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38 記憶 side 陸

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食器を棚から出し、リビングのローテーブルに並べてそこに出来たもんから盛っていった。
唐揚げ、餃子、肉団子、肉じゃが、ロールキャベツ、オニオンリング、フライドポテト、白身魚のフライ、ぶり大根、ポトフ、味噌汁、だし巻き卵・・・揚げ物専用の鍋に大小2つの両手鍋、フライパンを交互に使っての三ツ口コンロだとこんなともんだな。
統一性もねぇが、あとはサラダと渡が起きてきたら秋刀魚を焼けば良いか。
あぁ、大根おろしも作っとかねぇと。

サラダを盛り付け、大根をおろし終わり、オーブンに切り込みを入れた秋刀魚を準備。
冷めた油をポットに移し終えると、キッチンには洗い残した物も無く片付けが完了する。
そろそろ起こしに行くかと壁掛け時計を見ると、七時を過ぎていた。
足が寝室に向かうより先に、扉が開いてそこから上下ジャージの渡が走り寄ってきたので、オーブンを操作し秋刀魚を自動で焼き始める。


「うわぁーっ
めっちゃ良い匂いするって起きたら、なんなんっ、なんなんっ
朝からめっちゃ豪勢、ホテルのビュッフェやんっっ」


起き抜けとは思えねぇくれぇ料理に目を輝かせ、パチパチ拍手までされると自然と頬が緩む。
あんだけ泣かしてんのに、笑顔を見せて側にいる渡の存在がデカ過ぎて胸が詰まるな。
こんな日が送れることに、俺は絶対に慣れちゃいけねぇ。

あぁ、もしかすると、親父が凝りもせず千里さんにちょっかいかけてんのは、日常の有難みを実感してたからなのかもしれねえな。
千里さんといるから出来るやり取りが嬉しいんだろう。
竹刀片手に追い回されても、親父は心底楽しんでるもんな。
千里さんは良い迷惑だろうが。

本当、渡じゃなけりゃ、ここでこんな風に過ごせてねぇわ。


「あっ、わかった!
アレやろ?
昨日ぎょーさん貰ったから、そのお礼に持ってく分も作ってくれたんやな。
俺、全然そこまで頭回らへんかったわぁ」


渡はそう言って、「流石陸やなぁ」と感じ入った様子でニコニコと笑いかけてくる。
いや、それこそ俺も頭に無ぇわ。
元から礼をする気もなかったしな。
思わず苦笑いしちまう。


「ちげぇよ。
これは、作り置きだ。
毎回作ってたら時間が掛かるしな。
そろそろ来そうな発情期の前に、ヤるって」

「うひゃぁっ」


ドカンと効果音が出そうなくらい、言葉の途中で渡の顔が赤くなり奇声が上がる。
あ"?
ヤんねぇのか?
俺が首を傾げると、陸はわざわざ俺の後ろに回って背中に抱きついてきた。


「あーあーあーっっ」

「おい、どうした?」


顔を見ようと身を捩っても、渡は俺の背に顔を押し付け見せようとしない。
怖気づいたって言われたところで、全然責める気はこっちにゃねぇぜ?
落ち着くまで暫く待っていたら、渡はグリグリ背中に頭を擦りつけてから腕を解き、すぐに両手で顔を隠したあとに困り果てた声でホロホロと言葉を零した。


「はぁ、ほんまにほんまに陸に抱かれるんやなぁって思ったら、頭ん中そればっかでパンパンになってしもて、声出してんと破裂するとこやったわぁ・・・」


困っているけど、困ってない。
声音に色づく期待と歓喜と欲望を感じ、ブルッと身震い。
俺は、その場で渡の膝をすくい横抱きに持ち上げた。
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