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31 学園祭 side 渡

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このロックミュージックでは、ダンスは無かってんけどな。
その分、歌に引き寄せられてた。
最後は拍手喝采。
歌い終わって肩で息してたホマレンにも、そのホマレンに肩を貸しに行った海ちゃんと空ちゃんにも。
「誉様ーーっ」「海様ーーっ」「空様ーーっ」っていろんなとこから名前を呼ぶ声が飛び交う。

でもな。
ホマレンが、反応を待ちわびてんのは一人やねん。
ジッと田栗先生を見下ろしてて、きっと、背後でなんかしはったんやろな。
こみ上げてきた緊張で強張ってたホマレンの顔が、不意にふわりと緩んだ。
あぁ、きっとホマレンの気持ちは届いたんやなぁ。
歌にも引き寄せられてたけど、この二人のやりとりでもっと胸に迫ってくるもんが生まれてくる。

近くにおるだけの俺にまで、お互いを思い合ってるのがこんなに伝わってくるなんて。
どんだけ深い繋がりがあるんやろ。
あぁ、俺も笹部君とこんなふうになれるかなぁ。
なりたいなぁ。


鳴り止まへん歓声と拍手に、ステージの三人は揃って一礼。
これで終わりなん?
そう思ったんは、俺だけやないみたい。


「「アンコールッ、アンコールッ」」


とこからともなく、声が重なって来てな。
生徒会役員の名前を次々呼んでく。
うん、うん、俺も見たいっ


「なぁなぁ、かなちゃんっ
菊川君の名前、呼ばへんの?」

「え・・・」

「俺は、笹部君の名前、呼ぶなっ」


かなちゃんに宣言してからな。
びっくりしてる横で、息を大きく吸って、もう一回見たいって気持ちを込めて名前を呼んだ。


「笹部くーんっっ」


まだ迷ってたかなちゃんの肩に自分の肩を寄せて「はよ、はよ」って急かしたらな。
かなちゃん、ギュッて目ぇとじて。


「倭人さーーんっっ」


俺より大きな声で名前を呼んだ。
ふふふ、かなちゃんももう一回見たいんやなっ
それがまるで聞こえてたんやろか。
残ってた三人の後ろから、菊川君と笹部君、松野君と竹居君が現れる。

ステージの下は、大変な騒ぎやでっ
アンコールの声が、拍手と悲鳴で聞こえへんなる。


菊川君は、ステージ中央に出て三人にマイクを通さずに声を掛けてて。
きっと、良くやったなとか、頑張ったな、やろな。
三人が、笑顔で応えてた。

菊川君は、手でアンコールと拍手を一旦やめるように示してな。
開口一番。


『予定では、これで終了宣言だったんだけど』


なんて、酷いこと言うからブーイングまで起こったわ。
それには菊川君も苦笑い。


『特に用意もしてなかったし・・・んー、何でもいい?』


これには、歓声。
うん、うん、皆素直やなぁ。
俺も、「もちろんっ」て、飛び跳ねたんやけどな。
次の言葉を聞いて、固まってしもたっっ


『奏と、三枝。
こっちに戻って来て』


えー、菊川君っ、何言うてんのぉーーー!!!
そんなめっちゃ良い笑顔で言われても、「はいっ、かしこまりました」とかよう言われへんで?
だって、流れ的に、戻ったら俺も歌うってことになるやんっっ
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