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26 体育祭 side 翔
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救護所に運び込まれると、体温測定と簡単な問診で原因を察した田栗先生から「そのへんの空きスペースに寝とけ」と言われた。
正直、本当の理由、三枝先輩の前で笹部先輩のフェロモンに為す術もなくやられたからとは言いたくなかったので安堵する。
俺は、大人しく柴田先輩の手を借りて地面に広げられた災害時用の簡易マットレスの上に敷かれた布団に横たわった。
区切りなく敷き詰められた寝床には、先客は三人しかいない。
全員目を閉じ、寝ているようだ。
俺が端に入って手を広げても、隣の人間にぶつからないくらいスペースに余裕があった。
詰めれば、まだ五人くらい寝転べそうだ。
リレーまで、ギリギリ休ませて貰おう。
足を伸ばして息をつく。
けれど、田栗先生の診断は違ったらしい。
俺への確認無しで、たまたま近くを通りかかった一年の生徒を捕まえ、俺が今後の競技を棄権することをクラスへ伝達するよう指示してしまう。
驚きに目眩がするのを耐え、思わず上半身を起こしてしまった。
「え、田栗先生、俺、走れますよ?!」
「あのなぁ、体育祭は当事者にとっちゃ大切な思い出作りなんだろうが、所詮は授業の一貫なんだ。
んなもん、無理してまで走らんで良い。
病気や怪我による競技への不参加に、ペナルティーもないしな。
他のに任せて寝とけ」
ボリボリ頭をかきながらの緩いスタイル。
でも、目は真剣で有無を許さない。
いや、しかし、俺以外にあの海に誰がバトンを渡せるんだ?
大丈夫じゃないだろう・・・
招集時間が来たら、抜け出せないか試してみよう。
柴田先輩は、このあとのクラス別リレーがあるからと先に帰っていったけれど。
寝床の脇で椅子に座っていた誉と話していた三枝先輩は、田栗先生に呼び止められた。
「待て待て、三枝。
お前も寝とけ」
「へ?
なんで、なんで?
俺、どうもないで??」
ペットボトルを持った手を振りながら、三枝先輩は後ずさる。
そのままテントから外に出ようとしたけど、田栗先生に首根っこを捕まれ捕獲されていた。
「大丈夫やもん」を繰り返しながら、一生懸命訴えてる姿が可愛くて、思わずニヤけてしまう。
「あのなぁ、俺はこれでも先生なんだぜ?
日焼けしててもな、顔色の良し悪しはわかんだよ。
ほれ、さっさと桂木の隣に寝転べ。
今なら、うちのが朗読してスヤスヤ寝れるぞ」
田栗先生が誉に目を向けると、誉は手に持っていた本の表紙を三枝先輩に見せた・・・いや、それ、現国の教科書だろう・・・
正直、本当の理由、三枝先輩の前で笹部先輩のフェロモンに為す術もなくやられたからとは言いたくなかったので安堵する。
俺は、大人しく柴田先輩の手を借りて地面に広げられた災害時用の簡易マットレスの上に敷かれた布団に横たわった。
区切りなく敷き詰められた寝床には、先客は三人しかいない。
全員目を閉じ、寝ているようだ。
俺が端に入って手を広げても、隣の人間にぶつからないくらいスペースに余裕があった。
詰めれば、まだ五人くらい寝転べそうだ。
リレーまで、ギリギリ休ませて貰おう。
足を伸ばして息をつく。
けれど、田栗先生の診断は違ったらしい。
俺への確認無しで、たまたま近くを通りかかった一年の生徒を捕まえ、俺が今後の競技を棄権することをクラスへ伝達するよう指示してしまう。
驚きに目眩がするのを耐え、思わず上半身を起こしてしまった。
「え、田栗先生、俺、走れますよ?!」
「あのなぁ、体育祭は当事者にとっちゃ大切な思い出作りなんだろうが、所詮は授業の一貫なんだ。
んなもん、無理してまで走らんで良い。
病気や怪我による競技への不参加に、ペナルティーもないしな。
他のに任せて寝とけ」
ボリボリ頭をかきながらの緩いスタイル。
でも、目は真剣で有無を許さない。
いや、しかし、俺以外にあの海に誰がバトンを渡せるんだ?
大丈夫じゃないだろう・・・
招集時間が来たら、抜け出せないか試してみよう。
柴田先輩は、このあとのクラス別リレーがあるからと先に帰っていったけれど。
寝床の脇で椅子に座っていた誉と話していた三枝先輩は、田栗先生に呼び止められた。
「待て待て、三枝。
お前も寝とけ」
「へ?
なんで、なんで?
俺、どうもないで??」
ペットボトルを持った手を振りながら、三枝先輩は後ずさる。
そのままテントから外に出ようとしたけど、田栗先生に首根っこを捕まれ捕獲されていた。
「大丈夫やもん」を繰り返しながら、一生懸命訴えてる姿が可愛くて、思わずニヤけてしまう。
「あのなぁ、俺はこれでも先生なんだぜ?
日焼けしててもな、顔色の良し悪しはわかんだよ。
ほれ、さっさと桂木の隣に寝転べ。
今なら、うちのが朗読してスヤスヤ寝れるぞ」
田栗先生が誉に目を向けると、誉は手に持っていた本の表紙を三枝先輩に見せた・・・いや、それ、現国の教科書だろう・・・
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