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常に出生率2.5以上をキープしている今では考えられないが、女性が激減して1.0さえ危うくなった時代の遺物だ。
人口減少に歯止めをかけるため、伝承を読み解き試行錯誤を重ね、ある薬師が伝説のΩを作る薬を発明した。
ある条件をクリアすれば、服用した男性の身体をΩに変え、女性であれば過剰なホルモンの変化に耐え切れず即死する薬。
副作用の一つに強い催淫性があるから、そこから性ドラッグ=Ωの隠語が生まれたとされている。
それ自体遥か昔のことだが、女性比率が持ち直した後も薬師の一族は伝承のために毎年調剤してとある神社に奉納している。
奉納した薬は、一定期間が過ぎると神社の脇を流れる川に流される。
全てが神社奥宮で行われる影の祭事だったのだが。
盗まれたのが五年前。
奉納の責任者が、叔父さんの曽祖父にあたる薬師本家の当主。
薬師一族の失態に、末裔にぶら下がる分家の叔父さんや俺まで表には出ない『オメガバース』盗難事件の後始末に駆り出されている。
副作用は催淫性以外にも、人によって酷い幻覚症状が出るらしく殺人事件や死人が既に出ている。
虚ろなこの少女は生きているから、『オメガバース』を直接飲んでいないようだが⋯触れたか、香として燃やした煙に当たったか。
近い場所にあるようだ。
平静を装い、「また来ます」とそのビルから出たものの、初めて本物の『オメガバース』に当たり内心は興奮のあまり沸き立ち、足が宙に浮いているような心地だった。
叔父さんの特命であちこち嗅ぎ回ってきたが、どれもただの性ドラッグ止まり。
本家の恥など知ったことかと突っぱねるには、『オメガバース』の薬効も副作用も見過ごせ無かった。
自分の担当地域でもドラッグ汚染が進んでいるし、泣いている両親の前で幻覚相手に暴れる子どもを羽交い締めにしたこともある。
『オメガバース』は地下に潜り、同じようにどこかで日常を汚染しているんだからな。
ただ、どこに流されたかわからない薬を追ったとして、本当に自分が探しだせるとは思っていなかった。
アレは、本家で嗅がされた強烈な匂いと同じ。
間違いなく、本物の『オメガバース』。
改めて実感すると、武者震いで手が震えた。
五年前の盗難事件直後。
問答無用で本家から呼び出され、薬師一族の特性である嗅覚の鋭さ、『オメガバース』の最大の特徴である匂い判別の適性検査に合格してしまった。
それから、本職の警察官と並行して叔父の刑事部長の下で調査に当たるよう指示はされたものの、正直、分家の分家の分家くらい離れているから近い親戚に薬剤師さえいない。
何百人と駆り出された調査員の中でも、首位を争うくらい薬師一族の自覚は正直無いが、一度服用すれば死ぬか番うまで抜けない危険な『オメガバース』を見過ごすことは出来ない。
叔父も気持ちは同じ。
Ωと名がつく事件、関連の可能性がある情報を入手すると警察在籍の従兄弟や自分に特命として回してくる。
人口減少に歯止めをかけるため、伝承を読み解き試行錯誤を重ね、ある薬師が伝説のΩを作る薬を発明した。
ある条件をクリアすれば、服用した男性の身体をΩに変え、女性であれば過剰なホルモンの変化に耐え切れず即死する薬。
副作用の一つに強い催淫性があるから、そこから性ドラッグ=Ωの隠語が生まれたとされている。
それ自体遥か昔のことだが、女性比率が持ち直した後も薬師の一族は伝承のために毎年調剤してとある神社に奉納している。
奉納した薬は、一定期間が過ぎると神社の脇を流れる川に流される。
全てが神社奥宮で行われる影の祭事だったのだが。
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奉納の責任者が、叔父さんの曽祖父にあたる薬師本家の当主。
薬師一族の失態に、末裔にぶら下がる分家の叔父さんや俺まで表には出ない『オメガバース』盗難事件の後始末に駆り出されている。
副作用は催淫性以外にも、人によって酷い幻覚症状が出るらしく殺人事件や死人が既に出ている。
虚ろなこの少女は生きているから、『オメガバース』を直接飲んでいないようだが⋯触れたか、香として燃やした煙に当たったか。
近い場所にあるようだ。
平静を装い、「また来ます」とそのビルから出たものの、初めて本物の『オメガバース』に当たり内心は興奮のあまり沸き立ち、足が宙に浮いているような心地だった。
叔父さんの特命であちこち嗅ぎ回ってきたが、どれもただの性ドラッグ止まり。
本家の恥など知ったことかと突っぱねるには、『オメガバース』の薬効も副作用も見過ごせ無かった。
自分の担当地域でもドラッグ汚染が進んでいるし、泣いている両親の前で幻覚相手に暴れる子どもを羽交い締めにしたこともある。
『オメガバース』は地下に潜り、同じようにどこかで日常を汚染しているんだからな。
ただ、どこに流されたかわからない薬を追ったとして、本当に自分が探しだせるとは思っていなかった。
アレは、本家で嗅がされた強烈な匂いと同じ。
間違いなく、本物の『オメガバース』。
改めて実感すると、武者震いで手が震えた。
五年前の盗難事件直後。
問答無用で本家から呼び出され、薬師一族の特性である嗅覚の鋭さ、『オメガバース』の最大の特徴である匂い判別の適性検査に合格してしまった。
それから、本職の警察官と並行して叔父の刑事部長の下で調査に当たるよう指示はされたものの、正直、分家の分家の分家くらい離れているから近い親戚に薬剤師さえいない。
何百人と駆り出された調査員の中でも、首位を争うくらい薬師一族の自覚は正直無いが、一度服用すれば死ぬか番うまで抜けない危険な『オメガバース』を見過ごすことは出来ない。
叔父も気持ちは同じ。
Ωと名がつく事件、関連の可能性がある情報を入手すると警察在籍の従兄弟や自分に特命として回してくる。
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