ヘタレαにつかまりまして ２

32 挨拶 side 渡

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二人が驚いてる隙に、俺は笹部君の前から抜け出して廊下を走った。
皆にはごめんやけど、このあと笹部君と顔なんて合わせられへん。
階段を転びそうになりながら降りてたら、足音が聞こえてきたしな。
踊り場で上を見たら、笹部君がすぐそこまで来てんのが見えてギョッとした。

えぇ？！

なんで、追いかけてきてんの？？
俺、怒らせ過ぎた？？
マスクしてるから、表情が読めへんっ


「三枝、そこで待てっ」

「い、いややわぁっっ」


顔を合わせるんも怖いし、何されるんかも怖いし、切羽詰まってる笹部君が怖いっ
そのまま階段を降りきったとこで、海ちゃんと空ちゃんが廊下をこっちに向かって歩いて来てんのが見えた。
あっちも俺が走ってきてんの見えてな。
廊下の真ん中で、二人して足を止めてん。
わー、そこ、どいてっっ


「あれあれ？
なんで逆走してるの、三枝セーンパイ？」

「んん？
ねぇねぇ、海ちゃん？
なんか、泣いてるんじゃないかな？」

「「また兄ぃと何かあったとか？？」」


顔を見合わせて、二人して同じことに思い当たったらしい。
うわー、二人ともそんなとこは当てんでえぇよっ
二人の間をすり抜けようとしたのに。


「海っ、空っ
三枝を捕まえとけっっ」

「「オッケー、兄ぃ」」


背後から、階段を降りてきた笹部君の鬼気迫る怒鳴り声に、海ちゃんと空ちゃんは軽い返事。
そやのに、俺の肩をガッチリ掴んだ手は強くて全然外れへんっっ
そんなん、三人なんて卑怯やわっ

俺、頭冷やしてからしかよぉ会えへんのにぃ。

二人を前にしててもボロボロ泣いてしもたら、海ちゃんと空ちゃんも慌ててな。
オロオロして、手の力が弱まってきてん。


「えー、ちょっ！
どうしよう、空ちゃーん」

「兄ぃ、三枝センパイ、ガン泣きで可愛そうなんだけどぉ」


笹部君が来る前に逃げたいし、「お願いやし離して」って頼んでもな。
緩むだけで、掴んだ手ぇは離してくれへん・・・
笹部君にすぐに追いつかれて、引き渡されてしもた。

笹部君に、俺の左手首を掴まれたんやけど。
とてもやないけど顔なんて見れへん。
自分の靴の先を見てるんやけど、涙は止まりそうにない。

平手、そう、笹部君に平手してしもうたし。
俺、これからどつかれる？
あのフェロモンぶつけられる？

今更、怖さが増してきた。


「助かった。
お前らは、先に言ってろ」

「先に・・・行って大丈夫？」


海ちゃんに顔を覗かれて、大丈夫やないって首を振ろうとしたんやけどな。
笹部君、「いいから行って、俺と三枝は遅れるか最悪終わってからになるからカードキーを目安箱に入れといてくれって菊川に言っとけ」って、海ちゃんの腕を引いて立たせてな。
海ちゃんと空ちゃんを先に行かしてしもてん。

あぁ、置いてかんといてぇ。