上 下
910 / 911
38 記憶 side 陸

20

しおりを挟む
替えのシーツを手に寝室まで移動すると、まずは二人でベッドメイキングをした。
渡は、始終そわそわと落ち着かず、緊張にゴクリと生唾を飲み込んだり、赤くなったり、なんにもねぇ床で躓いたり。
不慣れな様子に、つい笑みがこぼれちまうな。

それに気付いた渡は、むぅと顔を顰めポコポコ背中を拳で叩いて来た。


「もぉ、笑わんといてぇな。
陸ばっか、余裕あり過ぎや」

「あほ、余裕なんかあるか」


振り返ってその手首を捉え、俺の胸に渡の耳がつくよう抱き寄せた。
響いた鼓動の速さに驚いたらしく、息を呑む渡に苦笑い。
俺にどんなイメージ持ってんのか知らねーが、お前相手に余裕があるかよ。

すげぇ大切に抱いて、発情と無関係なときでも女相手より俺の方が良いと思えるくれぇ身体に教え込んでやるつもりでいたつーのに。
渡を前にすると、自分の欲望が勝っちまう。
んな状態なのに、意識が飛ばねぇ発情期前にヤって記憶に残したい、とか。

・・・あの日の記憶を取り戻せねぇのは、それだけ渡に無理をさせて辛かったからだとこっちは思わずにはいられねぇのに。


「お、俺やから?」


顔を上げた渡の顔は、緊張がきれぇさっぱり拭いさられキラキラ期待に満ちていた。
あ"ーもー、本当にお前って天使はっ


「当たり前だろ、アホ」


唇を重ね、身を任せてきた渡の腰に手を回して口内を舌で弄り唾液を吸い上げる。
口に含んだ唾液の甘味に、簡単に下半身に火がつき勃ち上がっていた。
義務として抱いていたときと、えらい違いだな。
自分の身体の正直さに嗤っちまうわ。

服の裾から手を入れ、背中を指で撫であげ掌でしっとり汗ばんだ肌を持ち上げもっと深くまで舌を潜らせる。
舌の付け根を擦り、息継ぎしようと開いた唇を逃さず追い掛け塞いだ。
覚束ないながらも応えようとする舌の動き、クチュクチュ身体の内側から響く水音に興奮が高まる。
飲み込めずに溢れた唾液が、唇の隙間から流れていた。

伸びた牙が渡の下唇に触れ、柔らかな抗えない肉の感触にズブズブこのまま差し込み引きちぎりたくなる。
色欲と食欲が直結する血の危険な予兆に、ブルッと身を震わせていた。
食ってしまいたいと思ったことはあるが、ここまでリアルな『食欲』を実感したのは初めてだ。

なのに、その感情を気持ち悪いと忌諱するよりも、引きちぎった渡の肉を丁寧に咀嚼し飲み込みてぇと渇望する飢餓の芽生えに完勃ちどころかダラダラと先走りが止まらねぇ。
濡れて張り付いてくる下着の感触に、顔を顰める。
食らいつきてぇと湧き上がる欲が抑えきれねぇ。

ここまでやべぇのかよ⋯

渡から身体を離し、深呼吸。
あぁ、こんなもんじゃ収まらねぇわ。
親父含め、番相手を食べたくなるほど可愛いと親戚がよく言ってたが。
あれは、こうなったことがある経験からだったのかもな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

アキノワルツ ~親友へ決死の告白をした高校生男子・真島くんのその後~

カノカヤオ
BL
『ナツノヒカリ~親友への片思いをこじらせる高校生男子・真島くんのひと夏の物語~』続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/114322914/596749084 「灰谷、オレ、オマエが好きだ。好きなんだ。どうしようもなく、好きで好きでたまらないんだ」 長年の思いをやっとのことで口にした真島。 今までと変わらないようで、でも少しだけ違う微妙な距離感になった真島と灰谷。 バイト先の後輩・友樹はやたらと真島になついてきて……。 二人の悪友・中田と佐藤にもそれぞれ変化が訪れる……。

貧乏Ωの憧れの人

ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。 エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

純情将軍は第八王子を所望します

七瀬京
BL
隣国との戦で活躍した将軍・アーセールは、戦功の報償として(手違いで)第八王子・ルーウェを所望した。 かつて、アーセールはルーウェの言葉で救われており、ずっと、ルーウェの言葉を護符のようにして過ごしてきた。 一度、話がしたかっただけ……。 けれど、虐げられて育ったルーウェは、アーセールのことなど覚えて居らず、婚礼の夜、酷く怯えて居た……。 純情将軍×虐げられ王子の癒し愛

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...