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第七話
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しおりを挟む「もう少し優しく扱って! 女の子の扱いも知らないの?」
弱みは見せない。敢えて男たちを挑発するように言う。
「ああ、でも女の子の扱いを知っていたら、攫って閉じ込めたりしないもんね。自分でも頭の悪い質問しちゃった。ごめんなさい」
男たちの意識がわずかでも逃げた仲間から自分に向くように。
恐ろしい気持ちは当然ある。気を強く保たねば、身体だって震える。
それでもセランは孤独な戦いを続けた。
「殺されねぇだけありがたいと思いやがれ。……ちっ、傷付けるなって命令さえなきゃ、ここで思い知らせてやったのによ」
「楽しむくらいならいいんじゃねぇか? 反抗するとどうなるか、教えてやりゃいい」
「馬鹿野郎、値が付くのは生娘だ」
「そいつを確かめるだけでも……」
「やめとけ。上に知られて首撥ねられたいんなら、止めねぇけどな」
また、セランは別の部屋へと移動させられる。
どんなに抵抗しても男の力には敵うはずがなかった。
再び下ろされたのは、皆といたときよりもずっと狭く、かび臭い部屋。
土壁は黒く汚れており、床の隅には虫の姿がある。
一般的な女ならその不潔極まりない場所に泣いて懇願したかもしれなかった。
だが、セランはもともと砂の上で寝起きし、自然の中で生きてきた。おかげで嫌悪感はありこそすれ、気が狂うようなことにはならない。
「こんな汚い部屋で過ごしたら、せっかく綺麗な肌が汚れちゃうかもしれないよ」
男たちが自分に価値を感じているのは知っている。
再び挑発するように言ったが、鼻で笑われただけだった。
「祭の前に磨いてやるから安心しな」
「病気になっても知らないから」
「その方がおとなしくなっていいかもな?」
ははは、と笑うと男はセランの足首に金属の輪をはめた。
鎖が繋がっており、その先は部屋の隅にある鉄杭に留められている。
「あの人数に逃げられたのは痛いが、その分お前を高く売りゃあいい。感謝しろよ、いいご主人様を探してやる」
「気に入らない人だったら噛み付いてやる」
「はははっ、気の強い女だ」
笑った男が――振り上げた手でセランの頬を殴りつける。
「っ……!」
勢いにやられ、セランは床に転がった。
じんじんと頬が熱い。鉄臭い味が口に広がった。
「調子に乗んなよ、ガキ」
「……そっちこそ」
精一杯睨みつけて言い返す。
しかし、セランの身体は震えていた。
幸い、男にそれを気付かれることはなかった。
男たちが部屋を出て行っても、セランは届かない扉を睨み続けた。
唇を噛み締めて、血の味を飲み込む。
(泣かない。……絶対、泣かない)
どこかで手は出されないのだと思っていた。
商品である自分の価値を男たちが下げるはずはないと。
殴られた場所がひりひりし始める。
更にきつく、唇を噛んだ。
(……怖くないんだから)
そう思ったのに、こらえ切れず頬を涙が伝っていく。
敵わない力に対する恐怖がセランの心を締め付けた。
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