ヘタレαにつかまりまして ２

29 学園祭

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「なぁ、なぁ、見て見て、かなちゃんっ」


更衣スペースからダンボールを押して出てきた三枝は、キラキラ瞳を輝かせ、クルリと目の前で回転してみせた。
まだウィッグもウサギの耳も着けていなかったが、早くこの衣装を俺に見せたかったらしい。

ふわりと宙に浮かんだエプロンとスカートが、風に煽られてヒラヒラと舞い上がる。
捲れた裾を目で追いながら、ついお尻のふわふわ尻尾にも目が行く。
掌サイズの丸い尻尾は、風に僅かになびき、三枝の動きと見事に一体化。
本当にそこから生えているみたいだ。
それにしても、この改良・・・


「凄いな」


スカートの裾には、ウサギとそれを追いかけるアリスの影が、まるで連射写真を並べたように黒と白と赤の3色の刺繍糸で表現されていた。
三枝が回転すると、本当に走っているように見える。
アリスの高さは5cmくらいで、周囲にトランプのマークも刺繍されている。

裾から覗くレースの量も増えている気がするぞ。
柴田と三枝の撮影を見ていた三枝担当の衣装チームが、スカートの形がどうも気になると話していたからパニエを調整したのか？
三枝が止まっても、スカートの裾はストンと落ちずにその膨らみを保っていた。
目立たないように、抑制剤を内腿に装着すると言っていたから隠すにはちょうど良いな。


「こんなんめっちゃ時間がかかるやん!
凄いなぁ」

「そのまま使っても良かったんだけどね～
アリスっぽさをもっと出したかったんだ」


メガネを掛けた女子生徒が嬉しそうに笑う。
目の下には隈が見えるが、徹夜したんだろうか。
確か、趣味でコスプレ衣装を作成しているとかで、衣装チームのリーダーだったよな。
目が合うと、「かな姫も早く着てみて」と衣装が入った紙袋を渡される。
衣装一式の中には、例の尻尾も下着が見えないように保護する布付きベルトも入っている。

受け取って、更衣スペースでごそごそ着替える。
このあとは、一旦校門にいる空と松野と合流して、二時間後に増える来校者の誘導や説明を警備員と最終確認。
それから、体育館で音響やライト調整をしている竹居と海のところに行って、開始時間前に中庭で鐘を鳴らす理事長にも挨拶に行かなければ・・・撮影不許可のキスマークシールの配布は、今年から関係者の赤も来校者の青も校門前の受付で行う。
混んだときの配布人員は足りるだろうか。
当日なのに、気になることが見つかると、次々とそれが増えて不安が大きくなるな。
他にも見落としはないだろうか。

いや、考え込むより、急いだほうが良いな。
ベルトを巻いて、下着に着けたボタンと布のボタンを嵌める。

さてと。
前撮りでは、股下3cmの際どいショートパンツだったが、ヤマと俺からもっと丈を長くして欲しいとお願いして・・・よしよし、紙袋から茶色のパンツを持ち上げると、股下15cmはありそうだ。
今はこれしかないからと押し付けられ、あのときは短すぎるショートパンツを履くしかなかった。
ポスターやパネルが、その短いバージョンのまま使われるのは恥ずかしい。

足を通し、後ろの穴から尻尾を通して布のもう片面に縫い付けられたボタンとパチンとはめる。
左右にお尻を振ってみたが、外れないし上手く留めることが出来たみたいだ。
ブラウスを内側に入れてジッパーを上げる。
1mありそうな白色の尻尾が、背後でゆらゆら揺れる度に足に触れて少しくすぐったい。