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31 学園祭 side 渡

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ホマレン、田栗先生の前やと無口になってまうけどな。
言わなあかんとこでは、ちゃん生徒に話しかけたりはしてたし、学園祭前の生徒総会でも挨拶とか説明をしてたんやで。
それやのにどうしたんやろ?
俺、声かけようかと思ってんけど。


「急ぐぞ、三枝」


かなちゃんに、ポンと軽く肩を叩かれてステージに向かって走るよう促された。


「え、でも、俺、竹居君に動いたらあかんて・・・」

「そうなのか?
俺には、さっき竹居から一緒に連れてステージに上がって来いと言われたぞ?」


え、そうなん??
でも、この人だかりの中をどうやって・・・ステージの方を向いたら、ステージ中央に向かって一本の真っ直ぐな道が出来てた。
海ちゃんと空ちゃんが、さっきの横一列だけやなくて、縦にも二列の柵を作ってくれてたみたい。
しかも、ステージ前で並べ終わるところやった。

わぁ、ほんまに何をするんやろ??
って言うか、ここ、走んの?!

めっちゃ両側から見られてステージの前まで走ったらな。
上に居た菊川君が、ステージ向かって右の階段から上がってくるように言ってくれてん。
田栗先生は、階段の下に残して三人だけ上がることになってんけど。

田栗先生の白衣から手を離したホマレンの表情が固くてな。
それ見た田栗先生は、離れたばっかりの手を握って笑いかけてあげててん。


「なーに、緊張してんだよ、誉。
俺の為に歌ってくれるんだろ?」

「・・・ハイ」


力強く頷くホマレン。
田栗先生の手を引き寄せて、その甲に口づけ。
他の人には出来ても、田栗先生には出来ないって恥ずかしがってた姿はそこには無くて。


「先生を想って、歌います」


真剣な眼差しと、洗練された動作に秘められたホマレンの熱い気持ちがこっちにまで伝わってきた。
ブワッて、見てるだけで身体が熱くなるわっ
わぁわぁ、なんて返すん?
なんて、返すん?
ついつい足止めてガン見してもうたんやけど。
田栗先生は、流石大人、めちゃ余裕。


「頑張ってこいよ」


笑顔での送り出し。
ホマレンもそれにつられて、めっちゃ可愛い笑顔やねんもんっ
もー、えぇなぁっ、えぇなぁっ


「三枝、早く来い」

「はーい」


先に上ってたかなちゃんを追いかけてステージに上がると、学園長は先に上がってて田栗先生に「ゲンゾー、うちの甥っ子をこれ以上誑かすなー」って野次ってた。
俺のときの入学式ではな。
ビシッとスーツ着て、挨拶して、偉いさんなんやなぁってイメージしか無かってんけど。
田栗先生とホマレンと一緒やと、気さくなおっちゃんみたいやわ。

俺の後からホマレンも来て、生徒会役員も勢揃い。
わっとステージの下から歓声が上がった。
ん?
麻野くんは・・・あぁ、さっき境界線作るん手伝ってくれた子らと、ステージと最前列の柵の間に空いてる特等席のスペースでキョロキョロしながら待ってたわ。

・・・ところで。

さっき、ホマレン、歌うって言ってた・・・?
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