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25 体育祭

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「おい、笹部」


試合を終えた笹部の周りは、珍しく人が集まっていた。
活躍した笹部に、クラスメートがにこやかに話しかけている。
タイミングを計っていたら、こちらの貴重な練習時間が削られるので割り込むことにした。

案外上手くやっているんだなと見直しかけたが、外から名前を呼んだだけで目が一瞬にして尖ったのを見てしまい嘆息。
根底は、喧嘩ッぱやい馬鹿のまま変わっていなかったようだ。
呼んだのが俺とわかると表情は緩んだが、名前を呼ばれただけで相手を睨む必要なんてないだろう。


「あぁ、かなちゃん。
次、試合だろ?
なんだ、誰かに絡まれたのか?」


周りのクラスメートを手で払いながら、近付いてくる。
笹部は、前日にヤマから俺を見ておくように依頼されていたんだったな。
俺からまず笹部に話しかけることがないから、それが真っ先に浮かんだらしい。
近付きながら、俺の周囲に注意を払い、鋭い視線でいない相手を探している。

ヤマは、学園内でも俺のことは萩野が陰ながら護衛しているので心配はないとわかっているんだが、どうも頼りきるのは同じαとして嫌らしい。
まぁ、ヤマが掌握した学園で、これだけヤマの「俺のもの」フェロモンを纏っている俺に誰も絡んでくることはないと思うんだが。
というか、クラスメートや生徒会役員以外からはかなり遠巻きにされているくらいだ。


「いや、そう言う話じゃない。
第2試合の後に時間をとれないか?
次は、第5試合だろう?
三枝からお前に話したいことがあるんだと」


ん、なんだ、その反応は?
三枝の名前を出した途端に、笹部は不意をつかれた間抜け面。
俺の前で立ち尽くしたまま、返事をしない。
やはり、三枝が怒らせたんじゃなく、こいつがなにかやらかしてるな。


「聞いているのか?」

「あ、あぁ・・・三枝から、俺に話があるのか?」

「だから、そう言ってるだろう。
三枝が、お前に嫌われたとビクビクしているから、俺から直接その理由をまず聞いてみろと話したんだ。
第2試合の間に、その理由をしっかりわかりやすく優しい言葉でまとめておけよ」


話すまでには時間があるんだ。
三枝から聞かれた笹部が、咄嗟におかしなことを言うとよけい話がややこしくなる。
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