希望を歌う悪の姫

花村 ネズリ

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変わらぬ日々

葬い

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「はじまる ものがたり あたらしいせかい
きたいしてた せなかのつばさひろげ とびたてることを‥」


悲しいときは歌う。
苦しいときは踊る。

話し相手は居ないから、
ずっとこうして生きてきた。



治癒の舞。
わたしにはそれだけ。

必要とされるのは、わたくしではなく、いつもこの能力だった。

わたくしは、ただの器。

からっぽの器。


どうしてわたくしにお友達が出来ないのか、
分かっていますわ。
自分が普通ではない事も。
そして、皆から慕われる特別でもない事を。

それでも、
笑っていれば、明るくいれば、
いつか誰かが、わたくしを受け入れてくれるとそう信じていましたのに‥


、現実は甘くはありませんわね。


癒しの魔法‥


このわたくしの心の苦しみも痛みも、全て消してくれたら‥


嫌ですわ。私ったら、
また暗く‥。
こんなんじゃいつまで経っても変わることなどできませんわね‥。




キュ‥


「っ!?」

突然茂みから、ツキノウサギが現れる。
白い毛並みが、赤く染まるほど出血していて、もう長くはないだろう。

「怪我しているの?
大丈夫よ、私が治してあげる。」



キュ、キュ‥


ツキノウサギを抱き上げようとしたその時、
小さく、否定の感情が伝わった。


生きたく、ないのね。

「‥っ、そう‥もういいのね。わかったわ。
なら、最後に私が側にいますわ。そして貴方を、葬いましょう。せめて苦しまずに逝けるように。」



私は命尽きようとする小さな命を抱き締めて、赤ん坊をあやすように優しく舞う。

口ずさむ歌は魔法呪文で、
舞う身体で魔法陣を展開する。

だけど、治癒の魔法とは違う。
これは葬いの歌だ。



「いのちのほのおよ おわりとはじまりのうたを



葬いの舞」


キュゥ‥。‥‥

ぽうっと輝いたツキノウサギの身体が、
小さく小さく輝きながら、その光を消していく。

見えたのは、
山狼に喰い殺される家族の姿。
夫に子供達‥
暖かい家族が、一瞬で冷たくなる。


そう、貴方だけ逃げ延びたのですね。
でも、もう独りぼっちは‥

家族の元へ行きたいのね。


ああ、生命の叫ぶ音が消えていく。
静かに、静かに‥消えていく‥。


「さようなら、そしてまた出会いましょう。いつかどこかで‥」


その姿を炎に変えて、淡く空へ舞う命を
見つめた。



「その魔法に、クローリー家‥
お前、5年前アルベルトを治した踊り子か‥?」

「‥っ!?リカルド様?」


突然背後に現れたリカルド様に驚く。
何故ここに‥?





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