ヘタレαにつかまりまして ２

34 準備 side 陸

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千里さんは、変異種Ωにされた側。
学園祭翌日の日曜日。
実家で作り手不在の昼食を囲んで、思い出話を千里さんと頼子さんと道成さんが三人で始めていたが。
出るわ、出るわ、俺の知らねぇ水面下の暴露話。

千里さんは、頼子さんから同じ茅野学園高等部に通わせたいのであちらに特殊事情を話すことになるが良いかと定期連絡の手紙にさらりと書いてよこされたらしい。

二年前のこの時点で、まず絶句。

何度も手紙を読み直し、理解不可能な内容に戸惑いながらも、千里さんらしく、迷惑をかけている側なのでこちらから学園に連絡すると返信しつつ、入学するのは止めたほうが良いと説得を試みこのあと定期連絡の度に切々と訴えていたんだと。

そういや、千里さん。
俺が、菊川達と一緒に茅野学園を進路先に選んでからえらい不機嫌になっていたっけ。
アレは、俺が千里さんの母校を選ばなかったからじゃなかったってことか。

千里さんの、恐らく説得力に満ちた手紙がスルーされて今に至っているのはすげぇよな。
俺と渡に接点があることを気づかれねぇ為とはいえ、両家が電話や直接会うことを避けてきたおかげだ。
千里さんを直接相手にしたら、頼子さんも道成さんもきっと考え直していた筈。
なにせ、千里さんは理屈っぽいとこがあるし、αの気質や能力はそのままだからな。
β相手に熱弁をふるえば、考えを変えることなんざイチコロだろう。

まぁ、緊急事態だってことで、ルールを変えて直接会いに行かない臨機応変のなさは千里さんらしいっちゃ、らしいが。
そのとき、千里さんは親父にも相談してんだよな。

自分と同じ呪われてる血を引く息子のさ。
『自分のΩを手に入れるチャンス』が、向こうから来るんだぜ？
いくら千里さん相手でも、親父がアドバイスになるようなこと言うわけねぇのに。

まぁ、どんな話を聞いたところで、俺に黙ったまま動いていた両家の親に怒りなんて湧くはずがねぇ。
俺は、渡が相槌を打ちながら目を輝かせて聞き入ってんのを眺め、親父の作った飯を黙って食べていた。
結果オーライってことでもねぇけど、もしも知っていたらとか今更過去のことを考えてもなんにもならねぇし。
考えなきゃならねぇことは、別にある。

頼子さんが、茅野学園の案内書をわざわざ請求して息子をこっちに差し出す手助けまでしてんのには流石に俺も驚いたな。
寧ろ、俺の最大の障害は千里さんだったこと、いや番になるまでは続いてそうなのが頭がいてぇわ。
千里さんのことだ。
今も、渡に変異種Ωの先輩としていろんな話をしてんだろう。
余計なことまで言って、渡を怖がらせてねぇと良いけどな。

まぁ、親父と番って子どもを産んでも、未だに変異種Ωにされたことは奥底で燻ってるのかもな。
千里さんの実家は、α家系のえらく厳しいとこだったらしく、変異種Ωになったとわかった途端に縁切りされて追い出されてる。
それが、俺のときは番になること前提で両家で仲良く昼食だぜ？

あー、三枝家には感謝しかねぇ。
っーか、帰りてぇ。