに顔を赤らめながらも口を開く。
「いえ、ジョバンニの元婚約者殿の顔を見て見たかったので、彼に無理を言って案内してもらったんです」
「はあ?」
興味深そうにこちらを眺めるエラディオに、ナディアは少々困惑する。
その気持ちを察したサルトレッティ公爵は、毅然とした態度を崩さずにエラディオとジョバンニの様子を伺うよう視線を向けた。
「それで、大勢の前で辱められた娘に、その張本人が一体何の用ですか?」
盛大に嫌味を込めて問いかけると、ジョバンニが落ち着かない様子でチラリとナディアに視線を向ける。それを訝しげにナディアが見返すと、エラディオがゴホンとわざとらしく咳払いをした。
「公爵が不快に思うのはもっともなんですが、まずはジョバンニとナディア嬢お二人でお話する機会をいただけないでしょうか?」
「断る」
即答で断った公爵にエラディオがプッと吹き出す。
このままでは埒が明かないと理解したナディアは、盛大に溜息をついて両親へ視線を向けた。
「お父様、お母様。さっさと帰っていただきたいので少しだけ二人にしていただけませんか?」
「おい」
本音を全く隠さずに告げると、小さい声でジョバンニからツッコミが入る。それをまるっと無視して両親をじっと見ると、二人は仕方ないとばかりに溜息をついた。
「仕方ありませんわ、旦那様。ナディア、殿下と庭でも散歩してらっしゃい」
「わかりました。さあ、早く行きましょう殿下」
「あ、ああ。サルトレッティ公爵、それに夫人も。感謝する」
「そんなものは結構。トーマス、ザクセン王弟殿下にお茶を」
「畏まりました」
あくまで塩対応の両親に苦笑を漏らしながらも、ジョバンニを伴って庭へ移動した。
とは言っても会話は全くなく、ジョバンニは無言でナディアに着いてくる。
今更何の用かとは思うが、そろそろ口を開いて貰わないと…そう思ったその時、ジョバンニがポツリと呟いた。
「すまなかった」
「は?」
今何と言われたのか、ナディアが理解できずに首を傾げる。
「…幻聴かしら。殿下から謝罪の言葉が聞こえましたが…」
「聞こえた通り謝罪しただろ!全く、何でお前はそういう…」
ブツブツと文句を言っているが、どうやら本当に謝罪したらしい。そんなジョバンニを驚いたようにナディアは見つめる。
「え、まさか何かおかしな物でもお食べになったんですか?」
「食べてないわっ!本当にお前は失礼な奴だな!」
「えー、だってまさか殿下が私に謝るなんて。あの日だって全く悪いと思ってらっしゃらなかったじゃないですか」
「それは…私も反省した…」
語尾が小さくなりつつも、気まずそうに視線をそらしながら呟く。
どうやら謝罪は本当のようだった。
「それはそれは、どういった心境の変化ですの?もしかして王太子の地位に戻してもらう代わりに、私に謝って来いとでも陛下に言われました?」
「な、違う!た、確かに謝罪して来いとは言われたが…私も少し…う、浮かれていたのもあったし、お前には本当に悪い事をしたと…」
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