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26 体育祭 side 翔
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三枝先輩が居なくなると、この場所に特に仲が良い友達がいるわけでもないし。
じとりと迫ってくる桜宮先輩の視線も居心地悪くて、俺は桜宮先輩に軽く会釈をしてから三枝先輩を追った。
三枝先輩には、ちょうど武道館から出ていく前で追い付いた。
「三枝先輩っ」
「ん?
あれ、桂木君、どうしたん?」
靴を履いていた三枝先輩は、背後から名前を呼ばれてキョロキョロ。
相手が俺とわかると、驚いたみたいだ。
キョトンと首を傾げる仕草が可愛くて、油断していただけに気持ちが鷲掴みにされる。
手を伸ばせば触れられる距離まで、ふらふら吸い寄せられるように近づいてしまった。
見下ろせば、そこから俺を見つめる瞳が真っ直ぐに伸びてきて、特に用事が合ったわけじゃないのに呼び止めてしまった理由も引き出されてしまう。
「え、っと、三枝先輩ともう少し一緒に居たくて」
「な?!」
ボンッと顔から火を噴いたように、三枝先輩の顔が真っ赤に染まった。
しまった!と口に出してしまった後悔より、抱き締めたい本能が先走る。
思わず伸ばしかけた手に、三枝先輩がビクッと警戒したのがわかって方向を途中で修正。
ちょうど近かった自分の靴を下駄箱から出して誤魔化す。
「も、もぉ、桂木君っ
俺のこと、からかってるん??」
「からかってないですよ」
隣で頬を染めたまま、プンプン怒っている三枝先輩の方を見てしまうと、また同じことを繰り返してしまう。
俯いたまま靴を履きながら、見つめ合えただけで乱れた気持ちを整えて真面目な顔を作った。
夏休み明けから、三枝先輩が告白の返事を変えた噂がすぐに高等部に広まった。
今までは、「まずは友達から」だったのが「好きな人がいる」と断るようになった。
そして俺は、誰よりも早くその言葉を聞かされている。
夏休み中に、三枝先輩から直接「好きな人が出来てん」と打ち明けられていたからだ。
ハッキリとは言われていないけど、俺が三枝先輩への気持ちを全然諦めきれてないのはバレていたみたいだ。
迷いながら、でも、俺には伝えなくてはいけないという強い意志がそこにはあって。
買い物途中に立ち寄ったカフェで、本当に友達にしかなれないんだと、再度通告された。
あの、インターハイで見てしまった笹部先輩が三枝先輩を慰めていたツーショットが即座にチラツキ、その相手を聞かなくても瞬時に断定出来てしまえた自分が呪わしかった。
強者からの強奪は、人であれ、物であれ、α同士では禁忌だ。
フェロモンの強さが優先されるα社会。
俺よりも強い笹部先輩相手では、どうあっても太刀打ち出来ない。
じとりと迫ってくる桜宮先輩の視線も居心地悪くて、俺は桜宮先輩に軽く会釈をしてから三枝先輩を追った。
三枝先輩には、ちょうど武道館から出ていく前で追い付いた。
「三枝先輩っ」
「ん?
あれ、桂木君、どうしたん?」
靴を履いていた三枝先輩は、背後から名前を呼ばれてキョロキョロ。
相手が俺とわかると、驚いたみたいだ。
キョトンと首を傾げる仕草が可愛くて、油断していただけに気持ちが鷲掴みにされる。
手を伸ばせば触れられる距離まで、ふらふら吸い寄せられるように近づいてしまった。
見下ろせば、そこから俺を見つめる瞳が真っ直ぐに伸びてきて、特に用事が合ったわけじゃないのに呼び止めてしまった理由も引き出されてしまう。
「え、っと、三枝先輩ともう少し一緒に居たくて」
「な?!」
ボンッと顔から火を噴いたように、三枝先輩の顔が真っ赤に染まった。
しまった!と口に出してしまった後悔より、抱き締めたい本能が先走る。
思わず伸ばしかけた手に、三枝先輩がビクッと警戒したのがわかって方向を途中で修正。
ちょうど近かった自分の靴を下駄箱から出して誤魔化す。
「も、もぉ、桂木君っ
俺のこと、からかってるん??」
「からかってないですよ」
隣で頬を染めたまま、プンプン怒っている三枝先輩の方を見てしまうと、また同じことを繰り返してしまう。
俯いたまま靴を履きながら、見つめ合えただけで乱れた気持ちを整えて真面目な顔を作った。
夏休み明けから、三枝先輩が告白の返事を変えた噂がすぐに高等部に広まった。
今までは、「まずは友達から」だったのが「好きな人がいる」と断るようになった。
そして俺は、誰よりも早くその言葉を聞かされている。
夏休み中に、三枝先輩から直接「好きな人が出来てん」と打ち明けられていたからだ。
ハッキリとは言われていないけど、俺が三枝先輩への気持ちを全然諦めきれてないのはバレていたみたいだ。
迷いながら、でも、俺には伝えなくてはいけないという強い意志がそこにはあって。
買い物途中に立ち寄ったカフェで、本当に友達にしかなれないんだと、再度通告された。
あの、インターハイで見てしまった笹部先輩が三枝先輩を慰めていたツーショットが即座にチラツキ、その相手を聞かなくても瞬時に断定出来てしまえた自分が呪わしかった。
強者からの強奪は、人であれ、物であれ、α同士では禁忌だ。
フェロモンの強さが優先されるα社会。
俺よりも強い笹部先輩相手では、どうあっても太刀打ち出来ない。
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