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第6章

リオンsideーー夢と唇と

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リオンsideーー



「きたー!!何処も売り切れでなかなか手に入らなかったから、ちょー嬉しいんだけどっふふ、これが至福の時ってやつだね!」


俺の愛読書‥

王国物語‥最新刊‥。そして

最終章。


俺は寮のベッドに寝転がりながら、1ページづつゆっくりと目を通していく。



突如、魔獣が国々を次々に侵略し始める。
次のターゲットは敵国。それを偶然知ってしまった主人公の王は、犠牲になる国民達の苦しみを考え、覚悟を決める。
主君の命により、最強騎士は命をかけて敵国の王の元へと辿り着く。ボロボロになりながらも、敵国の兵を蹴散らし、王座の前へとその身を現した最強騎士は、王に主君の意思を伝えるのだ。

敵国の危機を伝え、援軍を送り、見事敵国を守り抜いた主人公。
敵国の王は感謝のしるしに、王座を譲る事を宣言するが、主人公はそれを断り替わりに、ある提案をする。

一つの国に二人の王が君臨した。それは前代未聞の出来事であった。だが目には見えない互いへの信頼を、二国の王達はそれぞれその身に宿していた。やがて二国は、二人の王の力により、一つの大きな国となる。
敵国の王女様は、主君である王様と恋に落ち結婚した。最強騎士は、失恋するも、その身を捧げいつまでも彼等を愛し、支えることを王座の前で跪き誓うのであった。

王国物語 end


ENDページを読み終え、俺は凝り固まった肩を伸ばす。
窓の外はいつの間にか暗くなっていて、
夢中になりすぎだなと呆れたため息をついた。


「ふぅ、こういう終わり方なんだ。意外。でもやっぱり‥最強騎士は哀れだよね‥。誓いも全部捨てて彼女を奪っちゃえば良かったのに。あの子はこんなキャラのどこが好きなんだか。‥



え?」

俺、今

誰のことを言ったの‥?
思い出そうとすると、ズキリと痛む頭。


「ゔ、若くしてボケたとか‥?
王国物語が好きなやつとか周りに居たっけ?
‥まぁ、いいや。
えっとあとがき、は‥っと?」



あれ?これって‥
アナザーストーリー?

ENDの次のページをめくると、【余談】と書かれた題名。

俺はページを進めていく。


道化師と出会う最強騎士。
最初はあまりにも節操が無いことに嫌悪を抱くが、彼を知っていく上で、いつの間にか他の感情を抱くようになる。
そして道化師もまた、愛に真っ直ぐな最強騎士と自らを重ねて‥



「な、なんだよこれ‥。」


俺は急いで本を閉じる。
王国物語って‥男色も書いちゃうんだ‥
し、しかも、道化師と最強騎士が‥そんな‥。

赤くなっていく顔。
でも続きが気になって、そっとまた本を開いた。





〃愛に敗れたお前。酒に頼り、俺のような者の前でしか泣くことさえ出来ない不器用で哀れなお前。
探しても巡り合えないのに、気づけば目の前に押し寄せてきた。強引で真っ直ぐでいけすかないお前が、いつの間にか心に住みついている。どうしてくれる、責任を取ってくれ。お前が他の者と話すたび、触れるたびに、俺はどうにかなってしまいそうだ。

ああ、そうか‥
俺はお前を‥愛してしまったのだ。〃



「強引で‥真っ直ぐで‥いけすかない‥か。」



ーーリオンさんっ、好きです!!

ふいに、
頭に浮かぶ男の顔。

いつも強引に俺を連れ回して、
真っ直ぐに想いを告げてくる。
ほんっと‥いけすかないやつ‥


「っ、、何馬鹿なことッ。」


火照る顔。
俺はすぐさま本を閉じて、布団を被った。
くそ‥なんでアイツが出てくるんだよ‥、もう寝よう‥きっと疲れてるんだ。


俺は目を閉じる。
次第にぼんやりする意識。
やはり長時間真剣に読み続けていたせいか、
かなり疲れていたようで、


そのまま俺は深い眠りに落ちた。




ーー
『好きだ‥心の底から、愛してる。』


誰かが俺にそう告げる。
あぁ、このセリフ‥最強騎士の‥。
じゃあ俺は‥道化師‥?

フワフワする意識の中で、
俺は嬉しくなって、その男に擦り寄る。

『俺もだ‥俺もっ、お前をっ‥んッーー!?』

彼に強引に顎を掴まれ、口付けられて‥。

まるで、答えを最初から知っていたかのように、ぎゅっと抱きしめられた。
そして、
触れる唇は、泣けてくるほど優しくて‥。
彼の顔が見たくなった俺は、そっと閉じていた瞳を開く。


月光に反射する真っ白な髪。
俺よりも高い背に、宝石のような赤い瞳ーーー

スッと細められるその瞳に、


俺は固まった。


『ッ?!?!』


ーー

「うわああああッ!?!?」


目が覚めた途端、大きな叫び声をあげる。

ど、どうしてアイツがッ!?!?


窓の外は明るく、朝魔鳥がチュンチュンと鳴いていて、
俺は先ほどの夢に頭を抱えた。


夢にまで出てこないでよ‥ほんと、心臓に悪い。
てか、俺もなんでこんな夢を‥。

ふと、ベッドの横の机に置いてある王国物語に視線がいく。
王国物語のくせにっラブシーンをあんなにッ、濃厚に書くからっ、


ドキドキと高鳴りをやめない胸を押さえつける。
静まれ、静まれ‥変な夢見るし、相手はアレだし‥。もう最悪ッ



アイツともう絶対喋ってやんないッ




そう決めた朝。


そう決めたはずなのに‥

「あーんッ!」

「美味しいですか?」



‥なんでこうなってるの‥。


真っ白な髪に細められた赤い瞳が俺を嬉しそうに見つめる。
あぁこの唇が俺を‥

そんな事ばかり考えていたら、いつの間にかお昼を一緒に食べていて‥
何してんだよ俺‥しっかり断らないと‥。
はぁ、やっぱりあの夢のせいだ。

俺の口元に触れる奴の手。

「ーー、」

何か言っているけど、全く頭に入ってこない。
唇ばかりに目がいく。
やばい‥この唇に‥あの夢みたいに‥触れたらどうなるんだろう‥。

「俺だって傷つくんですよ。」

ふいにそんな言葉を言われて、
何故か焦った俺は、瞬時に言い返す。

「ッ、だけど、そんな俺が好きなんでしょ?」

目を見開いてから、照れたように頬を赤くする奴。
その細められた瞳が、あの夢と重なって‥
ゴクリと喉が鳴った。


コイツ‥俺が、好きなんだし‥少しぐらい‥

味見したって‥構わないよね‥?



そっと、伸ばそうとした腕。




刹那、背後から音がして、
その人物に、俺は伸ばしかけた腕を後悔した。


「おい、そこで何をしているリオンーーー」


ファイッ‥。
俺、何やってるんだよ馬鹿ッ。


必死に思考を振り払う。


コイツは、ファイが嫌ってる貧乏人だから、
関わったら駄目だ。
うざくて、人の話を聞かないし、

それにっ


ーーエル・クレヨンはお前の敵だーーー

ふいに頭の中でそんな声が響いた気がした。
その瞬間、沸き出す増悪。


俺はコイツが大嫌いだーー。


だから、今すぐコイツを傷つけてやるーー。




リオン side endーー
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