悪役令息の取り巻きに転生した俺乙

第3章

下克上ってもはやヤンキー漫画

「‥。」

「ふっ、グスッ‥ご、ごめ、俺、‥」

言葉を失う俺氏。
それが不安だったのか、また勢いを増す水量。先程からこそこそと聞こえてくるんだよな。いじめか？いや、あれは別れ話だろ？的なやつぇ‥。


「ッ～、こっち来て！」


これデジャブ‥
彼の腕を引いて校舎裏へと歩き出す。
登校してきた生徒が何事かと俺達をガン見する。
ガン見はやめろ。せめてチラチラにしろ。

ああ、授業サボっちゃった‥
ルーのサボりを誤魔化さないといけなかったのに‥。俺までサボったら、意味ないじゃん‥。

こんな子ほっとけばいいのに。
俺って、人の涙に弱い気がする‥。


とりあえず、いつものベンチに主人公くんを座らせる。

「ほら、座って‥」

「う、ん‥ごめん‥エルの方が‥辛いのに俺‥」

「俺の事好きなら君も‥」

辛いはず‥って自意識過剰だね俺。

俺はちらりと彼を盗み見る。
腫れた目。こぼれ落ちる涙はルーとは少し違って。
だけど、ルーと同じ優しい色。


「っ！‥へへ‥やっぱり‥エルは優しいよ‥」

「ッ、そういうの‥恥ずかしいからさ‥」

やめてよ‥すぐ顔が赤くなるんだ。
かっこ悪いから嫌だ。

「ルーも勿体無いよな‥エルみたいな人に愛されるなんて羨ましい」

「‥そんな事ない。ルーなんかに俺は釣り合わないし、」

「じゃあ俺は？エルと釣り合う？」

「‥君は‥」


主人公じゃん‥釣り合うどころか‥天秤にすらかけられないってば

「なあ？どうだ‥？」

「‥絶対ダメ」

「なっ！じゃあエルはどんな人なら釣り合うんだよ！」

「どんな人‥そうだな、小さな村の、大人しそうな村娘とか‥？」

「‥どういう基準なんだよ‥。じゃあ俺が村の若者になれば、その、れ、恋愛対象として、見てくれるんだな！」

「え、いや‥君が村人になれば、村人初の勇者とかに認定されそう‥。そしたらまた無理になるし、」

「あ～もう！どうしたらエルの隣に並べるんだよッ」

「えっと、不可能‥？」

「ッ！！分かった。エルが、こちら側に来ればいいんだ。」

「‥はい？」

「そしたら、エルのこだわる釣り合いとやらの壁も無くなるだろ？」


そ、それって、俺がモブからメインにランクアップしろって事？！

「いや、無理無理！」

下克上とかマジ勘弁。
ましてや、その1くんやその2くんのような魅力がない俺がメインだなんてとんでもないっての！

いつの間にか泣き止んで、やる気に満ちた顔になる主人公くん。
ってか、気づけば普通に会話してるし俺達‥。恐ろしいコミ力
だれか彼を止めてくださいヘルプミー。