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25 体育祭
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武道館は、既に第三試合が始まり騒がしくなっていたので廊下に出るぞと離れている笹部にジェスチャー。
笹部は、同じクラスの生徒に話をつけてから出てくるようだ。
先に、武道館内は上履きを脱いでいたので履き替えて扉前で待つ。
「なぁ、かなちゃん・・・笹部君、どんな感じやった?
ちゃんと来てくれるかなぁ」
不安で仕方ないと、三枝はおどおど視線をさ迷わせている。
ここで、怒らせているのは三枝の勘違いのようだぞと言ったところで納得も安心もしないだろうしな。
どう言えば、三枝の不安を少しでも取り除けるんだろうか。
言葉に迷っていたら、三枝の表情がますます暗くなったので「大丈夫だ」と肩を軽く叩いてみた。
笹部が出てきたのは、それから数分後。
ペタペタ上履きの踵を踏みつけ、のろのろとやって来る。
ひどく億劫な態度は、三枝への言葉がまだ決まってないからだろう。
だが、それを見た三枝には、嫌々来ているとしか見えないだろうがッ
「食堂にでも行くか?」
わざと三枝の正面に立ち、笹部の姿を隠して話し掛ける。
三枝は、本人を前に緊張がピークに達したようだ。
強張った表情で頷いた。
ちらりと笹部を振り返ると、向こうは向こうで考え込んだままの無反応。
3人で食堂に向かう道中も、どんよりとした雰囲気で息苦しい。
中等部は授業中らしく、廊下を行き来するのは応援や掛け持ちのために移動する高等部の生徒だけだ。
同じ無言でも、体育祭で興奮している生徒のそれとは大違い。
食堂には、持て余した時間を潰しに来ている生徒もいたが、俺達が入っていくとそそくさと席を立って出ていってしまった。
ランチの準備をしているスタッフはいるが、ここなら邪魔もされないし、多少Ωの俺がαの笹部に怒鳴っても騒ぎにはならないだろう・・・まぁ、怒鳴るようなことにならないのが一番なんだが。
「なんか、飲みもん買ってやるよ」
壁際の自販機前で笹部がコインを投入。
さぁ、選べと言われたので氷無しのストレートティーのボタンを遠慮なく押した。
カコンと乾いた音がして、出てきた紙コップに注がれるのを待つ。
試合後でちょうど喉が乾いていたしな。
ピーピーと完了を知らせる電子音が響き、笹部から紙コップを受け取った。
「ありがとう」と告げ、自販機前の笹部に近寄れないでいる三枝に、何が良いのか尋ねようとしたんだが。
それより先に笹部がボタンを押し、出てきた氷無しのオレンジジュースを三枝に向かって突き出した。
笹部は、同じクラスの生徒に話をつけてから出てくるようだ。
先に、武道館内は上履きを脱いでいたので履き替えて扉前で待つ。
「なぁ、かなちゃん・・・笹部君、どんな感じやった?
ちゃんと来てくれるかなぁ」
不安で仕方ないと、三枝はおどおど視線をさ迷わせている。
ここで、怒らせているのは三枝の勘違いのようだぞと言ったところで納得も安心もしないだろうしな。
どう言えば、三枝の不安を少しでも取り除けるんだろうか。
言葉に迷っていたら、三枝の表情がますます暗くなったので「大丈夫だ」と肩を軽く叩いてみた。
笹部が出てきたのは、それから数分後。
ペタペタ上履きの踵を踏みつけ、のろのろとやって来る。
ひどく億劫な態度は、三枝への言葉がまだ決まってないからだろう。
だが、それを見た三枝には、嫌々来ているとしか見えないだろうがッ
「食堂にでも行くか?」
わざと三枝の正面に立ち、笹部の姿を隠して話し掛ける。
三枝は、本人を前に緊張がピークに達したようだ。
強張った表情で頷いた。
ちらりと笹部を振り返ると、向こうは向こうで考え込んだままの無反応。
3人で食堂に向かう道中も、どんよりとした雰囲気で息苦しい。
中等部は授業中らしく、廊下を行き来するのは応援や掛け持ちのために移動する高等部の生徒だけだ。
同じ無言でも、体育祭で興奮している生徒のそれとは大違い。
食堂には、持て余した時間を潰しに来ている生徒もいたが、俺達が入っていくとそそくさと席を立って出ていってしまった。
ランチの準備をしているスタッフはいるが、ここなら邪魔もされないし、多少Ωの俺がαの笹部に怒鳴っても騒ぎにはならないだろう・・・まぁ、怒鳴るようなことにならないのが一番なんだが。
「なんか、飲みもん買ってやるよ」
壁際の自販機前で笹部がコインを投入。
さぁ、選べと言われたので氷無しのストレートティーのボタンを遠慮なく押した。
カコンと乾いた音がして、出てきた紙コップに注がれるのを待つ。
試合後でちょうど喉が乾いていたしな。
ピーピーと完了を知らせる電子音が響き、笹部から紙コップを受け取った。
「ありがとう」と告げ、自販機前の笹部に近寄れないでいる三枝に、何が良いのか尋ねようとしたんだが。
それより先に笹部がボタンを押し、出てきた氷無しのオレンジジュースを三枝に向かって突き出した。
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