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27 学園祭準備

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屋敷で夕飯を頂き、いつも通り送迎車で東の離れへ戻る。
今、菊川家の中心は遥馬さんだ。
毎食、誰かが必ず「調子はどう?」と確認。
それに遥馬さんが答えて、健診があった日は追加で毎回同行している清人さんが診察結果を教えてくれる。
遥馬さんとそれ以外で構成されていそうな清人さんの世界は、遥馬さんの妊娠で変化しているみたいだ。
お腹の中で成長している自分の子どものことを話すとき、とても柔らかくて優しい表情をされるから。

飛鳥さんも遥馬さんのことを気にされていて、営業先で妊娠中に良いと聞いた食べ物やオイル等の雑貨を取り寄せて渡されている。
遥馬さんは勿論、清人さんもそれをありがたく受け取っているからな。
あまり仲が良くなかった姉弟のやり取りを、澪さんと陽太さん、それにヤマも嬉しそうに眺めている。

菊川家には、出産経験者が二人もいるからな。
遥馬さんも心強いと頼りにされている。
心配していたような妊娠うつにもなられていない。
もしなられたら、清人さんの精神状態まで不安定になって大変なことになるだろうと陽太さんは特に心配されていた。

妊娠がわかった時に比べたら、遥馬さんの腹部は少しずつ膨らんでいるようだけど、清人さんのデザインしたゆったりしたマタニティ服の上からでは一見わからない。
俺は、清人さんと遥馬さんにお願いして、たまに触れさせて貰っている。
今日も触れたその感触を反芻しながら、自分の平らな腹部にそっと触れる。

俺も早くヤマの子どもが欲しいな。
α家系のΩは妊娠しにくいが、そろそろ妊娠しても良いんじゃないか?
こんなにヤマに愛されているのになぁ。
結婚式がくるまでに妊娠しても全然問題ないと思っているが、その兆候は未だに俺に現れていない。

ヤマの番になるまでは、Ωとして必ず番相手のαを産まなくてはと気負っていたけど今は全くそんな気負いはない。
ヤマなら、男女バース性に囚われず妊娠しただけで喜んでくれるとわかっているのもあるけど。
遥馬さんが性別を気にする発言をされたとき、菊川家の全員が特に拘りはないとあっさり返していたんだ。
菊川家は、α女系家族。
もし、長子の飛鳥さんに女性αの子どもが生まれなくて、次子の清人さんと遥馬さんの子どもが女性αだったらどうなるのだろうか、とか。
俺はちょっと考えてしまったんだが、考えすぎだったみたいだ。
陽太さんは特に、「100%安全な妊娠も出産もないから、ハルちゃんも子どもも無事なのが一番の望みだ」とそのときも明言されていた。

陽太さんが昔いた場所では、妊娠したΩが命を落とすことが珍しくなかったんだそうだ。
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