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第6章

反撃

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「リオン、さん‥?」

俺はそれっきり黙ってしまったリオンさんの顔を覗き込む。

「ッ、こっちを見るなッ」

「ぐはっ!?」


刹那、思いっきり殴られました‥。
痛いですリオンさん‥。

殴られた衝撃で、悲劇のヒロインみたいな格好で倒れる俺。
ちょうど、その1くんの下にフライアウェイした様で、
チラリとその1くんの様子も伺ってみる。


「っ、。」

あれ?まだ固まってる?

今ならそのイラつく顔に落書きできそうだ。
いやまて、そんな事したらまたリオンさんに殴られそう。結構本気だから、痛いんだよな‥これが。


「ファイもいつまでボーッとしてんの!?ストーカー如きに言いたい放題言われちゃってさー!?馬鹿じゃないの?!期待させといて‥、最後まで否定するんじゃねえよッこのヤリチンッ」

「ッ、ヤリっ、言い過ぎだリオン‥。それより、お前、顔が真っ赤だぞ‥」


その1くんにまでお灸を据えるリオンさんが意外で、
俺は目を見開いてその様子を傍観する。

彼の言うように、りんごの様な顔。
恥ずかしがってる?それとも怒ると赤くなる体質なのかな。

とにかく可愛くて、俺はふふっと笑ってしまった。


「うるさい馬鹿ッ!?く、君もなに笑ってんのっ、あーやだやだ。素直に言いたい事言ってさッ‥ストレスなんかたまらないんだろうね。人の事なんて考えない無神経な奴‥俺‥君のそういうところ、大嫌いだよ‥」

そんなりんごのような愛らしいお顔でキっと睨みつけられてもさ‥俺はドキドキするだけなんですけどね。罪な人だほんと。

それに‥

「‥そう、見えるんですか‥?俺の事‥」

「は?」

素直に‥言いたいことを‥。


っ、ふは、そっか‥、そっか‥っ!俺、ちゃんと自分の気持ち、言えるようになったんだ。

胸の奥がジーンと暖かくなる。
勇気を出して、本当によかった‥。


「えへ、へ‥変われた。俺変われましたリオンさん」

「な、なんなの。気持ち悪いッ、笑うなよ!俺は君を貶してるんだよっ、どうして君はいつもいつもッ」

「貴方のおかげです。リオンさん‥大好きです‥。」

「ッ、ま、た‥」

貴方に出会えたから、
俺は変わることができたんだ。

言いたいことを押し込んで、
何もかもを世界のせいにして‥
いつも後悔していたあの頃自分を‥。


全部、全部、貴方のおかげだ。

気まずそうに視線を逸らすリオンさん。
その姿ですら愛おしくて、
かなり重症だな‥って思いながらも、
広角が自然と上がってしまう。

リオンさん、好きです‥。
大好きです‥。


「っ~、もう行くから‥ついてこないで。」

「そうですか‥ではまた明日!」

「っ、ファイもッ!ついてきたら殴るッ。」


「なっ!?」


プンプンしながら何処かへと行ってしまったリオンさん。
これ以上しつこくすれば、流石に俺でも引いてしまいそうなので、

今日のアタックはここまで。


「‥」

しょげているのか、複雑な顔をするその1くん。
俺はとても気分が良くて、日頃の恨みも込めて、この男をいじってやる事にした。

凄いよね、自信って持つと積極的になるんだよ。


「あーあ、いつも曖昧だから振られるですよ。ファイ様?」


ポンポンと、立ち上がりながら砂埃を払う。


「なに!?貴様ッ調子に乗るな!!大体、貴様のせいでリオンにッ」

「はい、人のせいにしないでくださーい。」

あー、楽しい。いつもは罵られていただけだったから、
なんだか、いじりがいのあるこの人に、更に気分が良くなった。


庶民が嫌いなら無視すればいいのに、素直に突っかかってくるんだから本当に面白いよねこの人。

頭は良いはずなのに、どこか抜けてる感じ。リオンさんはこの人の何処が好きなんだろ‥。

このムカつく程美形な顔?それとも恵まれた身分?もしくは‥このちょっと馬鹿な性格のギャップとか‥。

どこもかしこも勝てる気はしないけど、負ける気もさらさら無い。


振り向いてもらえるよう、頑張るだけだ。



「く、ガキが生意気な顔するようになりやがって‥、‥はぁ‥もういい‥。貴様が変わった事は認めてやる。」

「なに急に素直になってんですか‥、気持ち悪いです、よ、え?‥ッ、今





なんて言いましたっ?」


フワリとした風が、その獅子のような髪を靡かせる。

先程とは違う穏やかな眼差しと言葉に、俺は驚いて固まった。


っ、この人、まさか




「何度も言わせるな。貴様は以前とは違い、良い方向へと変わっている。暗く自分の意見も言えない愚か者では無くなったのだな。」

「っ、」

「何を、驚いた顔をしている。」

「だ、だって、あんた」

「あぁ‥この不愉快なか。少し手こずったが‥貴様の無様な声明を浴びたせいで、頭のネジがぶっ飛んだようだ。お陰で、脳内に書き換えられていたも崩れ去った。よくやったアルビノーーー。」


ギラリと光る双眼。
自信に満ち溢れるその表情は王者のモノ。

ふんぞりかえって、俺をそう呼ぶのは‥
ルーが愛した、あのファイ•キングダムだーーー。


「っ、あんたが一番に解けちゃうんだ。予想外ですよほんと‥」

「ほざけ。俺様を誰だと思っている。
この妙な魔法は‥ルーが‥やったんだな?‥いや、あれは、ルーでは無く、ルーの姿をしたか‥。」

「ッ、気づいて?」

予想外の言葉に驚く。
俺、この人は何も知らないとばかり‥

「あぁ‥。何処か違うと、薄々は感じてはいた。妙な行動をして、嫌な笑い方をする。だけど、今まで傷つけてきた分、もしそれが‥ルーの一部かもしれないと思うと、何も出来なかった‥。」

「‥。」


そんなことを思っていたなんて。

俺の知らない現実。2人をちゃんと見れていなかったのは、現実から目を逸らしていた俺の方だったのか。

最低だとばかり思っていたけど、この人ちゃんと‥

ルーを愛していたんだーー、


「‥それと、お前のあの言葉への回答、少し訂正させてもらうぞ。
俺が守る相手は、ルーだ。お前の言う、命に変えても、な。
だが、例えリオンがそのような状態でも
俺は守る。二択など存在しない。どちらかを選ぶ必要はない。何故なら、どちらも守ればいいのだからなーーー。」

「ッ、はは‥、ズルイですよ、そんな最強な回答‥。予想外すぎ‥。ちゃんと‥ルーを愛してくれてたんですね‥。なんだ、あんたカッコいいじゃん。」


「は、気付くのが遅い。あまり此処へ長居はできない。感づかれてまたあの魔法にやられると困るのでな。‥俺はこれから、をして、ルーを探る‥。お前はリオンをなんとかしろ。」

「任せてください。」

俺はハッキリとそう返事をする。
その言葉に、彼はニカリと笑った。


「頼んだぞ‥エルーーー。」

「っ、はいッ!ファイさんも、お気をつけてーーー」



離れていく大きな背中に、ガシャンッと歯車が狂う音がして、


俺はニヤリと、微笑んだ。


物語の流れがたった今、



大きく変わったのだーー


予想外の展開。俺というイレギュラーのせいで、
メインキャラの1人が、狂った世界の記憶を思い出した。しかもあのファイ•キングダムがだ。


ざまぁみろ、ここからが本当の



反撃の始まりだーーー
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