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33 挨拶

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「その優秀な鼻がある笹部には、いつから周りに影響を及ぼすかまでわかっているというのか??」

「そこまでは・・・」

「待って、待って、かなちゃん。
あんな、あんな、ほんまは今日から俺は休んで番になるまで登校せんほうがえぇって千里さんから言われててん。
せやけど、ずーっと終わりがわからへんのに急に学園祭明けから休むことになったら、みんなに心配かけるし変な噂が立つかもしれへんしって陸が気をつこてな。
今日だけ一緒に登校しようって言ってくれてんっっ」


笹部の後ろから顔を出し、三枝は「俺のせいやから」と訴えてくる。
が、そもそも事の発端は全て笹部が三枝を変異種Ωにしたことだ。
三枝にそこまで言われると、俺もこれ以上責めにくい。
こちらは笹部を責めているつもりでも、三枝はきっと発情フェロモンを撒き散らす可能性があるのに登校している自分のせいだと感じてしまうだろう。
俺は感情を押し殺して笹部を見た。


「・・・もし、途中で発情フェロモンが強くなったらどうするつもりなんだ?」

「そのときは、俺が点鼻薬で自分の嗅覚を麻痺させて抱えてここにでも連れ込む・・・つもりだったが、あのクソジジィ、渡のクラス替えを拒否しやがった」


笹部がマスクをしていても、その下で容易に歯軋りをしているのがわかる。
三枝に椅子に座って落ち着くよう促され、渋々従っているが。
三枝がいなければその椅子を蹴飛ばしそうだな。
激情にかられている笹部は、相手にするだけ時間の無駄だ。


「どういうことだ、三枝?」

「えっと、学年途中で番になったΩの生徒は、αの生徒のクラスにすぐに変わるって決まりがあるんやろ?
陸は、それを早めてな。
今日から俺を三組にしてもろて、一日発情フェロモンを見張っておこうって思っててんて」

「・・・三枝が変異種ということは伏せたとして、この番避けをしたまま実はフリーなΩだということをバラして手元で保護するつもりだったのか?」


なんだ、その計画は。
三枝の身に危険が及ぶ可能性が高いだろうが。


「それとも、噛み跡をつけて番を偽装するつもりだったか?
発情フェロモンを周りのαに感知され、万一噛まれて取り返しがつかないことになるのは三枝だぞ」


俺の蔑む眼差しに、笹部はフィッと目線を逸らす。
俺相手に逸らすとか、よっぽど気不味いらしいな。
それもそうか。
自分の手元に置いておけば安全だと、自惚れが強いαらしい考えで突っ走ろうとしていたんだからな。
このバカは。


「わぁ、かなちゃんはやっぱり凄いなぁ。
理事長はルールはルールやって拒否しはったけど、きっとそういうの心配してはったんやろな」


俺を褒める三枝が、自分の愚かさを自覚した笹部にとどめを刺す。
笹部は机の上に突っ伏してしまった。


「それで、どうするつもりなんだ?」

「どうしたらえぇと思う?」


逆に聞き返され、俺は今すぐ帰れと即答した。
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