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38 記憶 side 陸

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替えのシーツを手に寝室まで移動すると、まずは二人でベッドメイキングをした。
渡は、始終そわそわと落ち着かず、緊張にゴクリと生唾を飲み込んだり、赤くなったり、なんにもねぇ床で躓いたり。
不慣れな様子に、つい笑みがこぼれちまうな。

それに気付いた渡は、むぅと顔を顰めポコポコ背中を拳で叩いて来た。


「もぉ、笑わんといてぇな。
陸ばっか、余裕あり過ぎや」

「あほ、余裕なんかあるか」


振り返ってその手首を捉え、俺の胸に渡の耳がつくよう抱き寄せた。
響いた鼓動の速さに驚いたらしく、息を呑む渡に苦笑い。
俺にどんなイメージ持ってんのか知らねーが、お前相手に余裕があるかよ。

すげぇ大切に抱いて、発情と無関係なときでも女相手より俺の方が良いと思えるくれぇ身体に教え込んでやるつもりでいたつーのに。
渡を前にすると、自分の欲望が勝っちまう。
んな状態なのに、意識が飛ばねぇ発情期前にヤって記憶に残したい、とか。

・・・あの日の記憶を取り戻せねぇのは、それだけ渡に無理をさせて辛かったからだとこっちは思わずにはいられねぇのに。


「お、俺やから?」


顔を上げた渡の顔は、緊張がきれぇさっぱり拭いさられキラキラ期待に満ちていた。
あ"ーもー、本当にお前って天使はっ


「当たり前だろ、アホ」


唇を重ね、身を任せてきた渡の腰に手を回して口内を舌で弄り唾液を吸い上げる。
口に含んだ唾液の甘味に、簡単に下半身に火がつき勃ち上がっていた。
義務として抱いていたときと、えらい違いだな。
自分の身体の正直さに嗤っちまうわ。

服の裾から手を入れ、背中を指で撫であげ掌でしっとり汗ばんだ肌を持ち上げもっと深くまで舌を潜らせる。
舌の付け根を擦り、息継ぎしようと開いた唇を逃さず追い掛け塞いだ。
覚束ないながらも応えようとする舌の動き、クチュクチュ身体の内側から響く水音に興奮が高まる。
飲み込めずに溢れた唾液が、唇の隙間から流れていた。

伸びた牙が渡の下唇に触れ、柔らかな抗えない肉の感触にズブズブこのまま差し込み引きちぎりたくなる。
色欲と食欲が直結する血の危険な予兆に、ブルッと身を震わせていた。
食ってしまいたいと思ったことはあるが、ここまでリアルな『食欲』を実感したのは初めてだ。

なのに、その感情を気持ち悪いと忌諱するよりも、引きちぎった渡の肉を丁寧に咀嚼し飲み込みてぇと渇望する飢餓の芽生えに完勃ちどころかダラダラと先走りが止まらねぇ。
濡れて張り付いてくる下着の感触に、顔を顰める。
食らいつきてぇと湧き上がる欲が抑えきれねぇ。

ここまでやべぇのかよ⋯

渡から身体を離し、深呼吸。
あぁ、こんなもんじゃ収まらねぇわ。
親父含め、番相手を食べたくなるほど可愛いと親戚がよく言ってたが。
あれは、こうなったことがある経験からだったのかもな。
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