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25 体育祭

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田栗養護教諭は、黙りこくってしまった三枝に早退するかと尋ねたが。
三枝は、午後からの試合には出たいとハッキリ答えた。
無理はして欲しくなかったが、三枝は大丈夫と言って譲らない。

未だに潤んだ瞳で見上げられると、強くも言えず田栗養護教諭の判断を仰ぐ。
田栗養護教諭は、三枝に「昼休みも保健室で休んでそれから考えろ」と諭し、ベットに三枝一人を残して周りのカーテンを閉めた。


「桜宮が心配する気持ちもわかるが、今は一人で考えた方が良いだろう」

「・・・わかりました」


トボトボ、三枝の力になれない自分の非力さに嫌気がさした重い足取りで中等部の武道館に戻ると、樟葉を残していた場所に辿り着くまでに女子生徒が数名、向こう側から俺の姿を見つけて走ってきた。
その慌てた様子に何かあったのか、食堂の一件がすでに漏れているのかと身構える。


「かーなーひーめーっっ」

「な、なんだ?
何かあったのか??」

「何があったのか、じゃないからっ
煌めき王子が、全然応援に来ないから心配してるわよ!
どこに行ってたの??
渡君は??」 


・・・あ。

腕時計を見るより先に、武道館の壁時計が目に入った。
そう言えば、中等部の体育館でヤマがバスケをしている時間か。
笹部と話をしてからでも間に合うと思って、そのまま忘れていた・・・


「えーっと、三枝が気分が悪くなって保健室に行っていたんだ。
本人は、午後からの試合には出ると言っていたが休んで貰ってる」

「えっ、渡君、無理してたのかな?
朝から、元気なかったもんね」

「保健室に行った方がいいかな?」

「あ、いや、もう寝ていたから」


次々かけられる言葉に、なんとか答える。


「そっか、寝てるなら今は行かない方が良いよね」

「予定通り、応援に行こう。
渡君の分も、応援しまくって勝ち点貰わないとねっ」

「かな姫と行き違いにならないように、私達も待っていたのよ。
さぁ、今から、皆で応援に行くわよ!」 


回れ右と、女子生徒の中で一番遠慮がない、確か、梛木委員長と三枝が話していた手に勢いよく背中を押されて出入り口に逆戻り。

後からやって来た樟葉に、「なにかあった?」とこっそり聞かれたが、四方を囲まれたこの状況では話せないな。
俺は、「後で」と返しヤマの応援に向かった。

コートの中から笹部に見られていたことには、全く気付かず。
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