ヘタレαにつかまりまして ２

37 牙 side 渡

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株元さんが住んでる家に着くと、外でおばあちゃんらと談笑していた株元さんが手招きしてくれた。
そっから輪に入ってな。
いただいたおかずのお礼とレシピを教えてもろて、籠に小分けされてた持ち寄りお野菜セットを貰えてん。
陸はちょっと離れたとこで待ってくれてた。

ここに住んでると皆助け合うのが当たり前で、よそのおかずをいただくのもその楽しみの一つなんやて。
ここで暮らしてると新しいこと覚えたり、友達が増えたり、活き活き毎日張り合いがある。
「渡ちゃんも楽しんでね」って言われて、めっちゃ元気に返事した。
もう既に楽しいもん。
陸と一緒やし、おばあちゃん達も株元さんも皆優しい。

卵も産みたてだから美味しいよって籠に入れられてな。
小麦粉やら砂糖はキッチンにあったから、あとはベーキングパウダーさえあればシンプルにホットケーキ作るのもえぇなぁって話しててん。
そしたら、おばあちゃんの一人が家まで取りに帰ってくれて、自家製蜂蜜までくれた！
ここに来るまで養蜂してたんやて。
蓮華に蒲公英にバラ。
小瓶に詰められた蜂蜜にはラベルが貼ってあって、色もそれぞれ違う。
お昼はホットケーキやなって陸に言うたら、ニコッてされた。

陸がなにしても格好良くてメロメロになってる俺は、はにゃーんって熱くなったほっぺ押さえて身を捩る。
おばちゃんも株元さんも、ここになんで俺らが来てるのか知らへんけどな。
俺の反応と目立つうなじに視線がチラチラ。
察しても口に出さんと、ニコニコされてしもた。

言うても、陸に噛まれたうなじは丸出しやないねんで。
番になれる発情期以外に噛んだ傷口は、怪我と一緒。
後から膿んでくるかもしれへんからって、昨日の夜に陸が救急箱の消毒液とバンドエイドで処置してくれた。　
血はな。
あれから陸が先に出て、俺もシャワーだけしてリビングに戻ったらほぼほぼ止まってたらしい。
朝に剥がそうとしたら、陸にあかんって言われてまた新しいのを貼られてんけどな。
うなじに触れられると、モジモジ、照れてしもて恥ずかしい。

急に噛まれたときは、痛いしビックリしたしで暴れてしもたけど、これって陸も俺と番になる練習したってことやんな。
それに、それに、その後で陸の指が・・・ぞわぞわぞわッ
思い出しただけで、お尻から背中にかけて肌が粟立つ。
あんなん、不意打ちやわぁ。
自分のやったらあんな感じにならへんかったのに。

ポンッ


「え、何？」


頭に手を乗っけられ、陸を見たら平らな目で見返された。
あれ、何してる途中やったっけ？
キョロキョロしたら、前には洗濯機と株元さん。
そやった！そやった！
洗濯機の使い方を習ってたんや。

注意散漫な俺に、二人とも苦笑い。
ちゃんと聞いてへんのは申し訳なかったんやけど、しゃーないやん。
ついつい昨日のこと、思い出してしまうねんもん。