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27 学園祭準備

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三枝は、先週、笹部とあんなことがあったばかりだからな。
かなり落ち込んでいる筈だし、今も無理をして笑っているんじゃないか?
自前の服がある芝浦と、事務所のツテでレンタルを頼むことが決まった柴田も会話に巻き込み、手が空いた女子生徒達と輪になって話している。

理由はわからないが、先週は樟葉のアイパッチ姿を見た柴田が芝浦に苛立っていたんだよな。
まぁ、今は一緒の輪に入るくらいに関係は修復しているようだが。
この二人の場合、芝浦があまり気にしてないというのもあるんだろうけれど。

それに比べて。
笹部と三枝は、なぁ。
昼休み、離れた場所で食べるようになった笹部が立ち去るまで、三枝はご飯に手をつけなくなってしまった。
笹部の馬鹿から三枝に絡むことはないが、あん風に怒鳴られた場所に一緒にいるだけで十分プレッシャーだ。

二人の関係を打開するには、三枝があのときの変異種Ωだと笹部に言うのがやはり一番の近道。
当日は桂木と帰ると言われたから、翌日になってから周りに人が居ないときを見計らって三枝には声をかけた。
だが、これ以上拗れない内にと提案しても、首を静かに振って断られてしまったんだよな。

休日、ヤマになんで笹部が三枝の告白を全く認めないのかと愚痴ったら、渋々考えてくれたあの話を思いだし溜め息が漏れそうになる。
ヤマが思い当たったのは、去年の学園祭。
水泳の練習で、笹部が三枝になにかと奢っていたのは知っていたんだが、俺達の目の前で三枝から貰ったチョコレートを笹部が食べていたことはフェロモンレイプの印象が強すぎて俺の記憶からすっかり抜け落ちていた。
あの後、三枝が変異種Ωになる兆候の高熱を出してない。
つまり、笹部はあの時点で三枝が自分に好意を持ってないと確信してるんだろうと。

それから一年近く経ってるのに、笹部がそのまま好意を持たれてないと思い込んでいる可能性は高い。
だが、βと思いこんでる群れの一員相手に、フェロモンでマウントまでしてくるのは流石に他に理由があるんだろうけど、とは言われたが・・・そこまで分かっているのに、ヤマは二人に任せた方がいいと言うし。
樟葉は、「どうしたら良いんだろうねぇ」と考え込むだけで頼りないし。

悩んでいる内にヤマが戻ってきて、全員の測定が終わる。
ヤマは既製品に少し手を加えるだけだから、細かい箇所まで採寸が必要ないらしい。
最後に梛木委員長は、俺と三枝と樟葉に声をかけてきた。


「かな姫」

「ん?」


すっかり馴染んでしまった名前に振り返ると、何かを差し出されたのでとっさに手を伸ばして受け取る。
なんだ?
掌に置かれたのは、直径2cmありそうな大きなスナップボタンの凹んでる方。
三人とも同じものを渡されていた。
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