100 / 109
第6章
反撃
しおりを挟む「リオン、さん‥?」
俺はそれっきり黙ってしまったリオンさんの顔を覗き込む。
「ッ、こっちを見るなッ」
「ぐはっ!?」
刹那、思いっきり殴られました‥。
痛いですリオンさん‥。
殴られた衝撃で、悲劇のヒロインみたいな格好で倒れる俺。
ちょうど、その1くんの下にフライアウェイした様で、
チラリとその1くんの様子も伺ってみる。
「っ、。」
あれ?まだ固まってる?
今ならそのイラつく顔に落書きできそうだ。
いやまて、そんな事したらまたリオンさんに殴られそう。結構本気だから、痛いんだよな‥これが。
「ファイもいつまでボーッとしてんの!?ストーカー如きに言いたい放題言われちゃってさー!?馬鹿じゃないの?!期待させといて‥、最後まで否定するんじゃねえよッこのヤリチンッ」
「ッ、ヤリっ、言い過ぎだリオン‥。それより、お前、顔が真っ赤だぞ‥」
その1くんにまでお灸を据えるリオンさんが意外で、
俺は目を見開いてその様子を傍観する。
彼の言うように、りんごの様な顔。
恥ずかしがってる?それとも怒ると赤くなる体質なのかな。
とにかく可愛くて、俺はふふっと笑ってしまった。
「うるさい馬鹿ッ!?く、君もなに笑ってんのっ、あーやだやだ。素直に言いたい事言ってさッ‥ストレスなんかたまらないんだろうね。人の事なんて考えない無神経な奴‥俺‥君のそういうところ、大嫌いだよ‥」
そんなりんごのような愛らしいお顔でキっと睨みつけられてもさ‥俺はドキドキするだけなんですけどね。罪な人だほんと。
それに‥
「‥そう、見えるんですか‥?俺の事‥」
「は?」
素直に‥言いたいことを‥。
っ、ふは、そっか‥、そっか‥っ!俺、ちゃんと自分の気持ち、言えるようになったんだ。
胸の奥がジーンと暖かくなる。
勇気を出して、本当によかった‥。
「えへ、へ‥変われた。俺変われましたリオンさん」
「な、なんなの。気持ち悪いッ、笑うなよ!俺は君を貶してるんだよっ、どうして君はいつもいつもッ」
「貴方のおかげです。リオンさん‥大好きです‥。」
「ッ、ま、た‥」
貴方に出会えたから、
俺は変わることができたんだ。
言いたいことを押し込んで、
何もかもを世界のせいにして‥
いつも後悔していたあの頃自分を‥。
全部、全部、貴方のおかげだ。
気まずそうに視線を逸らすリオンさん。
その姿ですら愛おしくて、
かなり重症だな‥って思いながらも、
広角が自然と上がってしまう。
リオンさん、好きです‥。
大好きです‥。
「っ~、もう行くから‥ついてこないで。」
「そうですか‥ではまた明日!」
「っ、ファイもッ!ついてきたら殴るッ。」
「なっ!?」
プンプンしながら何処かへと行ってしまったリオンさん。
これ以上しつこくすれば、流石に俺でも引いてしまいそうなので、
今日のアタックはここまで。
「‥」
しょげているのか、複雑な顔をするその1くん。
俺はとても気分が良くて、日頃の恨みも込めて、この男をいじってやる事にした。
凄いよね、自信って持つと積極的になるんだよ。
「あーあ、いつも曖昧だから振られるですよ。ファイ様?」
ポンポンと、立ち上がりながら砂埃を払う。
「なに!?貴様ッ調子に乗るな!!大体、貴様のせいでリオンにッ」
「はい、人のせいにしないでくださーい。」
あー、楽しい。いつもは罵られていただけだったから、
なんだか、いじりがいのあるこの人に、更に気分が良くなった。
庶民が嫌いなら無視すればいいのに、素直に突っかかってくるんだから本当に面白いよねこの人。
頭は良いはずなのに、どこか抜けてる感じ。リオンさんはこの人の何処が好きなんだろ‥。
このムカつく程美形な顔?それとも恵まれた身分?もしくは‥このちょっと馬鹿な性格のギャップとか‥。
どこもかしこも勝てる気はしないけど、負ける気もさらさら無い。
振り向いてもらえるよう、頑張るだけだ。
「く、ガキが生意気な顔するようになりやがって‥、‥はぁ‥もういい‥。貴様が変わった事は認めてやる。」
「なに急に素直になってんですか‥、気持ち悪いです、よ、え?‥ッ、今
なんて言いましたっ?」
フワリとした風が、その獅子のような髪を靡かせる。
先程とは違う穏やかな眼差しと言葉に、俺は驚いて固まった。
っ、この人、まさか
「何度も言わせるな。貴様は以前とは違い、良い方向へと変わっている。暗く自分の意見も言えない愚か者では無くなったのだな。」
「っ、」
「何を、驚いた顔をしている。」
「だ、だって、あんた」
「あぁ‥この不愉快な魔法か。少し手こずったが‥貴様の無様な声明を浴びたせいで、頭のネジがぶっ飛んだようだ。お陰で、脳内に書き換えられていた魔力構成も崩れ去った。よくやったアルビノーーー。」
ギラリと光る双眼。
自信に満ち溢れるその表情は王者のモノ。
ふんぞりかえって、俺をそう呼ぶのは‥
ルーが愛した、あのファイ•キングダムだーーー。
「っ、あんたが一番に解けちゃうんだ。予想外ですよほんと‥」
「ほざけ。俺様を誰だと思っている。
この妙な魔法は‥ルーが‥やったんだな?‥いや、あれは、ルーでは無く、ルーの姿をした何かか‥。」
「ッ、気づいて?」
予想外の言葉に驚く。
俺、この人は何も知らないとばかり‥
「あぁ‥。何処か違うと、薄々は感じてはいた。妙な行動をして、嫌な笑い方をする。だけど、今まで傷つけてきた分、もしそれが‥ルーの一部かもしれないと思うと、何も出来なかった‥。」
「‥。」
そんなことを思っていたなんて。
俺の知らない現実。2人をちゃんと見れていなかったのは、現実から目を逸らしていた俺の方だったのか。
最低だとばかり思っていたけど、この人ちゃんと‥
ルーを愛していたんだーー、
「‥それと、お前のあの言葉への回答、少し訂正させてもらうぞ。
俺が守る相手は、ルーだ。お前の言う、命に変えても、な。
だが、例えリオンがそのような状態でも
俺は守る。二択など存在しない。どちらかを選ぶ必要はない。何故なら、どちらも守ればいいのだからなーーー。」
「ッ、はは‥、ズルイですよ、そんな最強な回答‥。予想外すぎ‥。ちゃんと‥ルーを愛してくれてたんですね‥。なんだ、あんたカッコいいじゃん。」
「は、気付くのが遅い。あまり此処へ長居はできない。感づかれてまたあの魔法にやられると困るのでな。‥俺はこれから、魔法が解けていない振りをして、ルーを探る‥。お前はリオンをなんとかしろ。」
「任せてください。」
俺はハッキリとそう返事をする。
その言葉に、彼はニカリと笑った。
「頼んだぞ‥エルーーー。」
「っ、はいッ!ファイさんも、お気をつけてーーー」
離れていく大きな背中に、ガシャンッと歯車が狂う音がして、
俺はニヤリと、微笑んだ。
物語の流れがたった今、
大きく変わったのだーー
予想外の展開。俺というイレギュラーのせいで、
メインキャラの1人が、狂った世界の記憶を思い出した。しかもあのファイ•キングダムがだ。
ざまぁみろ、ここからが本当の
反撃の始まりだーーー
0
お気に入りに追加
2,102
あなたにおすすめの小説
【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします
七夜かなた
BL
前世はブラック企業に過労死するまで働かされていた一宮沙織は、読んでいたTL小説「放蕩貴族は月の乙女を愛して止まない」の悪役令息ギャレット=モヒナートに転生してしまった。
よりによってヒロインでもなく、ヒロインを虐め、彼女に惚れているギャレットの義兄ジュストに殺されてしまう悪役令息に転生するなんて。
お金持ちの息子に生まれ変わったのはいいけど、モブでもいいから長生きしたい
最後にはギャレットを殺した罪に問われ、牢獄で死んでしまう。
小説の中では当て馬で不憫だったジュスト。
当て馬はどうしようもなくても、不憫さは何とか出来ないか。
小説を読んでいて、ハッピーエンドの主人公たちの影で不幸になった彼のことが気になっていた。
それならヒロインを虐めず、義兄を褒め称え、悪意がないことを証明すればいいのでは?
そして義兄を慕う義弟を演じるうちに、彼の自分に向ける視線が何だか熱っぽくなってきた。
ゆるっとした世界観です。
身体的接触はありますが、濡れ場は濃厚にはならない筈…
タイトルもしかしたら途中で変更するかも
イラストは紺田様に有償で依頼しました。
悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
哀しい目に遭った皆と一緒にしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?
紫楼
ファンタジー
5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。
やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。
悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!
でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。
成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!
絶対お近づきになりたくない。
気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。
普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。
ブラコンとシスコンの二人の物語。
偏った価値観の世界です。
戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。
主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。
ふんわり設定、見切り発車です。
カクヨム様にも掲載しています。
24話まで少し改稿、誤字修正しました。
大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる